続・塚田賞作品の魅力(15)(近代将棋平成8年5月号)②
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長篇賞 駒場和男作

駒場和男作(昭和60年3月号) 詰手順
3八角 同と 2五角 同と 1七飛打 同金 同飛 同玉 2八金 2六玉
3八金(途中1図)
途中1図(11手目3八金まで)

⑫1五玉 1四成桂 同玉 2四と 同と 同と 1五玉 2五と 1六玉
1七歩 同玉 2八と 1六玉 2七と 2五玉 2六と 2四玉 2五と 2三玉
2四と 1二玉 1三歩 同成香 同と 同玉 1四歩 同玉 1五歩 同玉
1七香 1六歩合 同香 同玉 2七金 2五玉 2六金 2四玉 2五金 2三玉
2四金 2二玉 2一と 同と 同桂成 同玉 3三金 3一玉 2二香成
4一玉(途中2図)
途中2図(60手目4一玉まで)

3二成香 5一玉 4二成香 同金 同金 同玉 4三銀 5一玉 5二銀成 同玉
5三と右 6一玉 6二と 同玉 [75]6三と 7一玉 7二金 同金 同と
同玉(途中3図)
途中3図(80手目7二同玉まで)

[81]7三銀生 8一玉 7二金 9二玉 8三桂成 同と 9三香 同と 同歩成 同玉
8四銀直 9二玉 8二金 同と 9三銀 同玉 9四歩 同成銀 8二銀生 9二玉
9三歩 同成銀 同銀 同玉 9四歩 同玉 9五歩 同玉 8四銀 9四玉
9五歩 同金 8三銀 9三玉 9四歩 同金 8二銀 9二玉 9三歩 同金
8一銀 9一玉 9二歩 同金 同銀 同玉 8三金 8一玉 8二金まで129手詰
鬼才・駒場氏が、かつて発表した小駒煙の二号局(本誌、昭和40年5月号)の横追い手順の構成が一号局である黒川一郎作「嫦娥」(詰将棋パラダイス昭和38年10月号)と似ていると評されたことに反発して作り直したもの。75手目からの終盤は原作のままですが、中盤の横追い手順は簡略化しながらも紛れを持たせ、序盤は収束の棒銀手順と対応させた棒金手順を二回も取り入れた上に、序奏で大駒四枚を消して全駒から小駒煙にするという痛快な離れ技を披露しました。
つまり、最初の8手で飛角四枚を消したところで"全小駒図式"になる訳です。このあと、2八金と打って3八金と開いたところで⑫2八角の捨て合に2七金…の軽手を含んだ味のある変化を経て、途中1図からと金による上下追い。二回目は歩叩きから金による縦追いで途中2図まで来ます。
ここからも趣向的な手順で二段目の歩を剝がしながらの横追い。7筋まで来たところで[81]7三銀不成と入るのが好手で、その後40手以上もかかる収束手順に入るのです。
このように途中小駒煙詰という前代未聞の構成にした点が評価され、異例の改作図での受賞。作者にとっても代表作の一つになりました。
岡田敏「史上初の”全駒使用の途中小駒煙”には惜しみなく拍手を贈りたい」
吉田健「煙詰も新味を出すのが大変な時代になったが、最初全駒、途中から小駒だけをキチンと実現させたのには驚いた。誰にもわかる楽しいオリジナリティである。横追い手順の新工夫のほか細部まで神経が行き届き、執念が籠もっていて、芸術的香気をさえ感じさせる」
植田尚宏「ダブル煙と言って、始めにバラバラと大駒を切り捨てるのは良い。自陣成駒があるので美しいとは言えないが、意欲作と見た。後半の歩の連打の金入手は煙の常套手段か」
長篇次点 駒場和男作
「ゼロの焦点」

駒場和男作(昭和60年3月号) 詰手順
6四と ②同龍 6二角 同玉 7二飛 5三玉 5二飛成 ⑧同玉 5一金 同玉
6一金 4二玉 4一金 5二玉 5三歩 同龍 5一金左 6二玉 6一と 7二玉
7一と左 8二玉 9三歩成 同玉 (1)5七角 8四角合(途中1図)
途中1図(26手目8四角合まで)

9四歩 8二玉 8一と右 7二玉
7一と右 6二玉 6一金 5二玉 5一金右 4二玉 2四角 ㊳同銀 4一金 5二玉
5一金左 6二玉 6一と 7二玉 7一と左 8二玉 9三銀 同角 同歩成 同玉
(2)5七角……(26手繰返し)……9三同玉 (3)5七角……(26手繰返し)……9三同玉
(4)5七角 8四歩 9四歩 8三玉 7五桂 8二玉 8一と右 7二玉
7一と右 6二玉 6一金 5二玉 5一金右 4二玉 2四角(途中2図)
途中2図(117手目2四角まで)

[118]3一玉 4二銀 同龍
同角成 同玉 5二飛 3一玉 2一香成 同玉 3三桂生 3一玉 4一金まで129手詰
初手6四とに②同歩なら、6二角、同玉、7二飛、5三玉、5二飛成、同玉、6三金、同玉、5五桂、同歩、7二角以下。また②4四玉と出ると、4六飛、3四玉、3三金、同銀、同桂成、同玉、5一角以下。さらに7手目5二飛成で角を取ったときに⑧4四玉と出る手があり、これは6二角、5三角合、同龍、同龍、同角成、同玉、3五角、同銀、5一飛、5二飛(角)合、同飛成…の詰み。いずれも不詰感が漂う難解な変化です。
これらを克服して(或いは読み飛ばして)一段目の金智恵の輪で玉を9三へ運んで5七角(途中1図)と打つのが本局の主眼。玉を金智恵の輪で4二まで運んで2四角と銀を剝がすにはこの場所が絶対で、これを「ゼロの焦点」と作者は言われます。何故か判りませんが、感覚的には納得できる表現です。
この角打ち角合を四回、作者にしては珍しく単純な手順を反復し、最後の2四角(途中2図)に3一玉と下がって4二銀以下の収束に向かいます。なお、銀が残っているときに3一玉…でも全く同じ詰みです。
金智恵の輪を舞台にした単純明快な角の限定打による銀剝がしの趣向作ですが、導入部で難解な変化をつけるあたりが駒場氏らしいと言えましょう。
受賞作ですが、原図や作品集「ゆめまぼろし百番」第12番には「驟雨」という題名が付けられています。
8手目の局面は詰方の持駒に金がありますので正確には全駒煙→小駒煙ではありませんが、大駒四枚を捨てる序は豪快ですね。
まず、原図(「近代将棋図式精選」長編の部第56番に収録)を掲げます。

次に、解説中で言及されていた黒川一郎氏作「嫦娥」を掲げます。

「ゼロの焦点」については、残念なことを書かねばなりません。
発表図には43手目や47手目で7四桂などの余詰がありました。
駒場氏も恐らくそのことをご存じだったのでしょう、作品集「ゆめまぼろし百番」第99番に収録の際には、序の4手が追加されたのと共に、詰方7八歩が配置されました。
上記の余詰は消えたのですが、119手目4一金でも詰むことは消えませんでした…。
次回からは第16回(第66期)に入ります。
※
既にアップした内容にも、時々「追記」として手を加えていることがあります。
新しく作品を載せていることもあるかもしれません。