続・塚田賞作品の魅力(7)(近代将棋平成7年8月号)①

森田銀杏氏の連載「続・塚田賞作品の魅力」、第7回(第57期)は3度に分けて取り上げたいと思います。
今回は短篇部門です。
第57期(昭和56年1~6月号)

研究室の解説を、五年間続けて来られた伊藤果四段に代わって、この期から小生が担当することになりました。それから平成2年の半ばに現在の服部敦氏と交代するまで、十年間に約五百局を解説したことになります。改めて読み返すと、詰将棋の解説に新風を吹き込もうと意気込んだ当時が蘇って来ます。
さて、この期は短編がやや低調で票が割れましたが、担当を下りたばかりの伊藤果氏の”初入選作”(それまではペンネーム)が微差で首位に輝き、春の新五段への昇級と併せて二重の喜びとなりました。好作が目白押しの中編では上田吉一作が七度目の受賞(ただし筆者の集計では柏川香悦作の方が上でした。4月号の上田作の点数が紛れ込んだか、何かのミスかも知れません)。長編では初入選の竹下雅敏作とベテラン墨江酔人作が票を分けて両作とも受賞となりました(前期受賞の森長宏明氏が3月号に特別出題した「新世界」613手詰に余詰があったのが残念でした)。

第57期「塚田賞」選考投票 集計表



短篇賞 伊藤 果氏作


伊藤 果作(昭和56年5月号) 詰手順
3一銀 ②同玉 4一金 ④同玉 6一飛 ⑥5一銀合 同飛成 同玉 5二銀 4二玉
4三銀成 同玉 5三角成 同玉 5四金まで15手詰
実戦型詰将棋というより、実戦の部分図かと思わせるような配置。1二金、同玉、3二飛成‥では続かないので、3一銀‥4一金‥と攻めるしかありませんが、②1三玉、3五角、2四歩、1二飛、2三玉、2二飛成以下と、④2二玉、3二飛成、同玉、1二飛、4一玉、5二金、3一玉、5三角成以下の変化を読み切る必要があります。5手目の6一飛が本問の中心手で、銀合強要の限定打。斜めに利かない合駒なら、5二飛成(3一玉は、5一龍、2二玉、2一龍‥)、同玉、6二角成以下の早詰があります。最後は変化に大活躍した角を成り捨てて気持ち良い詰上りです。
形から手順を引き出すのが得意な作者が5五歩を加えただけで仕上げた会心作でした。
柏川香悦「3一銀以下、一手一手の変化に面白さと紛れがあり、初形・詰上りともスッキリ。今期の短編では随一の作」
吉田健「難解、巧技の作品はほかにもあるが、終始徹底した爽やかな手順を買う。短編の本質はこの辺にあるのではなかろうか」


次点 上田吉一氏作


上田吉一作(昭和56年1月号) 詰手順
4五香 ②4四桂合 同香 同馬 5三金 3一玉 ⑦4三桂 同桂 4二金 同玉
3四桂 同馬 5二桂成 同銀 3二金まで15手詰
上部へ逃がさないためには頭から香を打つ一手。②3一玉なら、4一香成、同玉、3三桂、同馬、5二銀‥があるので合駒をするしかないが、歩合なら7手目に⑦3二歩、同銀、4二金打‥で早い。馬を4四へ呼んでからの5三金は味が良く、4三桂で蓋をしてからこの金を4二へ滑り込ませて5二桂成‥の収束も実にキッチリと出来ています。
手筋物とは言え、紛れも豊富で、一分の隙もない仕上げはさすがです。
岡田敏「4三桂から4二金のスリ込みは味がある」
植田尚宏「新しさはないが、駒数少なく表現したのが良い」


次点 北原義治氏作


北原義治作(昭和56年3月号) 詰手順
2四桂 ②1三玉 2三角成 同玉 3四銀 2二玉 3三銀成 同角 3二飛 2一玉
2二歩 同角 3一飛成 同角 3二香成まで15手詰
この形で初手2四桂は②同歩なら2三銀‥があるので直感ですが、②同角、3二飛、2二香合、同飛成、同玉、3二角成、1二玉、1三香、同玉、2二銀、1二玉、2一馬までの変化の読みも要ります。
1三玉の躱しに2三角成と切り、3四銀で筋に入った感じですが、3二飛‥や2三飛‥では摑まりません。打ったばかりの3四銀を3三銀成と直ぐに捨てるのが絶妙手で、3二飛のあと、角を3三から2二へ呼べば3一飛成捨ての収束。清々しい形の中に新鮮な味わいを盛り込んだ佳作です。
岡田敏「紛れは乏しいものの、3四銀から3三銀成と捨てる味、玉方4二角の一回転など、巧いの一言に尽きる」




上田氏の作品は「極光21」第56番に収録されています。

「王将天狗」は「王将天狗同好会」の略です。
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