続・塚田賞作品の魅力(5)(近代将棋平成7年6月号)③

今回は長篇部門を取り上げます。
第55期(昭和55年1~6月号)

長篇賞 OT松田作
「夢双凧」



OT松田作(昭和55年3月号) 詰手順
2一香成 ②同玉 7八銀 2二玉 9九馬引 2一玉 2二歩 1二玉 (1)7七銀 2二玉
2三歩 2一玉 9八馬右 1二玉 2二歩成 同玉 7六銀 2一玉 2二歩 1二玉
8九馬寄 2二玉 2三歩 2一玉 6七銀 1二玉 2二歩成 同玉 9九馬引 2一玉
2二歩 1二玉 (2)6六銀‥‥6五銀‥‥5六銀‥‥1二玉
(3)5五銀‥‥5四銀‥‥4五銀‥‥1二玉(途中図)

途中図(80手目1二玉まで)
第55期OT氏作

3六銀 2三歩合 同金 同銀 同馬 同玉 3五桂 1三玉 1四歩 同玉
2五銀打 1三玉 1四歩 1二玉 8九馬 2二玉 1三歩成 2一玉 1二馬 同歩
2二歩 1一玉 2三桂まで103手詰
初手、平凡に2二香成では、同玉、9九馬寄、2一玉のあと、7八銀なら1二玉‥、2二歩なら1二玉、8九馬引、2三桂合‥でダメ。ちょっと抵抗感のある2一香成が作意です(②2三桂は、1三歩、2一玉、8六銀、3二香合、2二歩、同玉、9九馬寄、8八香合、同馬上、同銀成、3二金、同金、同馬、同玉、3三金以下)。
3手目8六銀‥では打歩詰になるので、7八銀と引いて馬道を止めて後の1三歩を可能にします。今度は9九馬引のあと7七銀でその利きを止め、さらに9八馬右として7六銀でその利きを止めて、8九馬寄とします。つまり、この24手の間に三歩を消費して二枚の馬が入れ替わり、8七銀が7八→7七→7六と移動した訳です。
この双馬をバックにした三段銀鋸をもう二回繰返して4五銀まで進んだ途中図から3六銀と手を変え、二枚の馬も捌ききる綺麗な収束に向かいます。
このような銀鋸趣向は前代未聞。いつも奇抜な新構想を創案する作者の面目躍如です。解説の伊藤果四段(当時)は、二枚の馬に操られる見事な銀の動きに感動して「夢双凧」という命名を本作に贈られました。
岡田敏「攻め方二枚の馬の動きと関連しながらの銀の動きには感嘆の他なし。古今に類のない構想」
吉田健「独創に富んだ雄大な構想に加え、その描写の何とまろやかでコクのあることか。筋書き派、物量派の構想作品と一線を画する気品がここには感じられる。端然たる銀の動きに酔った」
植田尚宏「銀の動き良し。最終1二馬で盛り上がった」
伊藤果「久方ぶりの快心作。雄大な構図は黒川一郎氏の『天馬』を想わせる」


次点 上田吉一作


上田吉一作(昭和55年1月号) 詰手順
2七飛 1五玉 2六角 1四玉 2五銀 ⑥同玉 5三角生 ⑧1四玉 1五歩 同玉
2六角打 2五玉 1七角 1四玉 1五歩 同玉 2六角生 2五玉 7一角生 1四玉
1五歩 同玉 2六角生 2五玉 6二角成(途中図)

途中図(25手目6二角成まで)
第55期上田氏作

1四玉 1五歩 同玉 2六角上 3五玉
5三角成 1四玉 1五歩 同玉 2六馬 1四玉 3六馬 ㊳2五桂合 1五歩 同玉
2五飛 同歩 2七桂 2四玉 5一馬 3四玉 3五金 4三玉 5五桂 3二玉
5四馬 2二玉 3三馬 同玉 4三桂成 2二玉 3二成桂 1一玉 2一成桂
まで59手詰
飛車と角をベタベタと打ちつけてから2五銀と捨てるのは順当な導入手順(⑥同歩なら1五歩、2四玉、4二角、3四玉、3七飛、3五歩合、同飛、4三玉、3三飛成、5四玉、5三角行成、6五玉、7五馬以下)。同玉となった7手目から本局のストーリーが始まります。
常識的に7一角成と桂を取りに行くと3四玉と逃げ出し、3七飛なら3六歩合、同飛、4三玉、2一角、5二玉‥で、6一角、3三玉、3七飛なら4二玉、5四桂、4一玉‥で詰みません(4八歩が初手4八角‥の筋とここでの4二歩打ちを防いでいます)。7手目は5三へ不成で開くのが唯一の手です(⑧3四玉なら5二角、4三歩合、3七飛、2五玉、4三角成、1四玉、1五歩、同玉、1六馬以下)。
次に、もう一枚の角を2六へ重ね打ちして1七へ据えておき、先程の角を2六へ引いて今度は7一角不成で桂を取りに行きます。この後も角移動を繰返していると手持ちの歩を消耗するだけなので、三度目には6二角成とし(途中図)、さらに後の角も5三に成ってしまって、2六馬から3六馬寄と手を変えます。ここで㊳2五歩と突くなら1五歩、同玉、5一馬(これが7一角を6二へ移した効果)以下なので、2五桂合の一手となり、この桂を飛車で取って打ちつけ、最後は馬も綺麗に捌いて収束します。
角使いの得意な作者らしく、二枚の角を不規則に往復させるパズル的な手順の構想作で、合駒制限の四香配置という条件にも拘わらず7一桂の離れ駒以外は僅かの置き駒で仕上げたところはさすがです。作者にとってもお気に入り図で、昭和56年に詰将棋パラダイスが編纂した『古今詰将棋三百人一局集』に自選しただけでなく、同年に将棋天国社から発行された作品集『極光』の巻尾(第五十番)を飾っています。
岡田敏「角の動きは見るべきものあり、傑作と思う」
伊藤果「角使いの巧妙さは芸術といってもおかしくないだろう」
北原義治「上田作、松田作、どちらも精巧な機械構造になっているが、”好み”の問題だけの差で上田氏。僕の若い頃と比べ、次元が変わった感じさえする」


第55期七條氏作

〔訂正〕
3月号に解説した第52期長篇賞の墨江酔人作を「1二成香、2七香」とした修正図で掲載いたしましたが、㉞6四角合…の変化は、発表図のままでも詰むことが後に判明し、七條兼三氏の没後に上梓された作品集『将棋墨酔』第八番には原図(左図)で収録されております。
ご指摘下さった駒場和男氏にお礼を申し上げるとともに、不明をお詫びして訂正させていただきます。



上田氏作は「極光21」第94番に収録されています。
次回からは第6回(第56期)に入ります。
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上田氏の長篇作品 (59手詰)

好きな作品のひとつです。

合駒制限のための四香配置ということですが、全体的に使用駒数が少なく、すっきりとした配置なので気になりません。
憶測ですが、作者としては恐らく左辺に7一桂以外の駒を配置しない、というのが一番苦心したところなのだと思います (作者自身がそのように書いているのをどこかで読んだ記憶があります)。

有名な角2枚の遠打作品 (看寿賞中篇賞受賞作品) といい、四香連続合駒の「オーロラ」といい、角の使い方が印象に残る作品が多いですね。

名無しさんへ

盤面11枚と少ないですし、仰る通り四香配置は気になりませんね。
上田氏の作品、角を使う作品の印象が強いというのはなるほどと思いました。

Re: 上田氏の長篇作品 (59手詰)

上田氏ご自身の解説の一部を作品集『極光』から引用します。

「左辺には、桂以外絶対駒を置かない方針の為、余詰に相当悩まされたが、粘った甲斐もあって、僅か11枚の駒数でまとまった。」

参考までに、同じく上田氏の「オーロラ」の掲載ページにもリンクを貼っておきます。

http://hirotsume.blog.fc2.com/blog-entry-250.html

名無しさん

「極光」はいずれ手に入れたい本です。

私からしますと、よく作れるものと感嘆するのみです。
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Author:hirotsumeshogi
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