続・塚田賞作品の魅力(3)(近代将棋平成7年4月号)③

今回は長篇部門を取り上げます。
第53期(昭和54年1~6月号)

長篇賞 駒場和男作
「地雷原」


駒場和男作(昭和54年1月号) 詰手順
6七金 ②同銀成 7七金 同成銀 8五角 ⑥同玉 7七桂 ⑧7五玉 7四飛 同玉
6四馬 8三玉 7四銀 7二玉 5四馬 8二玉 5五馬‥(馬鋸引く)‥1八馬 8二玉
2八馬‥(馬鋸寄る)‥6四馬 7二玉 6三銀不成 8三玉 7四銀成 7二玉
5四馬 8二玉 5五馬‥‥(馬鋸引く)‥‥1九馬 7二玉 6三香成 6一玉
6二歩 同銀 同成香 同玉 6九飛(途中図)

途中図(81手目 6九飛の局面)
第53期駒場氏作

(82)5一玉 6二銀 4二玉 3二成香 同玉 2三銀成 同玉 2九飛 1三玉
4六馬 2四歩合 同馬 2二玉 1三馬 同玉 1四歩 同玉 2四金 1五玉
2五金 1六玉 2六金 1七玉 2七金 1八玉 2八金まで107手詰
本作は「新春特別詰将棋」と題して発表された二作のうちの一つです。
まず駒取りの序奏から始まりますが、変化が厄介。まず8五角に⑥同銀は、5六飛、7五玉、6六馬、7四玉、5四飛、7三玉、9三飛以下。7七桂に⑧7六玉なら、9六飛と上がって、(イ)6七玉なら5六馬‥、(ロ)8六歩合は、6六飛、7七玉、5六飛‥、(ハ)8六金合は、4六飛、5六香合、同飛、6七玉、6六馬、7八玉、6七銀‥で何とか詰みますが、(ニ)8六香合が大変です。これは6六飛、7七玉、6八銀、7八玉、5六馬、6九玉、9九飛、8九角合、同飛、同香成、4七角、5八飛合(香はない!)、同角、同玉、5七馬以下。ここまで読まないと2二成香配置の意味がわかりません。
この恐ろしい変化を克服し、7二玉まで追い落としたところで馬鋸が始まり、1八歩を取って6四馬まで戻ります。ここで7四銀を成り返ってから、もう一度、馬鋸を繰り返して1九馬の状態にしておくのが主眼の伏線です。すなわち、途中図で馬が1九以外の場所にいると、 その段に歩の中合をされて、収束で飛車が2筋へ廻れなくなるのです!最も単純な駒取り目的の馬鋸引きかと思わせて、実は飛車の大転回のための遠引きという新構想なのでした。
もう一つ、途中図で(82)5三玉と躱す変化があり、これは6三飛成、4四玉、6四龍、5四香合、同龍、同玉、4五銀打、5三玉、6四馬、6二玉、6三成銀、6一玉、6二香、5一玉、4二馬、同玉、4三銀成、同玉、4四香までのきれいな詰みですが、7四銀を成銀に変えておいたのはこのため。これにより馬鋸の一往復半が成立したともいえます。
詰将棋研究会の同人誌『詰棋めいと』に護堂浩之氏が連載中の「新・馬子唄集」によれば、これまでに発表された馬鋸作品は三百局近くにのぼりますが、その中でも馬鋸に二つの伏線を絡めた構想的な傑作です。
植田尚宏「馬鋸が秀逸である。最後にその馬を消すのに成功したのもよかった」
吉田健「構想の大きさと、それをムリなくこなし切る技法の確かさに改めて感服。細部にまで神経の行き届いた手順でありながら何がしか余裕さえ感じられた」


次点 黒 竜江作
「カルマの法則」


黒 竜江作(昭和54年6月号) 詰手順
9四歩 同玉 3四飛成 4四飛合 同龍 同歩 (一)5四飛 ⑧9三玉
5三飛成 ⑩9四玉 4四龍 9三玉 3三龍 9四玉 2四龍 ⑯9三玉
1三龍 ⑱2三飛合(途中図)

途中図(18手目 2三飛合の局面)
第53期黒氏作

同龍 同馬 (二)4三飛 9四玉 4四飛成 9三玉 3三龍 9四玉 2四龍 3四飛合
同龍 同馬 (三)5四飛 9三玉 5三飛成 9四玉 4四龍 9三玉 3三龍 4三飛合
同龍 同馬 ㊶9四歩 同玉 (四)4四飛 5四飛合 同飛 同馬 7四飛 9三玉
7三飛成 9四玉 7四龍 9三玉 8三香成 同香 9四歩 8二玉 7三龍 同玉
6三成桂 同玉 4一馬 7三玉 7四銀 8二銀 8三銀成 8一玉 7一香成 同玉
7二銀成 同馬 同成銀 同玉 6四桂 8二玉 7一角 同玉 7三香 8二玉
7二香成 8三玉 7四馬 9四玉 8五金 9三玉 8四金まで85手詰
この年の3月号に突如として現れた特異なペンネームの新人(?)。初入選作に続く二作目の龍鋸作品です。
3四飛成から4四飛合を取り、5四飛と打つと(⑧8四合は8五金‥なので)9三玉の一手。続く5三飛成にも、⑩8三飛合なら9四歩、同玉、8三龍、同香、7四飛、8四歩合、8五金‥があるので、9四玉。ここまで来ると龍鋸のプロットが見えてきます。
しかし、1四角ではなく馬なので、2四龍のとき⑯同馬と取られる手がありますが、これは9五金、同玉、9六歩、同玉、4一馬、8五銀合、8七銀、9五玉、8六銀‥で詰。次の1三龍に⑱2四歩合も同じ筋です。つまり、4一銀に1四馬の利きが消えるといつでも4一馬‥と取る手が生じるという訳。そこでこの4一馬に6三銀合‥で逃れるために2三飛合(途中図)が必然となり、同龍で馬が1筋移動しました。
これを繰り返して4三馬まで運んだとき、それまでと同じように㊶6三飛‥6四飛成‥5三龍とすると同馬で先程の手順は成立しません。ここでは9四歩‥4四飛と直接に打たねばならないのです。馬寄せはここまで。5四の退路が馬で塞がったので、6筋まで玉をおびき出す収束手順に入ることができます。
本作ですぐに思い出すのは昭和52年2月号の大塚播州作「おとぎ詰」で、有名な「図巧1番」の遠飛による角寄せを龍鋸で実現した大作。その標的を生角でなく馬にしたところが本作の新構想です。龍がすり寄ったときに馬で取られないようにする工夫に作者の腕力を読み取ることができます。
なお題名の「カルマ」は『広辞苑』によれば、梵語で”業”の意。無理なプロットを図化しようとする執念を託したのでしょうか。
岡田敏「実現し難い手順を鮮やかに表現しており、脱帽のほかない」
北原義治「大変な難作だが、美的なものが不足しているのではないか。夢のある楽しさから言うなら、常連墨江酔人作の煙詰や馬鋸引き、藤江和幸作の金気なしの煙詰もいい」


特技賞 岡田 敏作


岡田 敏作(昭和54年2月号) 詰手順
1四と 1六玉 1五と 同金 2七と 同玉 4九馬 3七玉 2七馬 ⑩4六玉
3七銀 ⑫5七玉 4八と 同香成 6六銀 同玉 7五角 同玉 6五と 8四玉
7五と ㉒9四玉 7二馬 同金 9三桂成 同玉 8四と ㉘8二玉 7二銀成 同玉
7三金 6一玉 6九龍 6八歩合 同龍 同桂成 6二歩 5二玉 5一飛成 同玉
4二金まで41手詰

詰上り図(大菱)
第53期岡田氏作

「新春お楽しみ”炙り出し詰将棋”三部作」と題して、小菱とともに特別出題された雄大な大菱の曲詰。江戸時代の久留島喜内と桑原君仲、戦前の今田政一、戦後の門脇芳雄氏に次ぐ五局目の珍品です。
詰手順も仲々のもので、2七馬に⑩同玉なら、2八銀、1六玉、1七銀、2五玉、3五と、同玉、1五飛成(2五角合は、2六銀、4六玉、3八桂、5五玉、2五龍、5四玉、4四歩合、4五角‥)、4六玉、2六龍、3六角合、5八桂、5五玉、3五龍、4五角引、6六銀、5四玉、6五銀、5三玉、6四金、同金、同銀、同玉、7三角以下。また⑫5五玉なら、1五飛成(4五歩合は、4六銀、同玉、2六龍‥、4五銀合は、同馬、同香、4六銀打、5六玉、4五龍‥)、5六玉、2六龍、4六香合、4七金、同玉、3八馬、5七玉、4八馬、5六玉、6六馬以下といった力の入った変化を含んでいます。
また中盤で7五と(㉒同玉は1五飛成‥)から8四と(㉘同玉は8六龍‥)と追撃する辺りも楽しく、最後は6九龍で一歩稼いで玉座で詰上る。攻方と玉方の小駒が左右対称に並んだ姿も美しく、作者の数多く炙り出し曲詰の中でもひときわ輝く終局です。
吉田健「ハデなことをハデにやってキッチリ決まった一作。詰上りの高雅なたたずまいに岡田流曲詰の一つの頂点を見る思いがする。大菱の決定版であろう」



「カルマの法則」の解説中に書かれている大塚播州氏作「おとぎ詰」を掲げておきます。


「近代将棋図式精選」長編の部第135番に収録されていますが、修正図が氏の作品集「漫陀楽」(第30番)で確定図と書かれており、それを載せました。

「近代将棋図式精選」長編の部においては、「地雷原」は第151番、「カルマの法則」は第156番、岡田氏作は第153番に収録されています。
「地雷原」は駒場氏の作品集「ゆめまぼろし百番」においては第49番に収録されています。

次回からは、第4回(第54期)に入ります。


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