続・塚田賞作品の魅力(2)(近代将棋平成7年3月号)①

森田銀杏氏の連載「続・塚田賞作品の魅力」、第2回(第52期)も3度に分けて取り上げたいと思います。
今回は短篇部門です。
第52期(昭和53年7~12月号)
「麻雀詰」などのシリーズ曲詰で解答者を楽しませてくれた岡田敏氏が8月号の記念作品で入選百回を達成して無鑑査作家となり、この期から塚田賞選考委員に加わりました。(なお『薫風』と題する五十局の岡田作品集が9・10月号の誌上付録になっています。)
さて、塚田賞の方は、短篇では柏川悦夫作を押さえて上田吉一作が独走。有力作品の多かった中篇では天地道人作と小寺秀夫作が拮抗しました。長篇は相変わらず墨江酔人作の一人舞台でした。
これらのベテランに伍して、数多くの新人作家がこの期に参入しました。その中には、後に活躍する飯尾晃・喜多真一・妻木貴雄・滝島代士夫・山腰雅人(尼龍)といった名前が見られます。


第52期「塚田賞」選考投票集計表



短篇賞 上田吉一作


上田吉一作(昭和53年11月号) 詰手順
2四角 ②4二飛合 7三角 6一玉 6二香 ⑥5一玉 4三桂 同金 6一香成 同玉
5二桂成 同金 5一角右成 同飛 6二角成まで15手詰
二枚の桂だけで抑えた軽い形なので、右左から角で挟撃する筋は一目ですが、初手の2四角は限定打。②4二歩突きなら7三角、4一玉、3三桂、3一玉、1三角成、2二合、3二香までの変化に備えたものです。また②6一玉の変化にも9四角、7二歩、7三桂、7一玉、8一桂成、同玉、8三香…と、角の限定打が含まれています。
2手目は6二に効かす4二飛合と決まったら、今度は7三角の限定打。これは6二香のときに⑥7二玉と逃さないためです。以下は守りの金と飛車を翻弄しながら桂香と右角を捌いて爽やかに詰上ります。
軽快な手順の中に知的な香りを秘めた傑作で、昭和56年に上梓された作品集『極光』の第七番に納められました。
柏川香悦「簡潔な棋形から、2四角の限定や変化の9四角の限定など、高度な内容はさすがと思う」
岡田敏「限定の二枚角打といい、飛を翻弄する手順といい、形の簡潔さと相まって鮮やかなまとめ方である。今期のピカ一」
植田尚宏「細かいやりとりが良い。詰棋らしい詰棋。一発妙手はないが纏まっている」
作者「簡素な棋形と限定打でどうやら新作としての体裁が整いました。盤の右端から左端までを変化で旨く使えたところが気に入っています」
上田吉一氏の本誌初入選は昭和47年12月。本作は入選5回目ですが、三度目の塚田賞となります。


次点 柏川悦夫作


柏川悦夫作(昭和53年10月号) 詰手順
2三金 同玉 3四金 1三玉 1四歩 同玉 1六飛 1五歩合 2三銀 2五玉
⑪3五金 同玉 3四馬まで13手詰
ごく自然な実戦型から意外な場所で詰上るのが狙い。3手目3四金と行くのは上部へ逃げ出されそうですが、1六飛と据えればあと銀一枚で詰みます。初手2三銀でなく金を手放すのはこのためで、実に味わい深い手。8手目の1五合も歩に限定してある(他の合駒では⑪2四金…が成立する)ところなど、推敲も行き届いた、滋味掬すべき佳作です。
本作は柏川香悦作品集『詰将棋半世紀』の盤上流転93番に納められました。



手順の太字は連載においては傍点が打たれていました。
上田氏の作品、「極光21」では第60番に収録されています。
「近代将棋図式精選」短編の部においては、上田氏作が第112番、柏川氏作は第111番に収録されています。
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