二歩禁の系譜(2)(近代将棋昭和51年9月号)

本日の記事は、村山隆治氏著「二歩禁の系譜」の第2回です。
予定より、大分遅れてしまいました…。
(第3図)
(2)第3図

 第3図 ――将来発生・直接型――
本局も前作と同じ『将棋無双』の、第43番。
6六桂㋑同歩 5五香㋺同と 同歩㋩同玉 5六歩 5四玉 4五金 同竜(3A図) 5五歩 同竜 4五角 同竜 同馬 4三玉 4四飛 5二玉 6四桂 6一玉 7二桂成 5一玉 6二成桂 同玉 6三銀 6一玉 7二銀成 5一玉 5二歩 同玉 6三馬 同玉 7三歩成 同飛 同成銀 同玉 6五桂㋥6二玉 6三歩 6一玉 6二飛 5一玉 4二飛行成 同歩 5二歩 4一玉 6一飛成まで47手詰。
 変化
㋑ 6三玉なら5二角 7二玉 6一角成 6三玉 5二馬行まで。
㋺ 5五同竜なら同歩 同と 4四飛 6三玉 5二角以下詰み。
㋩ 5五同竜なら4五金 同竜 同馬 4三玉 4四飛以下早く詰む。
㋥ 7二玉なら7三飛 6一玉 6二歩 5一玉 5二歩以下詰み。
先づ5六桂と穴ふさぎをして、守備の4四とをはずし、5六歩と打って(このとき6六桂と打捨ててないと、この穴から逃げ出される)5四玉の逃げに、4五金 同竜と詰方の効点を誘って、3A図となる。

(3A図は4五同竜まで)
(2)3A図

 この局面では、4五同馬が誘い手だが、以下4三玉 4四飛 5二玉 6四桂 5一玉(3B図)のとき、5二歩が問答無用の二歩とあっては、頭のマルイ角だけにどうしようもないことに気付く。即ち詰方の打った5六歩が、二歩の要因をなしているのである。

(3B図は5一玉まで)
(2)3B図

 そうときまれば3A図に戻って、この局面で5五歩と突き捨てなければいけないことに着眼できよう。5五同竜と取られて、再び4五に竜を戻す角損の攻めだが、5筋の二歩禁が解消して見事に解決する。
 詰めていく過程中に打った歩が、二歩の要因となり、従って適切なる機会をとらえて、この打った歩を巧妙に消滅させるという構想は、全くユニークなもので、奇趣玄想の傑作品である。


(第4図)
(2)第4図

 第4図 ――現在完了・間接型――
『将棋無双』の第54番。
2六金㋑同玉 3七金行㋺1五玉 2六金行㋩1四玉 1五金行㋥同玉 1六歩㋭同玉 2六金 同と 1五金 同玉 3三角 2五玉 2四角成 3六玉 2八桂まで19手詰。
 変化
㋑ 2六同となら1五金 同玉 3三角以下詰み。
㋺ 1六玉なら2六金打 同と 1五金 同玉 3三角以下詰み。
㋩ 2六同玉なら3七角以下詰み。又、2六同となら3三角以下詰み。
㋥ 2三玉なら3五桂 同と(3四玉は4五金 3三玉 5一角 3二玉 2三金以下詰み) 2四金打 3二玉 3三金打以下詰み。
㋭ 1四玉なら2六桂 2三玉 3四金 3二玉 3三金打以下詰み。
 宗看としては、比較的に詰手数の短い趣向作品である。二歩禁に誘う詰方の1四歩が配置されているために、一層妙味あるものになっている。
 それとこの図式で、もう一つ注意しなければならないことは、詰方の2八金がジャマ駒であること。もしこの金がなければ 初手より2六金 同玉 3七角 3六玉 2八桂 3五玉 4五金までで詰む。この筋を防いでいるのが2八金の存在である。そこで本譜の3手目から、3七金行 1五玉 2六金行とゴリ押しに捨てに行くところが面白い。
 また、1四歩が最初からなければ、5手目で1六歩と打つことができるので、早詰めとなってしまう。
 2六金行に対し同玉はなく、1四玉とさがるほか逃げ道はない。更に1五金行と追い討ちをかけ、以下同玉 1六歩が可能になり、再度の2六金捨てが決め手になる。ここ1五金打とすると2三玉と逃げられ、コマ不足となって詰まなくなる。
 1四歩を他滅させる順が、巧妙である。


(第5図)
(2)第5図

 第5図 ――現在完了・直接型――
『将棋無双』の第89番。
7八飛 同玉 8八竜 6七玉 6八竜 5六玉 5七竜 4五玉 4六竜 3四玉 3五竜 4三玉 5二銀不成 同玉 3二竜 6三玉(5A図) 6四歩 7三玉 7四歩 8三玉 8四歩 9三玉 9四歩 同と 8三歩成 同玉 7三歩成 同玉 6三歩成 同玉 7四銀 同玉 7二竜㋑6五玉 7六竜 5六玉 6六竜㋺4七玉 5七竜㋩3八玉 4八竜 2七玉(5B図) 3八角 1七玉 1八歩 同玉 2九角 2七玉 1八角 1六玉 2七角 同玉 2八竜 3六玉 2六竜㋥4五玉 4六竜 3四玉 3五歩 3三玉 4二竜 2三玉 2四歩 1四玉 1五歩 2四玉 4四竜 2三玉 3四竜まで69手詰。
 変化
㋑ 8四玉なら7三竜 9五玉 9六歩 同玉 7六竜以下詰み。
㋺ 4五玉と逃げられると不詰となる。即ち4五玉 4六竜 3四玉 3五歩 2三玉 2四歩 1四玉 3二角 2三桂合以下詰みがない。なお本局は、前田三桂氏により詰方の4一成香を成桂に改めることによって補正された。
㋩ 3六玉なら4六竜 2七玉 1八角 3八玉 4八竜まで。
㋥ 4七玉なら4六竜 5八玉(3八玉は3九歩 2九玉 2六竜以下) 5九歩 6九玉 6六竜 7八玉 6八竜 8七玉 8八竜 9六玉 8六竜まで。
 手数は長いが、竜の追い廻しなので、さして難しいことはない。ただ追い廻しの途中で重要な落とし穴が二個所あるので、注意が肝要である。

(5A図は6三玉まで)
(2)5A図

 その第一の落とし穴は、16手目で6三玉と逃げのびてきた局面(5A図)で、発生する。ここで本譜は、歩を連打して玉方の9五とを9四の点に呼び戻した後、再び打った歩を連捨てして、もとの6三に玉を戻すことになっている。ナゼ? そんな手間を掛けるのであろうか。
 もしも5A図で、誘い手の7四銀捨てを直ちに実施すると見事に迷路にふみ込み、以下同玉 7二竜㋭6五玉 7六竜 5六玉 6六竜 4七玉 5七竜 3八玉 4八竜 2七玉 3八角……以下本譜と同じ手順を経て㋥の4五玉の所で4七玉と逃げられ、そこで4六竜 5八玉 5九歩 6九玉 6六竜 7八玉 6八竜 8七玉 8八竜 9六玉で5C図となる。

(5C図は9六玉まで)
(2)5C図

 この局面では打歩詰めのご法度であり、完全に不詰となってしまっている。もしここで9五とが9四の点にさがっていたなら、見事8六竜で詰上ることが判る。そこで5A図に戻ってみよう。この時点で9五のと金を移動さすことができるだろうか。沢山にある持歩に着眼できれば、相当の腕前と自慢してよろしい。本譜の17手目、6四歩以下四歩を消費して、と金を一格下げ、再び歩を連捨てしていく趣向には、感服のほかない。これが第一関門なのである。
㋭ 6五玉の所8四玉なら、7三角成 8五玉 7四馬 9四玉 8三竜まで。また8五玉は7六竜 9四玉 7四竜 8四金合 8三角 9三玉 8二角成 同玉 7二竜 9三玉 9二竜まで、で詰んでしまう。
 この関門の通過は大変に難かしいと考えられる。というのは、変化の最終局面で玉方の9五との効きがあって、詰まないことが判っても、これを回避すると金の移動方法が、単純ではないから尚更である。単に一枚のコマの犠打でいくなら、その発見も容易であるが四枚の歩連打と連捨てには、全く宗看の面目躍如といった感が深い。

(5B図は2七玉まで)
(2)5B図

 さて、第二の落とし穴は、2七玉と逃げた5B図の局面で現われる。この図で、3八角と持駒の角を打って、曲芸のように回転させるウルトラCが見せ場である。この回転によって、詰方の1九歩と1六桂を消滅させ、収束の1五歩を実現させることができる。
 尚、3八角の所はやまって1八角とすると1六桂は消えるが、1九歩が残ってしまうので、収束の1五歩が二歩禁となってしまう。この工作をせずに、直ちに2八竜とすると、3六玉 2六竜 4五玉 4六竜 3四玉 3五歩 2三玉 2四玉 1四歩で、5D図となるが、角と歩の持駒では詰まない。

(5D図は1四玉まで)
(2)5D図
 5D図で、もし詰方の1六桂のみないとすれば、二歩で禁手。また1九歩のみないとすれば、打歩詰の禁手となる。片方のみを消すだけでは片手落ちとなるので、3八角 1七玉 1八歩 同玉 2九角 2七玉と追い、ここで2八竜とせず更にこの角を活用して、1八角 1六玉 2七角と1六桂を消去させる手腕に、敬服させられるのである。桂と歩を消去させておけば、5D図で1五歩が可能になり、見事詰上ることになって終幕する。
 本局は、二歩禁の趣向というより、打歩詰の趣向が濃厚に演出された作品と見るべきが妥当と考えられる。いづれにしても、詰棋人はその玄妙な気品に、感動されるに違いないはずである。

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