なつかしの好短篇(9)(近代将棋昭和63年10月号)

今回の更新は、「なつかしの好短篇」(9)です。
 八月一日、PLの花火大会を歩道橋の上に上がって見物した。
 私の自宅は、堺市の泉北ニュー・タウンにあり、そこから二十分位歩いて行った所から、富田林市のPLの塔が見える。
 毎年八月一日は、世界一と言われる花火大会があり、周辺は人と車でいっぱいになる。
 さて、私が行った歩道橋の上も、満員電車なみの混雑で、もし、橋がまん中からポキッと折れたら、下の車だらけの道路に転落かと考えたりしつつも、しっかりと人と人の間から前方はるか向こうに、打ち上げられる花火の祭典を眺める。
 流石というか、当り前というか、家の前で子供とやる百円の花火とは、ケタ違いで、夜空に開く、大輪の赤や黄や青の花は、素晴らしく派手で鮮やかである。
 中には、変わった花火もある。打ち上げられパッと開いた、色とりどりの丸い火の粉が、今度はゆっくりユラユラゆれながら、まるで風船かなにかのように、舞っているのです。
 花火とは、人の生のように、又、短篇詰将棋のように、華やかであっても、一瞬のものなのかと、変なことを考え、こじつけてみたりしながら、熱帯夜を過ごすのでした。
 と、いうわけで、今回は、一九七〇年前後の好短篇を、お見せしたいと思います。この頃は、特に短篇好作目白押しの状態で、ベテラン陣も毎月のように凄い作を発表していたのです。

 第七十一番 海老原辰夫氏作
第71番 海老原辰夫氏作
1968年11月「詰将棋パラダイス」
 第七十一番 海老原辰夫氏作
2七銀 同玉 1八角 1六玉 1七馬 2五玉 3五馬 同歩 1七桂 3四玉
3三金 まで11手詰
 2手目、2五玉は、1七桂、1四玉、1三金まで。
 4手目、1八同玉は、1七馬、2九玉、3九金、1九玉、2八馬まで。
 2五玉と逃げられた時は、1七桂で詰ませる。このことを念頭において攻撃をする。それでも、5手目、1七馬から、3五馬捨ての手順は、非常に見えにくい。
 作者の代表作である。



 第七十二番 植田 尚宏氏作
第72番 植田尚宏氏作
 1969年12月「近代将棋」
 第七十二番 植田尚宏氏作
1五歩 同玉 1七飛 1六銀合 2四角 2六玉 3五角 同金 1六馬 3六玉
2五銀 同桂 2六馬 同金 4六金 まで15手詰
 4手目、1六金打は、2四角、2六玉、3五角、同金、1六馬、3六玉、2六金以下。
 植田尚宏氏と言えば、実戦型の流麗な作を思い浮かべるのですが、本局は、珍らしい中段玉の合駒入りの作品。
 合駒前後の、捨駒手順は、やはり作者得意の軽妙さで、ベテランの実力を存分に発揮した一局。



 第七十三番 駒形駒之介氏作
第73番 駒形駒之介氏作
 1969年12月「近代将棋」
 第七十三番 駒形駒之介氏作
1二と 同玉 3四角不成 1一玉 2一角成 同龍 1二歩 同龍 同角成 同玉
3二飛 1一玉 2二飛成 まで13手詰
 4手目、2三合は、同角不成、1一玉、1二歩、2二玉、3二角右成以下。
 3手目、3四角成ならば、右の変化が、詰まない仕掛けである。
 玉方の二枚飛車が、要所に効いているのを、攻方の二枚角で突破していく。軽い落し穴も設けて、二枚角を捌いて詰め上げる。
 得意の貧乏図式の快作である。



 第七十四番 高橋 和男氏作
第74番 高橋和男氏作
 1969年12月「将棋世界」
 第七十四番 高橋和男氏作
4二角成 2四桂 3五桂 同歩 2四馬 3二玉 4二飛 3一玉 2二飛成 同玉
3四桂 1一玉 3三馬 同飛 2二香成 まで15手詰
 2手目、2四歩合は、同馬、2二玉、5二飛、3二金合、2三歩、3一玉、3二飛成、同玉、4二金まで。
 同じく2手目、2四歩合、同馬、3二玉は、4二飛、3一玉、2三桂、同飛、3二歩以下。
 4二角成から、2四合の捨合手順は、よくある筋ですが、あっさりした形から、大駒二枚まで捨て去る手順は、決定版と言える。



 第七十五番 池田 俊氏作
第75番 池田俊氏作
 1970年1月「近代将棋」
 第七十五番 池田 俊氏作
4三金 1二飛 4四金 同玉 4三飛成 まで5手詰
 初手、4四金は、同玉で、1三飛の効きがあって詰まない。
 4三金、1二飛と一呼吸おくことにより、1三飛をズラしてから、4四金と捨てるのが作意。
 1二角と打ち捨て、飛車の移動をはかるより、高級な感じがする。
 作者は、このような超短篇を、数作発表されていた。
 最近の本誌で、超短篇作は、余り見ない。



 第七十六番 岡田 敏氏作
第76番 岡田敏氏作
 1970年1月「近代将棋」
2二歩成 同玉 2三飛 3一玉 3二歩 4二玉 6四角 3二玉 4二角成 同玉
2二飛成 まで11手詰
 どのように攻めても、簡単に詰みそうな初型である。
 例えば、初手、3二歩に対して、4二玉は6四角、3二玉、4二飛以下だが、3二同玉と取られると、4一角、又は2二飛と打って詰みそうに思えるが、わずかに届かない。
 作意は、初手、2二歩成から2三飛と打ち換えてから、3二歩と攻める。以下、狙いの角打、角捨てで、ジャマな歩を消す。



 第七十七番 角馬 桂子氏作
第77番 角馬桂子氏作
 1970年1月「近代将棋」
 第七十七番 角馬桂子氏作
1一金 同玉 2一金 同飛 3三馬 1二玉 2四桂 同飛 1一飛 まで9手詰
 指将棋の女流棋界は、林葉直子、中井広恵、清水市代のトリオを筆頭に、今ようやく花が開き始めた感じがします。
 詰棋界では、全くと言ってよい程、女性作家はおらず、不思議な感じがします。
 勝負を争わず、俳句とか短歌に似て、女性にも詰将棋は向いていると思うのですが……。
 本作者、男性のペン・ネームでしょうが、サラリとした形と手順は、女性的。



 第七十八番 山中 龍雄氏作
第78番 山中龍雄氏作
 1970年1月「将棋世界」
 第七十八番 山中龍雄氏作
3三桂成 同桂 3六香 同龍 1六角 同歩 2四金 3五玉 2五金 同玉
2一飛成 3四玉 2四龍 4五玉 5四龍 まで15手詰
 本作は、「山中龍雄作品集」の第百番にも収録されている。この作品集は、一九七六年全局、山田修司氏解説でなされた、15手詰までの短篇百番である。
 「機会を得て、中長篇集も発行したい。」と述べていた編集主幹の鶴田諸兄氏はもういない。
 さて本局、作者の力を発揮した傑作。



 第七十九番 大関 信雄氏作
第79番 大関信雄氏作
 1955年12月「詰将棋パラダイス」
 第七十九番 大関信雄氏作
3四香 同飛 3三銀 2一玉 4三馬 1二玉 1三桂成 同玉 2三飛成 同玉
3二馬 1三玉 1四歩 同飛 2二馬 まで15手詰
 4手目、3三同飛は、同桂成、同玉、4三飛以下。
 2六飛車の効きを通すため、2五桂を捌くのですが、その時期が難しい。7手目、満を持して1三桂成と捨て、更に直ちに、2三飛成と、飛車を切ってしまう。以下成角を寄せていって、さわやかに収束する。
 紛れが結構ある作品であった。



 第八十番 巨椋鴻之介氏作
第80番 巨椋鴻之介氏作
 1956年6月「詰将棋パラダイス」
 第八十番 巨椋鴻之介氏作
3三香成 同飛 3四桂 同飛 3一銀 同飛 4二飛成 同馬 2三金 まで9手詰
 4×4の中にコンパクトに、パック詰された実戦型。
 2手目、3三同桂は、3四桂、1二玉、1三銀、同飛、2二金まで。
 玉方の飛車を3筋に呼んだあと、更に、3四桂、3一銀と、飛車の移動をはかり、最後は、手筋の4二飛成捨てで決める。
 かわいい感じのする小品である。
 作者は、中長篇界の超一流作家であった。




第七十三番は、11手目32飛のところ、22飛、11玉、21飛成まで詰みがあるようです。

第七十四番は、初手51角成も成立するようです。

第七十八番は、6手目同歩のところ、25龍、同角、同玉、27飛、26銀、21飛成、34玉、24龍、45玉、55金打、46玉、26龍まで17手で駒が余るようです。

第八十番は、2手目同飛のところ、同桂、34桂、21玉、41飛成以下、11手で駒が余るようです。

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