なつかしの好短篇(6)(近代将棋昭和63年6月号)

今回の更新は、「なつかしの好短篇」(6)です。
 私は、三年前から、熱帯魚の飼育に凝っている。
 派手な模様の美しい「クラウン・テトラ」キラキラ光る熱帯魚の女王「カージナル・テトラ」二代目が群れ泳ぐ「ペルマトクロミス・クリベンシス」その他、色んな種類の魚たちが、水草の間をぬうように泳いでいる。
 以前に買った「新しい熱帯魚の飼い方」という初心者向の本のはしがきに、将棋のことが少し、次のように書かれている。
 「熱帯魚は『趣味の終着駅』だ、といわれています。世の中には、たくさんの趣味がありますが、結局は、熱帯魚の楽しさに勝るものはない、といったような意味です。
 ゴルフ、釣り、旅行など、いずれも外へ出かけていかないとできないものばかりで、毎日、四六時楽しむ、という訳にはまいりません。
 それでは、家にいて楽しめるもの、たとえば囲碁・将棋、、・マージャンはどうでしょうか。これらは、相手がいなくてはできません。……」
 さて、半年間続けてきた「なつかしの好短篇」今回でちょうど五十人の作者が登場しました。次に列記してみます。(敬称略)
1月号
1堀内和雄 2山本勝士 3藤井国夫 4井上雅夫 5浜田 博 6酒井克彦
7中本 実 8吉田 健
2月号
9古内正孝 10二田達夫 11森 敏宏 12岩井則幸 13松本勝秋 14小西逸生
15山田修司 16細田 強
3月号
17長谷繁蔵 18山中龍雄 19海老原辰夫 20北川邦男 21加藤俊介 22渡辺三郎
23斎藤忠 24桑原辰雄
4月号
25小林正美 26北原義治 27三吉一郎 28橋口忠夫 29中野和夫 30河辺野凡太郎
31安達康二 32村山隆治
5月号
33坪井作道 34伊藤喜和 35近藤 孝 36勝浦 修 37加井 拓 38大江杉芳
39金田秀信 40近藤一男 41十字次郎
6月号
42株本正貴 43宇山英気 44山口真人 45谷向奇道 46伊勢重治 47古川 満
48柴田昭彦 49宿利 誠 50仲西哲男
 このように、改めて並べて見なおすと、現在も活躍している作家は、意外と少なく、十人余りでしょうか。又、既に故人となられた方も、数名おられ、時の流れを感じずにはおれません。
 なお、取材誌は、
「近代将棋」     十三作
「将棋世界」     二十七作
「詰将棋パラダイス」 十作
 私のノートには、以上三誌から選んだものをのせているのですが、更に、余り知られていないものをと、五十局選び抜いたわけです。
 楽しんで頂いているでしょうか。

 第四十二番 株本 正貴氏作
第42番 株本正貴氏作
 1968年4月「近代将棋」
 第四十二番 株本正貴氏作
1五飛 同金 1三銀 同玉 3五角 2四桂合 同銀成 1二玉 1三成銀 同桂
2四桂 まで11手詰
 塚田賞も取った期待された作家であったが、ほんの数作で、消えてしまった。
 本局、一見移動合でも出てきそうな初型ですが、2手目、1四角上は、3四角、同桂、1四飛、2三玉、2四銀打以下、同手数駒余り。
 作意は、6手目、2四桂という捨合が出て桂吊しで詰め上げる。作者のセンスの良さが出た作品である。



 第四十三番 宇山 英気氏作
第43番 宇山英気氏作
 1968年4月「将棋世界」
 第四十三番 宇山英気氏作
2二香成 1三玉 1四銀 2四玉 3三銀生 同桂 1三銀生 同玉 1一龍 2四玉
1四龍 同玉 3二角 2四玉 2三角成 まで15手詰
 初手、普通に龍で追うと、2三香がじゃまになり、どうにもつかまらない。そこで、2二香成から、1四銀と角打を含みにして攻める。続く5手目、3三銀生から、1三銀生の順が狙いで、収束は、龍捨てで、やはり角打で決める。
 宇山氏は、手筋物でありながら、ちょっと変わった感じのする作を創る作者である。



 第四十四番 山口 真人氏作
第44番 山口真人氏作
 1968年5月「詰将棋パラダイス」
 第四十四番 山口真人氏作
8七銀 同玉 8六飛 7八玉 7九歩 同玉 8九飛引 同玉 8三飛 7八玉
8八飛成 まで11手詰
 初型、盤面銀四枚だけの簡素な図。
 3手目、8六飛と近くから打ち、7手目、それを8九飛と捨てて、8三飛と遠くから打ち換える。
 4手目、7七玉は、7六飛打、6八玉、8八飛まで。
 作意・変化とも二枚飛車の活用で詰め上げる。簡素な形からは想像もつかない、派手な手順の作である。



 第四十五番 谷向 奇道氏作
第45番 谷向奇道氏作
 1968年5月「近代将棋」
 第四十五番 谷向奇道氏作
2一角 同玉 2三飛 2二角 同飛成 同玉 1一角 3二玉 2三角成 同玉
3三金 1三玉 2二角成 まで13手詰
 古くに、活躍されていた作者で、本名は、谷向弘氏。谷向奇龍氏は弟さん。最近の読者は、どちらも全く知らないと思います。
 私よりも、もう一世代上の実力作家で、作風にも異質のものを感じます。
 初手、2一角から、2三飛で、合駒を得て、又、7手目、1一角と下段から攻め、そして角捨てで終わる。大駒使いが異色。



 第四十六番 伊勢 重治氏作
第46番 伊勢重治氏作
 1968年6月「近代将棋」
 第四十六番 伊勢重治氏作
1四歩 同飛 1二金 2三玉 3五桂 2四玉 3四銀成 同馬 2三桂成 同馬
3五飛成 まで11手詰
 初手、2五桂と打てば、簡単につかまりそうだが、2三玉とかわされると、後一歩足りない。そこで、打診の1四歩から、3手目、重く1二金と打ち据える。そして、その金を主軸にして、玉方4四馬の移動をはかる。
 一時、作者のお名前を見なくなっていましたが最近又、「将棋世界」で活躍されている。
 一九八一年発行の「三百人一局集」では、伊勢氏の作は、私が代理で解説した。



 第四十七番 古川 満氏作
第47番 古川満氏作
 1968年7月「将棋世界」
 第四十七番 古川 満氏作
2三銀 同香 2二金 同銀 2一飛成 同玉 3二香成 同玉 4三馬 3一玉
4二と まで11手詰
 序盤は、持駒の金銀を捨てて、玉を2筋へ呼び、3三馬と行って、銀を奪って詰め上げることをはかる。焦点への打ち捨てだけに、味わい深い着手である。更に、5手目、2一飛車成から、3二香成と強引に玉を、2筋から3筋にまで呼びこみ、最後は馬と、と金の協力で詰め上がりとなる。
 古川氏は、捨駒を基調にした手筋作を、得意としていた。



 第四十八番 柴田 昭彦氏作
第48番 柴田昭彦氏作
 1968年7月「詰将棋パラダイス」
 第四十八番 柴田昭彦氏作
4二角 3三角合 1四飛 同玉 1六香 1五銀 同飛 2四玉 3三角成 同桂
3五角 同歩 2五銀 同桂 1四飛 まで15手詰
 本局は、私の学生時代に、作者に見せて頂いた作で、「詰将棋パラダイス」の表紙を飾り、年間最優秀作にもなった。合駒の活用が得意な作者の特長が、よく出た佳作で、手順前後の綾を含みに、乱れることなく見事に収束する。
 現在作者は、「詰パラ」で入選二百回を超える特別同人作家である。



 第四十九番 宿利 誠氏作
第49番 宿利誠氏作
 1968年8月「将棋世界」
 第四十九番 宿利 誠氏作
1四飛 同玉 1三桂成 同玉 3五角成 同龍 2四金 同歩 2五桂 2三玉
1二角成 同金 3三桂成 まで13手詰
 「将棋世界」で催された短篇コンクールで優勝した作である。どうしても「形よりも手順を見てくれ」と言った、思い切った作に票が集まるようだ。
 大駒三枚捨て、両王手とやりたい放題の作意。ただ、形が悪いというのではなく、駒は機能的に実によく働いている。それが、実力作家の作の、証左である。



 第五十番 仲西 哲男氏作
第50番 仲西哲男氏作
 1968年8月「詰将棋パラダイス」
 第五十番 仲西哲男氏作
2六金 同と 2二飛 2三桂合 同飛成 3五玉 4六角 4四玉 3四馬 同銀
5六桂 まで11手詰
 作者は、私と同じ香川県の出身であり、後に大阪に出た様子ですが、その頃から名前も見なくなった。超短篇の7手詰を中心に、濃密な手順の作品を発表していた。
 本作は、作者の代表作とも言える作で、4手目の、2三桂の中合を見落とした解答者が続出した。収束も、馬捨てでピタリ、手順を重視した作者の特長の良く出た作である。いわゆる「P誌調」の作である。

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