なつかしの好短篇(4)(近代将棋昭和63年4月号)

今回の更新は、「なつかしの好短篇」(4)です。
 「盤上奇想」将棋ジャーナル誌の詰将棋欄担当者の柳田明氏の作品集「奇想曲」が、上梓された。
 日本アマチュア将棋連盟結成・将棋ジャーナル創刊十周年を記念して発行された単行本の第一弾である。
 9手から15手詰の短篇を中心に、代表作の煙詰「稲村ヶ崎」まで内容豊富な作品群に加えて、作者の詰将棋環境が、ストレートに生のままで、思いっきり書きまくられている。従前の作品集とは、一味違う何かが感じられた。

 第二十五番 小林 正美氏作
第25番 小林正美氏作
 1966年12月号「近代将棋」
 第二十五番 小林正美氏作
3二銀 同香 2二飛 同玉 1三角成 3三玉 2三飛 3四玉 4六桂 同金
3五馬 同玉 2五飛成 まで13手詰
 指・詰両刀使いであった本作者ですが、指将棋の方に魅力を感じたためでしょうか、全く詰将棋は創らなくなったようです。
 さて本局、空王手・両王手の筋が、いっぱい見えるのですが、4筋まで逃がすとつかまらないので、3二銀で、香を吊り上げてから、その香に狙いをつけ、2二飛で玉を落とす。以下、3五馬捨てまで、きれいにまとめる。



 第二十六番 北原 義治氏作
第26番 北原義治氏作
 1966年12月「将棋世界」
 第二十六番 北原義治氏作
4二飛 3三玉 3二角成 2四玉 2五銀 1五玉 1六銀引 2四玉 4四飛成 同馬
2五銀 1五玉 4二馬 3三馬 同馬 同龍 2四角 同龍 1六銀引 まで19手詰
 詰将棋界の巨人、北原氏の登場です。恐らく、その創作数は、史上ナンバーワンと想定されます。
 質的にも、本作を見てお分かりのように、実に推敲しつくされた、形・手順の作ばかりで敬服しています。
 飛角を存分に活用しながら、さりげなく馬の移動合を入れ、収束もピタリ北原流の冴え。



 第二十七番 三吉 一郎氏作
第27番 三吉一郎氏作
 1966年1月「近代将棋」
 第二十七番 三吉一郎氏作
1三銀 同玉 3一角 2二桂合 2五桂 1二玉 1四飛 同桂 1三桂成 1一玉
2三桂 同香 2二角成 まで13手詰
 「小駒の三吉」として「詰将棋パラダイス誌」で大活躍をされた作者である。
 本局、普通作ではありますが、序・中盤のつなぎ、収束ときめの細かい仕上げは、やはり小駒使いの名人の腕前だけのことはあります。初型も簡素で、好感が持てる作です。
 後に小駒図式と言えば、杉山正氏が長篇を連作され、塚田賞も受賞している。



 第二十八番 橋口 忠夫氏作
第28番 橋口忠夫氏作
 1967年2月「詰将棋パラダイス」
 第二十八番 橋口忠夫氏作
1五金 同玉 2六銀 同と 2四銀 2五玉 3四龍 同桂 1四角成 同玉
1五金 まで11手詰
一時いっとき、いい作を発表しても、すぐに消えてしまう作家が、実に沢山いる。いや、ほとんどの者がそうなのかもしれない。
橋口氏も、本当にいい作を創っておられたのだが……。
本図、縦長のスマートな初型から、小駒の連捨ての序・大駒捨ての収束と、巧妙な演出を見せる。これはもう、ベテラン実力者の構成である。



 第二十九番 中野 和夫氏作
第29番 中野和夫氏作
 1967年3月「近代将棋」
 第二十九番 中野和夫氏作
2二銀 3二玉 3五香 同と 3三飛 2二玉 1一銀 同玉 3一飛成 まで9手詰
 3手目、3五香、同との順を経てから、3三飛から1一銀の筋にはいる。8手目、1三玉とかわせば、3五角が用意されている。
 この収束は、この頃、はやっていたのか、他にも数氏が発表していた。が、それでも見えにくい収束で、ヒトケタ物としては、異色の難解作と言える。
 本作者も、時折、名前を見かけましたが、最近は、全く見なくなりました。



 第三十番 河辺野凡太郎氏作
第30番 河辺野凡太郎氏作
 1967年3月「将棋世界」
 第三十番 河辺野凡太郎氏作
1一飛成 1二角合 3三飛成 2三角打 2二龍引 1四玉 3四龍 同角 2五銀 同角
2六桂 まで11手詰
 古くから「将棋世界」専門で活躍されている作者ですが、非常に洗練された作風で、何故こうも見事に決めた作が創れるのか、いつも不思議に思っています。
 本作でも、角の連合をアッサリ実現し、その後、飛車捨てから、銀の捌きと、誠に要領良くまとめ上げている。とかく、無理創りをしてしまいそうな構想を、いとも簡単に、短かく表現。不思議である。



 第三十一番 安達 康二氏作
第31番 安達康二氏作
 1967年7月「詰将棋パラダイス」
 第三十一番 安達康二氏作
2八銀 3八玉 4八金 同玉 3九角 5九玉 5七角 まで7手詰
 2手目、2八同玉は、7三角、2七玉、3七角成、1六玉、2六馬まで。
 安達氏は、その頃、盤面いっぱいを使った前衛的な7手詰を、連続的に発表していた。一方では、長篇佳作も発表していたが、やはり、明晰な短篇作家の印象がする。
 本作、盤面の拡がりもなく、使用駒数も少ないのですが、作意と変化は、大駒を大きく使った派手な順である。強烈な詰め上がりには、感銘を受けたものだった。



 第三十二番 村山 隆治氏作
第32番 村山隆治氏作
 1967年7月「将棋世界」
 第三十二番 村山隆治氏作
8五角 8三玉 9四角 9二玉 8三角成 同玉 8四飛 7二玉 6一角 同玉
5一飛 7二玉 8一飛成 まで13手詰
 「詰将棋教室」の著者として知られる、大ベテランの作品である。現在ベテランと呼ばれる作家も初心者の頃、プロの本の中にまじったこの本を、読まれたのではないでしょうか。
 本局、角の押し売りから始まって、徹底した大駒の攻撃は、理論派らしい作者の、筋道の通った作意順である。詰将棋でも、筋を通すことは、意外に難しいことなのですが……。




第三十番は、3手目33飛成のところ14飛、同玉、12龍、13金、32角、24玉、13龍、同玉、23金、14玉、22金、24玉、23角成までの詰みがあるようです。
谷口氏は、41飛→43桂とする修正案を提示されています。

第三十二番は、発表図より55金→43金となっています(「五雨十雨」第五十五番)。
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