なつかしの好短篇(1)(近代将棋昭和63年1月号)

今回からは、1988年に近代将棋誌にて、谷口均氏の筆で掲載された「なつかしの好短篇」を取り上げたいと思います。
筆者の谷口均氏、近代将棋に長く勤められた森敏宏氏に許可を頂き、掲載の運びとなりました。感謝申し上げます。
1日おきで更新していく予定です。

1988年当時の谷口氏の好みでの選出であることは、ご承知おき下さい。

なお、最後に余詰・変長について追記しています。
あくまで現在の視点で書いたもので、当時は問題ないとされていたものもあるかもしれません。

それでは、本文に入ります。
 ここに、私の二十才前後から始めた、詰将棋収集ノートがあります。
 15手詰以下の好作を、「近代将棋」「将棋世界」「詰将棋パラダイス」の三誌から拾い集めたもので、図面・作者名・発表誌名・年月・作意を記し、約四百局位あります。一九六四年頃から十年近く続けていました。
 15手詰位までの短篇作ならば、何とか自力で詰まそうと試みて、自分でも良いと感じ、解説でも好評だった納得のいく好作を、毎月数作ノートに書き記していたものです。
 それは、解図力のアップのみならず、創作力を身につける上にも、かなり役に立ったようです。
 こうして改めて、見なおしてみると、なつかしい作品・なつかしい作者が、ノートをめくるたびに現われて、その時の想い出がよみがえってくるようです。
 さて、そのノートの中から、さらに好局を選び出して、本号より御紹介していきたいと思います。(なお年号は、西暦)

 第一番 堀内 和雄氏作
第1番 堀内和雄氏作
 1964年4月「近代将棋」
 第一番 堀内和雄氏作
2六桂 同銀 1六飛 2四玉 2六飛 1五玉 1六銀 同角 2五飛 同角
2六金 1四玉 2三馬 まで13手詰
 本誌にエッセーを掲載されたりしている作者だが、何といってもすごいのは、発表詰将棋の全てが、完全作ということである。完全率の高さは、一流作家の証明だが、百パーセントとなると、大変なことである。
 本局でも、巧みな駒取りを含むなど、余詰の危険を完全に押さえ、しかもコクのある手順をかもし出している。



 第二番 山本 勝士氏作
第2番 山本勝士氏作
 1964年4月「将棋世界」
 第二番 山本勝士氏作
7三桂成 8六桂合 同飛 同角 7四飛 9三玉 8五桂 同金 9四飛 同玉
8三角成 9五玉 8七桂 まで13手詰
 この頃「将棋世界」は、読者の投票によりその月のトップを選び、楯を進呈していた。
 本局が第一位で、山本氏は、これ以前にも何回かトップになっておられる。
 初手、9三桂成を見せて、実は俗な7三桂成という駒取りから始まる。対する変化が複雑で、同玉は、7四飛。又、8五合は8三飛以下。後は、奇麗な手順でまとめている。



 第三番 藤井 国夫氏作
第3番 藤井国夫氏作
 1964年5月「将棋世界」
 第三番 藤井国夫氏作
8五飛 同香 7八金 9七玉 7七飛成 8七角生 8八龍 9六玉 9七歩 8六玉
7六馬 同玉 7七龍 まで13手詰
 「必至図」の方でも大ベテランの作者の不成物の作品。
 7三にいる成れる飛車を舞台に出すため、じゃまな7五の飛車を初手から捨て去る。5手目、7七飛成に対する、8七角生が、皮肉な応手で、打歩詰型に誘う順。成り飛車を活かしながら、4九馬を捨ててフィニッシュ。
 成と不成を対比させた好局である。



 第四番 井上 雅夫氏作
第4番 井上雅夫氏作
 1964年5月「近代将棋」
 第四番 井上雅夫氏作
4五桂 5二玉 4三角 同玉 3三桂成 5二玉 4三成桂 同玉 6三龍 3四玉
4五金 同玉 4六歩 3四玉 3三龍 まで15手詰
 5手目、3三桂成から、4三成桂と、初手に跳ねた桂を消去する。強烈にアピールする好手順で、深く解答者の印象に残る。
 2手目、4五同歩は、4四角、5二玉、6二角成、同玉、7一角、5一玉、5四龍```以下で変化も奥があり、図型の拡がり過ぎを割り引いても、好作と推選できる。
 作者は、故人だが、相当な作家であった。



 第五番 浜田 博氏作
第5番 浜田博氏作
 1964年5月「将棋世界」
 第五番 浜田 博氏作
5四角 4三桂合 同角成 同桂 2三飛 3一玉 3三飛成 3二金合 4二銀 2一玉
2二香 同金 3一銀成 1二玉 2四桂 まで15手詰
4五角に狙いをつけた初手角打ち、3三香に狙いをつけた5手目の飛車打ち、飛び道具の離し打ちの魅力である。
 2手目、4三香合は、同角成、同桂、2四香。4三銀合は、同角成、同桂、3二銀以下、変化・紛れがたっぷりあり、重量感あふれる作で当月のトップ。
 なお、最近、同名の若手が売り出し中。



 第六番 酒井 克彦氏作
第6番 酒井克彦氏作
 1964年10月「近代将棋」
 第六番 酒井克彦氏作
3六金 2七玉 2六金打 同歩 3七金引 同と 1八角 1六玉 3六角 まで9手詰
 最近、又、活躍をされている作者の珍しいヒトケタ物。本局発表の前後、誤答者が続出する作を、連続的に発表して、「ペテン師」の愛称で親しまれた(?)
 さて、本図は、入玉模様の実戦型ですが、3六金から3七金と、玉の腹をこする手順の「合の手」に、2六金の打ち捨てをはさみ、詰め上がりは、狙いの3六角を決める。短手数で、密度の高い作品。



 第七番 中本 実氏作
第7番 中本実氏作
 1964年10月「将棋世界」
 第七番 中本 実氏作
1五桂 同銀 3四銀 1四玉 2五銀 同桂 1三金 同玉 3一角成 2四玉
1三馬 3四玉 3五馬 まで13手詰
詰将棋では、不安定な形・ぎこちない形の方が、いいことがある。そこから生まれるヒヤヒヤするような手の連続に、詰将棋の魅力がある所為せいかもしれない。
本図、初手の1五桂はともかく、3手目からの手順は、いかにも不安な攻めである。龍の効きが、角の影に隠れ、しかも敵龍に取られる形だからだ。異型の好局である。



 第八番 吉田 健氏作
第8番 吉田健氏作
 1964年10月「将棋世界」
 第八番 吉田 健氏作
4二と 2二玉 4四角生 3三角合 同角生 1二玉 2四桂 同歩 1三歩 2三玉
2二角成 同玉 4四角 2三玉 3三角成 まで15手詰
 本誌、鑑賞室解説者のカムバック作で、記念すべき作品である。
 3手目、角生に対する角合というテーマ、以下、角を捨てての収束と、実に明快な作意順で、当月のトップに輝いた。
 本局発表後、作者は、中段・入玉型の超短篇を続々と創作され、「詰将棋パラダイス」では、入選二〇〇回を超えられている。




第二番は、2手目86合、同飛、85合または4手目73玉以下、どうやら2手長くなるようです。

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