詰将棋放談会後編(近代将棋昭和43年3月号)

本日は第29回詰将棋全国大会が無事行われたようですね。
敷居が高いというイメージがあるのですが、都合が合えば来年参加してみようかなと少し思っています。

今回は座談会形式の記事を取り上げたいと思います。
2ヶ月に分けて掲載されたのですが、後編だけを取り上げてみようと思います。
出席者は有田辰次・門脇芳雄・金田秀信・黒川一郎・駒場和男・七条兼三・森田正司・森敏宏(司会)の各氏です。
再び双玉について
黒川 普通一般の詰将棋で、単玉と双玉とを区別するか、または一つのものとして扱うか、その辺はどうなんですかね。
森田 区別する必要はないと思いますね。それに双玉はもっと作られてもいいんじじゃないですか。大道将棋的な考え方じゃなく、玉の利きで配置が簡潔になるなどの利点だけでも双玉の価値があると思いますね。
有田 そう、玉を置いたために10枚の配置が7枚ですむとかでね。
黒川 しかし、古来からの作品は殆んどが単玉ですがいまに双玉が盛んになったとしてそれをごっちゃに合併してしまうことに何んとなく抵抗を感じるんですがね。
有田 それはね、初めから単玉であったから双玉が何んとなく変に感じられるのであって、大体両方に玉があるのは当り前なんじゃないですか?
黒川 当り前です。けれども仮に作品集として発表する場合は区別したいですね。
駒場 僕の考えは詰将棋をゲームとしてみた場合は双玉を認めますが、詰将棋を芸術としてみた場合は反対なんです。
門脇 双玉はルールは同じで少々バライティが入ったと考えて、ちっとも区別する必要はないのじゃないかと思いますね。
七条 双玉でむずかしいと言えば古関三雄の作品にあったくらいで、あとは左程難しくないね。
有田 そう、考えようによっては双玉は易しいんじゃないですか。逆王手をある程度警戒すればあとは易しいですね。かえって、一般の作品の方がむずかしさがあります。
金田 そう言うけど、もう一つの王様に関心を注ぐとなるとねえ、一つの玉を攻めるのでさえ精一杯なんだから(笑)
黒川 たしかに、そう言う事も言えますね(。)ひとつの王様に精神を集中してこの玉を詰めるんだという、自分の玉は考えに入れなくてすむということでね。
門脇 チェスプロブレムでは頭から王様は双玉と決ってるわけですよ。それで逆王手食っちゃあいけないってんで、カチカチに固めそれだけの目的で置いてあるのもあるわけですよ。それを不思議ではなくやってきているんですね彼らは。
有田 いずれにしても双玉にもっと関心を持ってもらいたいですね。
 双玉は今のところ殆んど投稿がありませんが、発表にたる作品であれば、載せたいと考えてます。

短篇は今のままではダメ
 最近の短篇について金田さん、手の行きづまりというものを感じますか。
金田 ええ、もう皆んな同じようになっちゃったですね。
森田 短篇のハバにもよりますが、10手以下でしたら、新しい手筋は望めないと思いますね。
有田 僕なんかは最近、創作ってことはどういうことかと考えちゃうんですね。創作とはその人が初めて考えついた事となると、これはもう短篇じゃ殆んど至難じゃないですかね。
 いかなるものを作っても、何かのワクの中に入ってしまうということですね。
門脇 詰将棋は二つに分かれていくわけで一つは短篇の大衆向の消もう品として、もう一つは消もう品じゃ満足出来ない芸術的なものを求める人ですね。だから今までのように駒数少なく、形よくなんてんじゃどうしょうもないから、発展する余地として双玉のような、或いは従来の慣習にとらわれず、頭を切り変えていかなければ、新しいものが出来ないんじゃないですかね。
黒川 結局人間というものはある限界がありますから、ある一定の年令がくれば、また時代が変ってきますから、今の人達はマンネリと思っても、その次の世代の人がみれば、新鮮に見えるから、今やってる事のムシかえしをやっても、ある程度いいんじゃないかと思うんですけどね、
門脇 芸術派カタギでは短篇は出来にくいですよ。

盤面いっぱいの3手詰
門脇 チェスプロブレムで大変感心したのは、問題が皆二手で、二手というのは詰将棋の三手詰、以前は五手詰が主流だったのが、いまは三手詰なんですね。その中にいかに面白い仕かけを盛り込むかに苦心するわけです。三手で表現できるものを五手でやるのはヘタクソと言うわけで。三手詰と言ってもオイソレとは解けないんです。大体駒の配置の多いのは三手。少ないのは五手、七手という傾向なんですね。
黒川 詰将棋と逆なわけだ。
門脇 そう、詰将棋は駒数少なく簡潔にと言うわけですが、ひとつそういう先入観を取っぱらって、駒をいくら置いてもいいから、三手でモノすごく巧妙な仕かけにするかに苦心をはらえば、また、新しい作品が出来るかも知れないですね。
 詰将棋で盤面駒いっぱいの三手詰なんて出来るでしょうかね(笑)
黒川 出来ますね。
 使用駒全部が必要でなければいけないわけですよ。
黒川 そう、カラクリ屋敷みたいなものにするわけです。
有田 まあ、全駒使用の三手詰はどうもねえ(笑)むずかしんじゃないですか。
 いっぱいあってみかけだおしみたいでね(笑)
金田 そんな駒いっぱいの三手というのはちょっと考えられないですね。
黒川 大道五目が大体そうじゃないですか(。)

解くと作るでは……
七条 詰将棋はどのようにして作るんですかねえ。僕は全然作れないな。詰めていれば横綱でいられるけど、作るとなると、ふんどしかつぎに落っこちゃうんで作らないけれど(笑)作る人っていうのはどうも不思議でしょうがない(笑)
 金田さんは作る方が易しいでしょう。詰ますより(笑)
金田 まあ両方大変ですけれども、詰める力がないと検討がやっかい。これは言えますね。
七条 芹沢八段などはあまり詰まさないですね。どう言うわけでしょうかね(笑)
有田 とにかく詰将棋にあまり熱中すると指将棋にマイナスになる面もありますからね(。)
 必死かけとけば簡単に勝つやつを、むずかしい詰めに行って、詰まなくて手痛い目にあうなんてことがあるからね(笑)
金田 専門棋士はあまり作るということは勉強にならないんじゃないかな。

ユメが実現したら
 黒川さんなどはユメの中でプロットが浮んだ経験はないですか。
黒川 ユメの中でねえ(笑)まあ妙手とか好手じゃなく、駒の動きと言うか趣向みたいのありますね。これはすばらしいてんでハッと気がつくとユメなんですね(笑)
駒場 すぐパッとさめれば覚えているでしょう。
黒川 しかし、さめてみると実にくだらないんであきれかえっちゃう(笑)
駒場 僕も一度だけある。おかしなことに後で思い出したら盤面が百格になってる(笑)
有田 私もありますが、忘れちゃいますね(。)すぐその時にノートしないとね。
 ユメの中でノートしても間に合わない(笑)
駒場 以前、ドンキホーテと言うペンネームの人が雑誌に出したことがありますね。夢想局として三題ばかり。
門脇 一生懸命作ったものがあまりに出来がよくないのでテレかくしに夢想局としたのかも知れない(笑)

曲詰しか作らない
駒場 門脇さんは最初から最後まで曲詰だったんですか。
門脇 殆んどそうですね。
黒川 こういうケッタイな人もいる(笑)
森田 他のは作る気はないですか、全然。
門脇 出来ないから。作ってもそこいら辺のと似たりよったりだから(笑)
駒場 曲詰はむずかしいんじゃないですか他のものよりも。
門脇 そんなことはない、易しいですよ。
有田 そうですかね。
 北原さんの曲詰はどうですか。
門脇 作り方は同じですが、あの人のはいろんな事をやって来てるから、手口がすぐひらめいて筋で作り上げていくんでしょうね。

北原詰将棋の解剖
 今日残念ながら出席できなかった北原さんの詰将棋について、ひとつ鬼のいない間にさかなにしようと思いますが(笑)
有田 北原さんは量においては第一人者ですが、長篇ものは比較的少ないですね。
門脇 そう、中篇が主ですね。二、三十手前後の。
 さばきが主体の作なんですかね。
黒川 さばきと言うより、駒の性能をフルに生かし、駒数は最少限に妙手を沢山ひねり出すと言う、大変欲の張った(笑)考え方でその点では第一人者ですね。
 北原さんの詰将棋に対する考え方は、「終り悪るければ全て悪し」というんです。収束を重要視するわけです。
金田 終り良ければ全て良しとは言えないからね。詰将棋の場合は(笑)
駒場 結局、看寿の影響を受けているんじゃないですか。
 今までの発表数が六百と言うからすごいですね。
有田 前人未踏ですね。
黒川 六百作るのでさえおおごとだからね(笑)
金田 悪い事でもして刑務所へ何年も入ってなきゃ出来ない数だ(笑)僕は刑務所にでも入ったらバリバリ作ろうと思ってるんですが(笑)
駒場 北原さんの場合、折にふれて、ひらめいたのをさっと作っちゃうじゃないですか(。)
金田 その折にふれてパッと出てくるというのが簡単じゃない。(笑)
 まず、折にふれないとダメ(笑)
金田 道など歩いてて車にひかれやしないだろうかなんて考えたんでは出来やしない。(笑)あぶなっかしくて(笑)
七条 自分の方が詰んじゃう(笑)

筋の悪い手もまたよし
駒場 大体詰将棋の場合、筋の悪さというのも必要ですね。筋のいいのばかり作ってる人をみるとそう思いますね。
七条 筋の悪いというのは既成手筋にないからね。新手筋かも知れないしね(笑)
有田 短篇なんかで新鮮味を出そうと思ったら、結局そんな傾向になるんじゃないですか。
 取って取って取って、取った駒を打って打ってなんていう手筋はないから(笑)
駒場 いま思いついたんだけど、盤上に全駒を置いてそれを全部取って裸玉にしたのを全持駒で詰め上げるようなやつを出来ないですかね。
黒川 電子計算機のすごいのがあれば出来るかも知れない(笑)
森田 計算機自身は創作は出来ないでしょう。解くことと検討には使えますが。
門脇 ずいぶん高い検討費になりますね、あれは。
森田 そう、一分間何万円とかでね。
黒川 すごいなあ、それじゃお話にならない。(笑)

プロット談義
森田 趣向作を一度作ってみようと考えてるんですが、思いつきのプロットがすでに発表されているんじゃないかと不安がつきまとうのでやめちゃうんですよね。
 趣向のカタログは殆んど黒川さんの手に握られているから。
黒川 そんなこたあないです。駒を合させてそれを取って何回もくり返しさせる。合駒趣向に開拓の余地がありますね(。)単に盤面の駒だけを操作していく趣向は出つくした感がありますが。
森田 しかし盤面操作だけのをやるとすれば今までのをいくつか組み合せるとか。
黒川 そう、例えば3手ずつくり返えすのを6手にするとか、同じ運動するんでも5回のところを7回、8回にするよう工夫すれば面白いですね。
駒場 趣向と言えるかどうかわからないが81格めぐりをやってみたいですね。全格が可能であるか、80格なら出来るか、それもだめなら70格ならどうかと。
有田 それは一度通った処では二度と行けないとするわけですか。
駒場 それは不可能でしょう。
黒川 不可能ですね。
駒場 とにかく全格回れるか否か、たぶん不可能の公算が大きいですが、それなら何格なら可能か。ひとつには自分の力量をためす意味もあるんです。まだ頭脳の衰えないうちにヒマがあればやってみようかと(笑)田中鵬看のように絶対出来ないみたいに断言してもしょうがないから(笑)
 創作の限界に挑むということですか。田中鵬看さんも今年はすごいのを発表すると言って来ているんで期待しているのですが。

新人若島君に期待
 今日お集まりになっている方々をみても分かるように、最近はこれと思うような、大型の新人は少ないと思う(の)ですがどうですか。
黒川 世の中がだんだん変って来てますから、他に楽しみが沢山あるし。
七条 しかし、最近では、京都の若島正っていう15歳くらいの子が有望じゃないかな。
門脇 そう、仲々いいものを持ってますね(。)将来詰棋界をしょって立つ一人になるかも知れない。これはほめ過ぎかな(笑)

古今のベストワン
森 最後に自分の気に入った作というか、古今のベストワンを選んで下さい。
有田 私は図巧第一番。
黒川 私もそれが一番だと思いますね。長手数の方では新扇詰。
門脇 看寿の遠角を二枚打つやつで、図巧第八番ですか、あれがいいですね。
金田 どれって特定の作品はないですが、塚田九段の作品などですね。
七条 古いのはよくわからないですが、新しいので頭に残っているのは森さんの歩の五回連続中合(笑)
 どうも(笑)こういうおだてに十数年血まよって詰将棋から足を洗えないわけです(笑)
駒場 ベストワンはやはり新扇詰でしょう(。)あれしか考えられないですね。
 と言うことは今度の九百何手が完成すればそれがナンバーワンということですね。(大笑)
(座談会の際、七条氏に大変お世話になりました。誌上をかりてお礼申上げます。)


七條氏が本格的に創作を行う前の記事であることが分かります。
この記事が掲載されたのは第30期塚田賞が発表された号で、話題に上っていた若島氏が受賞されています。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

hirotsumeshogi

Author:hirotsumeshogi
少ない知識をフル活用させています。
当ブログはリンクフリーです。
相互リンクは詰将棋関係のものであれば原則受けさせて頂きます。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR