第30期塚田賞発表(近代将棋昭和43年3月号)

第30期塚田賞決定の模様を載せたいと思います。
期待の新人、若島氏(中篇)が受賞

受賞作家
短篇賞 近藤 孝
中篇賞 若島 正
長篇賞 山田修司


選後評 九段 塚田正夫
★短篇有力候補作(16手以内)
7月号 谷口 均 8月号 坪井作道
9月号 山中龍雄 近藤 孝 破天荒
11月号 近藤 孝 北川邦男
12月号 近藤 孝 駒形駒之介 有田辰次
今期は仲々つぶぞろいで選考に大いに迷ったが、最終候補作として、谷口、近藤(11月号)(、)北川、駒形の四作が残った。
谷口作。ナラズ作品として巧妙に出来ており入賞級の作品と思う。
北川作。短篇として仲々こったねらいの作品と、むしろ中篇の素材といえるだろう。短篇らしさ、いわゆる短篇の味という解釈からいくとやや損をしている。いい作品ではあるが。
駒形作。軽妙な味わいで、金の動きがすてがたい。誤答者が大量に出たそうだが、これは殊勲賞といえる。
近藤作。ねらいの2三飛から2二飛成が実にすばらしく、これが短篇であるという好見本。今期の近藤氏の活躍は目をみはるものがあり、他の二作(9月・12月)共有力な作品で、いずれが入賞してもはずかしくない出来である。
他では坪井作が印象に残った。
今期は近来にない充実した作品が集中し、大変嬉こばしいことであった。
★中篇有力候補作(16~36手)
8月号 山田修司 柴田昭彦
9月号 柏川悦夫 有田辰次
11月号 若島 正 北原義治
12月号 北原義治
最有力候補として、山田、柴田、若島の三作を選んだ。
山田作。初手と終手の関連をむりなく構成した点流石である。手順の自然性ということは詰将棋の一つの資質である。
柴田作。山田作とは対象的で盛沢山のねらいでコッた作品だが、ややくどいところありで、解後感が分散された感じである。
若島作。実戦形からかような巧い手順が実現したことにまず敬意を表したい。小々アッサリしている処もあるが、これ以上手を入れることは考えない方がよい。
今後の活躍をみまもりたい。
他では北原作もあるが、手順に小々シツコイ処が見うけられる。
★長篇有力候補作(36手以上)
7月号 山田修司
10月号 山中龍雄(訂正図)
今期ははなはだ不作。わずかに右の二作のみでさびしい限りであった。
山田作。狭い範囲でこれだけの内容をすっきり構成されたあたり作者の力量が感じられる。
山中作。3三角成など見るべき手もあるが主題の散満な所がこの作のマイナスである。

<受賞感想> 近藤孝
前期大漁を逃がしたので、今期また、11月号北川君の強力なのがあり、駄目かなと、半ばあきらめていたところ、受賞の報に接し驚いています。
さて本作、型は簡潔だし、23飛をすぐ22飛成とする手が意外に新鮮味があると思う。
この図は最初31飛 同金の二手はなかったもので、後からつけ加えましたが、或いはこれが幸いしたのかもしれません。僕としては12月-4-の方に自信があったのですが……何はさて苦手の短篇なので自信がつきました。こいつは春から・・というところです。最近は何んとかのヒマなしで創作の時間が余りとれず、中、長篇が作れなくて残念といった状態です。
受賞作(短篇)

昭10・7・16生、受賞四度目

<受賞感想> 若島正
突然の受賞の報、正に感激に耐えません。特に、近将には余り投稿していないので、驚きの一語です。(とは言っても多少の期待は有りましたが)私は柴田氏作が受賞と思っていたのですが、全く棋運はヒョンな所から訪れるもの哉!という感がひとしおです。
★受賞作に関して
原図はもっと複雑だったのですが、愚考の結果、極端に圧縮しました。元々パラへ投稿していたのですが、長谷繁蔵氏の勧めで近将へ廻送した……それがすぐ次の月に掲載されたのです。私自身としては”快心作”ならぬ”完成作”と思っていますが如何?
私の作図法はモンタージュ逆算ですが、本作はかなり前の柏川悦夫氏作(確か12龍・13桂合の筋だったと記憶)にヒントを得て、”飛生に依る23歩消去”と云うテーマを抽出し、以下正算で収束を求めた図です。しかし欠点――角の成場所――も有りますが、上出来と思っています。
★将来の希望
後3年は、半予備校的な中、高校に在学している関係上、沈黙を守ることになるでしょうが、当分の目標は煙3局・順列七種合の計4局の完成に有り、他は眼中に無しと云う所です。「塚田賞は何度貰っても良いですネ。」なんて云う某実力作家の言葉を、二十年先にはきっと……これが私の夢。
★近将に望む
山田修司先生の”名局リバイバル”は名稿で、いつも真先に読んでいや並べています。詰棋欄に望む事は”自画自賛”欄の復活、解答成績の立体化、特別賞の設置(誤解率50%の作に”賞”を興える等)など色々有りますが、兎に角”着色頁族”の心をガッチリと把握するページにして下さい。
★十代作家に望む
○他作のマネをしないで自分の頭で設定した作意を徹底的に表現する事。
○余詰・不詰を恐れない事。
○”掲載”作品は全部自力で詰ます事。
○”短篇”だからといって簡単に作れる物ではない。手数を甘く見るな。
○配置の簡素化に心掛け、詰めようと云う気を起させる図にする事。
○集中的に作る事。
○他の時間とのけじめをつける事。
以上、私の創作に当たっての要点を記しました。十代作家の発憤の材料となれば、これにこした事は有りません。お互いに研磨し合えば好作は自ら生まれると確信します。
――私の前に道はない。私の後に道ができる――          (高村光太郎)
受賞作(中篇)

昭27・8・10生 15才
初入41・4詰パラ 元詰パラ大学担当者

<受賞感想> 山田修司
この一年、仕事が現場の方に変ったので、何かと雑用が多く、落着いて創作にひたる気分になれず、作品発表の方は大分お留守になっています。
受賞は全然予期していませんでしたが、思うに今期は長篇不作の年で、私にとって運が良かったのでしょう。
自分では完璧なつもりの自信作が入賞しないこともありますから、期待はずれの受賞があっても然るべきで、これで五分五分――は冗談ですが、何度頂だいしても良い気分にかわりはありません。
さて本作、ご覧のようにごく軽い長篇で、別に新しい構想でもありませんが、伏線、軽趣向、遠打、還元玉、ミニ煙等のモロモロを縦三筋の枠内にキチンと盛込むのが狙いでした。結局、9九とが残ってしまいその意味で快心作にはなりませんでしたが、まずまずの出来と思っています。解説の際もその点を指摘されましたが、詰上り三枚にするのは中盤の桂跳の部分を少し変えれば出来るのですが、それでは狙いの一つの趣向性が乏しくなるので発表図で妥協したわけです。
長篇では百手になんなんとする重量級のものがもてはやされる傾向にあり、私も昔はそういった作品を作ったものですが、いたずらに長手数、難解作のみが尊ときに非ず、垢抜けした構想で、洒落たセンスの軽量長篇が近代詰将棋も一つの分野としてもっと採上げられて良いと思います。
もちろん、この作がそうだという意味ではなく、一般論として――。

受賞作(長篇)

やまだしゅうじ
昭和7年1月11日生 塚田賞八度目
現在「名局リバイバル」執筆中
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中学生で元・大学担当?

忘れた頃になってのコメントで恐縮ですが、誰もツッコミを入れていないようなので。更に、『詰将棋メモ』で『盤上のファンタジア』にスポットライトが当たっている(アクセス数が8/24=1位、8/25=4位だった由)機に乗じる、つまり「若島ブームに乗り遅れるな」という意味合いもあり――

中篇賞・若島正氏(当時15才・中学生)のプロフィールにある「元詰パラ大学担当者」は流石に誤りでしょう。
長篇賞・山田修司氏(昭38年1月から3年間担当)に関する記事が紛れ込んだものと推測します。
一応念の為、若島正『盤上のパラダイス』(三一書房、1988)でウラを取ってみました。これは、詰パラを取り巻く人物群像を描き出した本ですが、話の導入として、若島少年がその世界に引き込まれていく過程も紹介されています。
さて、同書にはなぜか「担当者」という章はないのですが、若島氏自身が担当を務めた、という記述はありません。また、詰パラ編集部を初めて訪問し主幹に会ったのは、昭42.7.23のこと(40頁)と書かれています。近将の翌年3月号の記事までの間に、担当就任⇒離任という転変を辿るのは事実上不可能と思われます。

中学生で元・大学担当!

パラ大学の1967.7-11の担当者は「十字軍」で、十字太郎・十字次郎・十字三郎の三人による担当でした。若島氏のペンネームは「十字次郎」なので、「元詰パラ大学担当者」は間違っていないと思います。

若島さん凄すぎます

おかもと様、御批正ありがとうございます。
本当に驚きました。なにしろ「可能性を完全につぶせた!」と思っておりましたので。「ありえないことはないが、ありそうにない経歴」とは、まるで「構想派の詰将棋の手順」みたいな人生、と感じ入った次第です。
また、自身が担当を務めたことについて「盤パラ」で触れていないのは何故?(続編で書く予定だった?)と思案してしまいました。
ところで、hiroさんやおかもとさんは当然既にお持ちでしょうが、『盤上のパラダイス』は現在でも購入可能(たぶん\1,200)です。皆さん、Problem Paradiseのホームページの「Paradise Books既刊リスト」(2013/10/19)というページで在庫の有無と代金・振込先を確認して、郵便振替で注文しましょう。「若島正」のネーム入り封筒に入って配達されるはずです。アカシヤ書店などに多額の献金をするのも「詰将棋周辺産業振興活動」だとは思いますが。
以上、「手元在庫が捌けたら(「担当者」の章を含む)続編を執筆してくれるかも」という下心からのコマーシャルでした。

遅くなりましたが

おかもとさん、私の力では分からない質問に、お答え下さりありがとうございます。

担当について書かれなかった理由は、当然ながら分かりませんが…。
出版後に詰将棋サロンの担当をされていますので、少なくともそちらについては書けそうですね。

続編準備説

若島氏は『盤パラ』執筆時にはもう「詰パラ担当時代の回想」を書く気はなかった、という見方も有力ですが、私はまだ諦めきれず、「続編を準備していた」という立場です。
以下、憶測の範疇を出ないものではありますが、論拠を3点。
(1)塚田賞受賞時コメントの「半予備校的な(・・・)沈黙を守ることになる」という個所には、葛藤の存在を滲ませています。しかし、プロフィールに「元詰パラ大学担当者」を含めていることは、この経験を(少なくとも15歳当時は)肯定的に捉えていたことの証左であるように見えるのですが。
(2)私の手元にある近将1986.3では、若島氏のプロフィールの一つとして「将棋観戦記者」が挙げられています。『盤パラ』執筆当時の氏も、将棋関連の文筆によりもう一つのアイデンティティを確立しようとされていたのではないでしょうか。なので、常に「これで書き尽くしておしまい」ではなく、「次の矢」を考えながら執筆活動に携わっていたのでは、と愚考するのです。
(3)やはり、「中学生で担当者」という題材は興味をそそるものです。3人共同でやっていた、というのも、(半期5ヶ月と短期間ではあるが)うまくすれば「一冊を支えるのに十分な量の話柄の供給源」となるのでは、と期待させてくれますし。
漫筆御免。

谷川さん

「盤上のパラダイス」、もう購入できないと思っている方もいるかもしれませんね。
私が購入したのは、何年前でしたか…。
機運が熟すれば続編の夢も?
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hirotsumeshogi

Author:hirotsumeshogi
少ない知識をフル活用させています。
当ブログはリンクフリーです。
相互リンクは詰将棋関係のものであれば原則受けさせて頂きます。

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