第28期塚田賞発表(近代将棋昭和42年2月号)

前回の記事の最後に書きましたように、第28期塚田賞決定の模様を載せたいと思います。
注目の第二十八期塚田賞は塚田九段と編集部との間で選考をかさねた結果、左記の通り決定。今期も短篇作がやや不作で、九段を大いに悩ませた。受賞作家は皆数度の受賞というベテランでしめられた。

受賞作家
短篇賞 植田尚宏(11月号15手詰)
中篇賞 北川邦男(7月号21手詰)
中篇賞 桑原辰雄(9月号31手詰)
長篇賞 北原義治(12月号81手詰)


選後評 九段塚田正夫
<短篇>有力候補作(15手以内)
8月号 柏川悦夫 10月号 有田辰次
11月号 服部秋生 植田尚宏
12月号 細田強 小林正美
今期は後半発表された、植田、細田、小林三君のが優れていた。
細田作はムダなくきれいに仕上っている点好印象を与えているが、今一歩という感じである。
小林作は細田作と対称的で、形、手順の手強いところが魅力である。
右二作に較べると植田作は22金寄など手順に味があり、作者のものとしてはめずらしく引しまった感じがみられる。
結局植田作に決めたが、差は紙一重である(。)
<中篇>(17~35手)
7月号 有田辰次 北川邦男
8月号 棋村迷人
9月号 有田辰次 桑原辰雄
10月号 北原義治
北川作と桑原作。全く正反対な感じの作品である。それぞれすて難い味があって伯仲している。
北川作は2度にわたる52飛打。合駒の奇抜さなど少ない駒数でよく処理したものだ。
一方桑原作も形よし。手順これまた23龍から意表外の詰上りなど、玄人好みの構成ぶりである。頭のいたくなる程迷ったが結論がでず、両作受賞という編集部の助け舟が出て、それがよかろうということになった。
他では棋村作がすっきりしていて好感が持てた。
<長篇>(37手以上)
10月号 柏川悦夫
11月号 有田辰次
12月号 森 敏宏 北原義治
四作共違った味があり、それぞれ良く出来ている。点数をつけるなら全部10点満点非のうちどころがない作品ばかりだ。
四作入賞というわけにはいかないのでこれまた大いに迷ったが、中で一番苦心していると思う北原作に最高努力賞という意味で決定した。
この作は作者の「根」をつめたあとが如実に現われている。
他の三作もそれぞれに努力の跡がある。A級の作家が乙甲つけ難い作品をならべられると選考する方もはり合いが出るものだ。
今期の長篇は近来にない充実した作品ばかりであった。

短篇賞 植田尚宏
正直のところ本作が入賞するとは思ってもみなかっただけに驚きです。
本誌十月号の「自画自賛」で短篇賞一回もなしと書いた矢先のことなので何かくすぐったい感じがします。
本作、別にこれといった妙手はありませんが、一個一個の配置にムダがなく、すっきり出来上った点を買ってくれたものと思います。ヘタな鉄砲がようやく当った感じで、ひとりエツに入っているところです。
今後も小生流にどしどし打っていく心算です。どうも有難うございました。
うえだなおひろ
昭和8年1月30日生、塚田賞2回
住所省略 作品集「流玉」


中篇賞 北川邦男
本作、投稿時にはある程度の自信はあったのですが、その後発表された諸作を拝見しているうちに、そんな自信もケシ飛んでしまい賞の方はほぼあきらめていました。それに詰将棋に割き得る時間も最近では少くなり、それと共に詰将棋への情熱も冷めかけていました。そんな折も折塚田賞!の知らせです。どんなにうれしかったことか、とても言葉では言い尽くせません。よし、もう一花咲かせてやろうという意欲も湧いてきました。とにかくこれからも努力を怠らずに、非才に鞭打って面白い作を創っていこうと思っています。
本局発表後、山田修司氏、鳥越九郎氏から錯解に入った場合26銀が残る(働かない)から、もう少し序をつけて26銀に二重の意味を持たせた方が良いとか、初手から四手目までをチョン切った図(山田氏へ最初お見せした図、四手は後で思いついてつけたもの)の方が良いとか、いろいろ言われました。お二人の意見も尤もだとは思いますが、しかし私は今でもこの発表図の方がやはり勝っていると考えています。難解性ということは初めからこの作品には要求しなかったことですし、又52飛打というくり返しも、プラスの面で出てきたと思うからです。ところで本局のように有名手筋で詰むように見せかけて、実は意外な手順で詰むという作品は、もっと作られてよいのではないでしょうか。最近の柏川悦夫氏の作品に二局ほどありましたが、流石という感を深くしました。
きたがわくにお
昭和15年6月14日生
省略 詰棋歴約10年 棋力初段位 発表作数80位
塚田賞三回目


中篇賞 桑原辰雄
昭和三十年に短篇塚田賞を受けて以来十三年ぶりです。ご覧の通りの作で期待してなかったのですが、型の良さと4三飛成から2三龍迄の飛の動き等が選考の対象になったものと推察します。中篇作は中だるみを生じ易く本作の2三歩から一連の駒交換はややもすると安易に流れた平凡手の様ですが逆に言えば中篇故に救われ手順の流れに自然に溶けた様です。最近郷土群馬の先輩金田秀信氏等の作品を見るにつけ寿命の長さ或いは共通した趣味の根強さそんな想いをひしひしと感じます(。)
今後何年位新作詰将棋を創れるかわかりませんがコクのある作品のみを投稿する積りです。なお現在近将の入選回数が四十二、三回ですから百回迄には程遠く果して現在のペースで達成出来得るかどうかも疑問ですがと言ってただ入選かせぎの作品を送る気にもなれずこの辺各自創作の心構えの相違でしょうが結局マイペースで詰将棋だけは気長に息を続けたいと思います。
くわばらたつお
昭和8年2月13日生
省略 塚田賞2回目


長篇賞 北原義治
久しぶりの長篇賞、聞くところによると同じくらいの中で苦心したらしい点を買われたとかなのがちょっと不本意ですけれど、多事多端な年になりそうな今年の初めだけに、こいつは春から……と、何度頂いても万更悪くない気分です。
発想から約十年、収束が作れずに散々苦労し、長らく「未完成詰将棋」としてお蔵にしてありました。そのため、前半に比較して後半は全然不満ですが、まあこの辺で妥協することにします。当時検討して下さった津野山呆烏氏に大分骨を折らせた労作です。
内容は、長篇作の傾向に一つの反逆心を抱いた流れを狙った、若い頃の作風なんかを想い出させてくれます。とにかく、不肖でも可愛い子に違いありません。
きたはらよしはる
昭和10年5月11日生
省略
塚田賞8回目
作品集「独楽のうた」



北川氏は40歳の若さでこの世を去ったのが惜しまれます。
桑原氏はこの後十数年の時を経て入選100回を達成されました。
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