田中鵬看氏作「ひとり旅」

田中鵬看(輝和)氏といえば、1960(昭和35)年に煙詰4作を一局に発表するという鮮烈なデビューを果たし、その後も煙詰をはじめ長編分野で主に活躍した作家です。
そんな氏の作品を1作、紹介したいと思います。
近代将棋1968年6月号、「創刊十八周年記念 珍品詰将棋解答発表」。
第31期塚田賞特技賞を受賞した「恋路」(4月号発表)の結果発表です。
「本局は鬼才田中鵬看氏が久々に沈黙を破って発表されたもの。実はこの作の数日前に、「全駒使用無防備玉」第一作として、
毎日新聞岡山版、中国新聞(広島)、産経新聞、週刊文春、はてはテレビの「11PM」などにも作者自から登場している。(図面省略)これはその「全駒無防備玉」第二作目で本紙に初めて発表された」
(図面省略)とあるように、第一作は掲載されていません。

私は全く見たことがありません。
寄せられたコメントによると、詰将棋データベースでは検出されないようです。
全駒使用無防備玉第一作という作品にも関わらず、広くは知られていない。
それでは…と、調査に乗り出すことにしました。
ちなみに無防備とは、玉以外の駒が全て詰(攻)方の駒である作品のことですね。

調査は、掲載先として名前が挙がっている順番に、当たるという手法を取ることとしました。

まずは毎日新聞岡山版ですが、1968年の岡山版は図書館に所蔵されていないようでした。

続いて、中国新聞を当たったところ、2月12日付に「幻の詰め将棋を完成」との見出しがある記事を発見しました。
図面と解、田中氏の写真もあります。
田中輝和さんと紹介されていますが、棋名は「鵬看」であると紹介されており、田中鵬看名義と判断しました。
それでは、ご覧下さい。

田中鵬看氏作「ひとり旅」(毎日新聞ほか 昭和43年2月)
田中氏作「ひとり旅」

詰手順
1八と 同玉 1七と 1九玉 1八と 同玉 2五香 1九玉 1八飛 同玉
6九馬 1九玉 1八飛 同玉 1七馬 同玉 2七金 同玉 3八銀 1八玉
2九金 1七玉 1六と 同玉 2六と 同玉 3七金 1五玉 1四と 同玉
2四と 1五玉 1四と 同玉 2三香成 1五玉 A2五馬 同玉 3六と 1四玉
2四成香 同玉 3五と寄 1三玉 2三銀成 同玉 3三歩成 1三玉 2三と 同玉
3四銀成 2二玉 3二桂成 同玉 4三銀成 2二玉 3三成銀寄 3一玉 4一桂成 同玉
5二と 同玉 5三歩成 6一玉 7一香成 同玉 8一香成 同玉 7三桂 9二玉
8二歩成 9三玉 8三と 9四玉 8四と 9五玉 8五と 9六玉 8六と 9七玉
8八金 8六玉 8七金 8五玉(7五玉) 8六金 7四玉 B7五金 同玉 6六と 7四玉
6五と行 7三玉 6四と 7二玉 6三と行 7一玉 6二とまで97手詰

A2六金、同玉、3七銀、1七玉、2八金、1六玉以下作意に戻るキズあり。
B8五金、7三玉、7四金、同玉も可。



題名の由来は、「ある事から地平の果てにただ一人たたずんでいるような寂しい心境に置かれた。それにヒントを得て(中略)私の心情をつづった叙情作品です」とのことです。

先程の「恋路」結果発表を、もう少し読んでみますと…。
「手順は安易ですが、自陣成駒(小駒の)もなく、銀桂香の成駒もなく駒配置は美しいと思います。玉の逃げの別れや、どちらのと金などを行ってもよい様な所もなく、詰上りも一手に限定されている点、苦心しました」
「恋路」を「ひとり旅」と比較して、ということですね。

図面と解を発見したので、これで調査完了…でも良かったのですが、もう少し調べてみることにしました。

産経新聞を当たると、大阪版2月11日付「灰ざら」で紹介、図面と顔写真が掲載されていました。
そして、大阪版2月17日付夕刊に、「へんくつ男の執念作」という見出しの記事があり、こちらでは図面と解、写真が掲載されていました。
中国新聞と発表日が異なりますね。これまで、新聞は同日発表だろうと考えていたのですが、そうとも限らないということが分かりました。

さらに、週刊文春3月11日号には、「今週の話題」の中で「三十八枚の駒で王将を詰める」という題名の記事がありました。図面と解が掲載されています。

毎日新聞岡山版に当たることができなかったのは残念でしたが、これにて調査完了としたいと思います。

後に全駒無防備玉煙詰が発表されるようになり、現在の目で見るとその価値は…という感がありますが、時代背景などを考えれば、紹介する意味はあると思います。



あまり知られていない作品なのでは、という理由で調べた訳ですが、「知っている」という方が次々と現れる気がしています。
言わないだけで、実際は膨大な知識を持つ方が多い世界だと思いますので…。

なお、本記事の作成に当たってはTETSU氏と借り猫氏にご協力いただきました。御礼申し上げます。
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