自画自賛 駒場和男氏(近代将棋昭和41年11月号)

1日置いての更新です。
詰将棋作家の自慢の一局を紹介する昭和41年の近代将棋誌連載「自画自賛」、本日の更新分は駒場和男氏のものです。


駒場和男

(詰パラ誌)


森敏宏氏から自画自賛を書いて呉れと言われて一寸困った。二三ヶ月なら煙詰を二局発表するのでそれなら自賛し得ると思っていたからである。既発表作では失われた恋の如く味気なく今更情熱を燃やす術もないのである。それでも何かあるだろうと言われては何をか言わんやである。そこで取り出したのが本局、十数年以前詰パラに掲載され過分の賞め言葉を頂戴した。臆面もなく当時の模様を少し録音してみよう。
岩切氏――全く悩まされたの一詰に尽きる。紛れ手順がこれまた夫々二重合駒で40手近くで逃れるには弱った。二歩打歩詰を誘う玉の逃れは鮮か。又数少ない守備駒の内93銀の存在は全く良く利いている。本能寺の信長蘭丸主従の大奮斗にもたとえられる一局であった。
大井美好氏(選者)――駒場氏とはそも何人であろう。選者は寡聞にして氏に関する知識を持合せてはいないがもし新人とすればこれはまた恐るべき新人である。雄大なスケールにいみじくも奏でた妙なる構想の調べはこれを解き得た者にしてよく味わい得る。鬼宗看の豪放難解にも比すべきこの傑作を不幸にして味倒せざりし諸君は、再度盤上に五彩の夢を追って戴きたい。
これだけ賞められれば充分今更自賛することもあるまい。ところで本局主題が図巧第一番によく似ている。共に因果関係を打歩詰に結びつけた点などである。図巧一番の欠点は変化紛れが少ない事なのだが本局はかなりの変化紛れがある。次に少し列記してみよう。
①62飛成 72歩 92馬 同玉 74角成 83金 同馬 同玉 84歩 同銀 72龍 同玉
②62飛成 72歩 73龍 同歩 83歩 91玉 92歩 81玉 63角成 72香 同馬 同玉 84桂打 63玉 64香 52玉 62香成 42玉 45飛 33玉
③62飛成 72歩 73龍 同歩 83歩 91玉 92歩 81玉 63角成 72香 91歩成 同玉 82歩成 同玉 92馬 同玉 84桂打 83玉 72馬 74玉 76香 75桂 同飛 64玉 56桂 53玉 73飛成 42玉
④62飛成 72歩 83歩 81玉 61龍 71香 同龍 同玉 61桂成 81玉 71成桂 同玉 51飛成 61歩
⑤83歩 91玉 92歩 81玉 63角成 同歩 91歩成 同玉 82歩成 同銀 同飛成 同玉 83歩(83銀は93玉) 92玉 93歩 同玉 75馬 83玉 84馬 82玉 83銀 81玉 82歩 71玉 61桂成 同玉 72銀成 同玉 52飛成 71玉 以下略
83歩に81玉なら作意の他に⑤の紛れ手順で詰む。此処が重要な処。作意をカムフラージユするにはかかる間一髪の紛れが必要なのである。序奏を加えなかったのは惜しい気もするがこれは邪心のなせる業か、当時恋愛中(当方だけ)であった事を附記しとこう。
 私にともった 一つの灯
 消えないで どんな風にも
 その灯と共に 幸せも苦しみも
 これから続く 長い道を
 まっすぐ行こう
 たった一つの 私の灯
遠い少年の日私は恋をした。恋と詰将棋と詰将棋と恋と、その追憶が、ごっちゃになって時々想いだされる。詰将棋は私の恋の履歴書なのである。ホント。

昭和9年5月19日生
塚田賞(一回)


文中にあった「二三ヶ月なら煙詰を二局発表する」というのは、詰将棋パラダイス昭和42年1月号で発表された「朝霧」「夕霧」を指すものと思われます。
この時点で既に名が知られていた作者でしたが、以後数々の名作を発表されました。
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