自画自賛 田中輝和氏(近代将棋昭和41年8月号)

詰将棋作家の自慢の一局を紹介する昭和41年の近代将棋誌連載「自画自賛」、本日の更新分は田中輝和氏のものです。


田中輝和

(本誌 35.5)
煙詰「アトラス」


突然、自画自賛を一丁書けとの報を受けた時は、正直いって面喰った。なぜなら発表数二十数局(半数は煙詰)の横着作家?の私だからである。”光陰矢の如し”とはよくいったもの。私が本誌に初登場してから丸六年になる。
数少ない作品からこれぞと思うヤツとなると、やはり煙詰をおいてない。今でこそ変なニセ物みたいな作品まで飛び出し、煙詰なんかいくらでも作れるとうそぶく人物まで現れる始末(本当に新鮮なる煙詰を創作してチョウダイネ)だが私ご自慢のアトラスが生れた頃は、煙詰もまだ十局に満たず、御面相、性格、各自個性があってながめるさえ楽しかった。ではビデオテープで六年以前にさかのぼろう。
三十五年五月号、本誌に煙詰四局でデビュー。超人誕生とか、大天才出現とか、さわがれたものだが、中の一局が本作。アトラス命名は、当時本誌に在籍中の駒形氏につけてもらったもの。
本局の主題はズバリいって還元玉のねらいにあり、創作の日数は約一ヶ月、はじめ三十八枚でストップしてしまい、どうしてもあと一枚消化できず(還元玉にするため)思いきって収束の部分を大幅に変えるという荒療治の末、完成した苦心の作。
長篇物における還元玉作品はかなりの価値があるものと確信(独断かな?)しているがこと煙で成功したところは大いに買ってもらいたい。実をいうと私は十局目の「人生」をと思ったが、双玉なので遠慮した。(これも還元玉)オッと横道へそれずに、もっとアトラスをほめたり、ほめたり……
さて、手順自体は自作煙中でもやさしい方の筆頭に属し、別に強烈なる好手、妙手もない。しかし、二十五手目の8九香は、気付かぬたぐいの遠打ではないが、煙だけに巧手といえよう。一段でも上に打っては収束で不詰になるし、さりとて中合は早詰を生じる。塚田九段からも光る一手とほめてもらったものである。
この自慢の作にも気に入らない点はある。成桂、成香の多いことが駒配置の美をそこねているからである。
解答者の中には昭和詰将棋の最高傑作、ダイヤモンド(煙詰)の相場が下がる恐れさえ起きた、などの評もあり、本当に煙詰の大量生産時代が到来したが、喜ぶべき現象か、悲しむべき現象か、その責任の一端をになった本作に、私は限りない愛情を持っている。

昭和5年7月4日生、職業 製パン工職人
棋力、アマ三段位、
塚田賞三回 看寿賞一回
住所は省略


田中輝和(鵬看)氏は文章にあるように、数々の煙詰を作られました。
「アトラス」は第15期塚田賞長篇賞を受賞しています。
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