自画自賛 湯村光造氏(近代将棋昭和41年5月号)

詰将棋作家の自慢の一局を紹介する昭和41年の近代将棋誌連載「自画自賛」、本日の更新分は湯村光造氏のものです。

湯村光造
看寿賞(一回) 塚田賞(一回) 国鉄職員

(本誌 25・11)


自画自賛に十六年も前の旧作をひっぱり出すのは、おはずかしいことですが、読者層も相当変わっているでしょうし、小生の短篇の代表作として、この図をみて戴くことにしました。常識にあき足りないわれわれ詰棋人は、「裏がえし」の面白さを求め続けますが、本作は、「裏がえしのまた裏がえし」を主題としたものです。一見、古来の有名手筋である16龍が目につきますが、これは17金の中合いでのがれとなります。そこで37角の凡手で始まるわけで、以下、特に妙手といえる手もありません。従って、16龍のまぎれを考えずに37角から解かれた方には、何の面白味もないのですが、少しでも詰棋の手筋を知っている方は、「裏がえしの裏がえし」の妙味を感ぜられることと思います。
形と詰上りの良さは短篇の必須条件です。近頃、形にとらわれず内容を、という意見がありますが、栄養があれば、味も香りも悪くとも良いというようなものです。「最小の形式に最大の内容を盛りこむ」ことが、あらゆる芸術作品に共通の命題であるそうですが、これは何も詩や絵画に限らず、機械の作品だってそうです。蒸気機関車より新幹線電車の方がスッキリした良い形をしています。

この作をもう一回裏がえした姉妹作がありますので、蛇足ながら末尾につけました。どこがもう一回裏がえしかは、解いてご覧下さい。ついでに、「入玉実戦型」(実戦じゃこんな形になりっこないが)であることと、詰上りも姉妹作であることに気がついて下さるとうれしいんだがなあ。

(本誌 26・6)



私にとっては打歩詰研究のイメージが強い湯村氏の「自画自賛」でした。
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中合もどき

桃燈氏の「詰将棋:中合、捨合、変則合」(『日記的空間』2017/08/20)を読んで、参照されている『書きかけのブログ』2015/09/12を読返したら、問題とされている中合(に類似の合駒)が紛れに登場する作品として、この湯村作を思い出しました。
私の記憶に引っかかっていたのは、川崎弘「合駒の理論と実際」(詰棋界1954.8)。『北斗』p.129-130から引用します―

 もともと、合駒は取られる覚悟であるが、中合いはそれ以上、玉方の利きのないところへするもの。
(中略:里見義周「捨駒分類表」に基づき中合の目的をA~Kの11通りに分類)
(J)取駒を取るのが目的
 (前略)一般に取る駒は玉であるが、ときに飛び駒によることもある。図(注:本作のこと)で16龍と行くと、17金の中合いで見事にハマる。これは、中合いとは多少違うのだが(取り駒を取り返せるから)形の上から一応仲間入りさせておく。非常におもしろく見落としやすい合駒である。

―引用図には「湯村光造氏作」としか書かれていないので、今回T-Baseで検索したら「自画自賛」のエントリーが見つかったので、この合駒を湯村氏がどう呼ばれているか確かめるべく、本記事を(たぶん)再読した次第です。
(続く)

(続き:看寿賞受賞作)

問題の合駒について、川崎氏は「厳密には中合ではない」、湯村氏は「中合である」というスタンスのように見えます。
ところで、川崎論考では本作は例題としての登場でしたので、私は「大したことのない作品だろう」と思い込んでいたのですが、T-Baseによれば(旧パラ)看寿賞の「短篇賞次選」に輝いています。本記事冒頭の「看寿賞(一回)」とは本作のことですね。そういえば、この合駒類型について『書きかけのブログ』コメント欄に、
 ss「(…)これは面白いことができるので未開拓の分野が残っている気がします。」
とあり、今日の視点でも未開拓性があるのですから、65年前にはかなり斬新な構想だったとしても不思議はなさそうです。
ついでに、この類型で最近印象に残った作品として、谷口均・17手・パラ2017.4ヤン詰 があります。その10手目34飛合について、夏風(須藤)・中出・福原の各氏が「中合」という用語を使われています。特に、中出氏が「中合捨駒」と書かれているのは面白く感じました。(でも、なぜ谷口氏はこの作品をヤン詰に投稿されたのでしょう?)
それにしても、こういう調査で利用できるのですから「『詰将棋の欠片』畏るべし」ですね。

谷川さん

これまた、懐かしい記事ですね。
恐らく、看寿賞というのは書かれているように、短篇賞次選を指すものと思われます。

思わぬ所で資料の繋がりが出てくるというのは、面白いものです。
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