続・詰将棋の能率的勉強法(完)(近代将棋昭和46年5月号)②

村山隆治氏の連載「続・詰将棋の能率的勉強法」、最終回の後半部分です。
本編としては、最後の部分になります。
(第5図)
続最終回第5図

第5図。『週刊文春』昭和40・1・11号・二上八段の作品です。
2一馬と切り、3二から打ち込んでいくより方法がありませんネ。でも守備の2三銀がよく効いていますので、まづこの効きをソッポに向ける2四桂が先着になります。こうしておけば、つぎに2一馬と金を入手し、同玉に3一金と味のある一手を決めることができます。これは2一角より3二角成の活用を考えた深謀で、こんな点にも実戦ではよく考えて読み切ってほしいものです。3一金、1二玉で途中図です。

(途中図は1二玉まで)
続最終回第5図途中図

これからは、角を打って角を成り、2三金と例の穴ふさぎをしておいて、一本道だったはずです。
第5図。2四桂・同銀・2一馬・同玉・3一金・1二玉・2一角・2三玉・3二角成・1二玉・2三金・同歩・2一馬まで、13手詰。



手数は長いですが、やさしい問題であったと思います。難しさと手数は、必ずしも一致しないことがあります。

(第6図)
続最終回第6図

第6図。内藤国雄八段著『詰将棋二百題』の中の作品です。
この形でもし玉方の3五銀がなければ、どんな詰め手があるでしょう。あわてて1二銀成・同玉・3四角・1一玉で打歩詰とカン違いした読者は落第生、この先2三桂不成・1二玉・2四桂までで詰みます。これ以外に1二銀成・同玉・2四桂・1一玉・2三桂不成までの手がスッと読めれば、いうことなしです。
さて現在の形は、この早詰めを回避して3五銀が置いてありますので、別の順で詰むことになります。頭の丸い駒ばかりでは2二銀成も異筋、ここは2一とと桂を取って玉を穴より誘いだすのが平凡で好い手です。ここで3二角と攻めますと3一玉と逃げられ、さらばと2二銀成と迫っても軽く4二玉と大海にでられてダメになります。3一玉でなく1一玉と元の穴にもぐりこむ逃げなら、2二銀成・同玉・2三桂成・3一玉・5三角・4二合・4三桂までキレイに詰んでしまいます。といって3一玉の逃げを避けるべく4三角と離して打ちますと、こんどは1一玉で失敗に終わります。参考図をよく見て下さい。

(参考図は1一玉まで)
続最終回第6図参考図

でもこの形で、もし2三銀がなかったら桂吊しで詰むことが判ります。すなわちこの形になれば、この銀はジャマ駒なのです。ジャマ駒は原型を崩すことなく消すことがコツでした。したがってここで2二銀成などという敵角をパクッてすてるなど、詰将棋の教科書にはない手です。
敵角を動かして、その空所に成りすてる方法が最も一般的な手法ですので、4三角と打つ前に3三桂と打診するのが得策なのです。この手に対して応手も別れます。まづ1一玉の逃げは、1二銀成・同玉・2一角(2三角などと打たないで下さいよ)・1一玉・2三桂不成まで。また3一玉の逃げは、5三角・4二合・4三桂まで、そこで3三同角と取る一手になります。この形にして4三角と打ちすえ、1一玉の逃げに2二銀成が実にうまい消し方です。(途中図)

(途中図は2二銀成まで)
続最終回第6図途中図

こんな巧手でも、すでにご常連の読者にはもはや常識な手段なはずです。2二同角と取って3四桂と迫った局面で、3三玉は逃げられない所に、先の3三桂捨ての効果がでてくるのです。玉方4一歩の配置は、収束の3四桂・3一玉・2三桂不成に4一玉と逃げられなくしてある駒でした。
第6図。2一と・同玉・3三桂・同角・4三角・1一玉・2二銀成・同玉・3四桂・3一玉・2三桂不成まで、11手詰。



ここで”ジャマ駒の消去法”を、もう一度復習しておいて下さい。
⑤ その他の型
いままで解説してきた型の、いづれにも属さない形のものです。

(第7図)
続最終回第7図

第7図。生まれながらの業苦を背負いつつ創作に精進している、小西逸生氏の作品集『青玉』の第2番です。
玉方の4四馬が、単騎で実によく奮斗しています。攻めの4三馬や3三桂、そして搦め手の2五飛寄りを、全部防いで少しのスキもないようです。
例えば、2五飛と寄れば、玉頭に馬が効いていますので、2二に合いをされて不詰。それならばと、3二とと寄れば同金・同飛成・同玉で、2二金がやはり打てずにこれまたダメです。どうしても守備馬を動かすよりありません。
このような形のときは、なんでもよいから馬を移動させる手を考えてみることです。そのきっかけが、4三馬と捨てる手です。3二に合いすれば、同と・同金・同馬まで駒が余ってしまいますので、4三同馬と取る一手で途中図になります。

(途中図は4三同馬まで)
続最終回第7図途中図

この形で、4三馬の効きが3三からソッポにいけば、3三桂という手が成立します。そしてそれを成功させる前提工作が、前に失敗した2五飛寄りとは、まことに皮肉な作品です。こんどは合い効かずの形ですので、同馬と取るよりなく、遂に大巾な馬移動に成功して、3三桂の詰上りです。
第7図。4三馬・同馬・2五飛・同馬・3三桂まで、5手詰。



わざわざ馬を2五の点に効かせてから、2五飛とする構成は流石であり、しかも本局はパーフェクト不動玉作品でした。

(第8図)
続最終回第8図

第8図。『将棋世界』昭和45年12月号・刈谷市・植田尚宏氏の作品です。同氏は無鑑査級の作家であり、とくに短編物にその神技を発揮しています。
この形を見て、まづ穴ふさぎをと感じた読者は、愈々免許皆伝の腕に達した証拠です。それは守りの焦点2三に桂を打ち捨てる手であり、玉方はこれに対し2三同飛はなく同角の一手になります。この形にしておいて攻めのコリ形を徐々にほごしていくのが、考えたり解いたりするコツです。1二銀成として、まづ銀をさばき捨てます。同角なら2一金・同角・同歩成・同玉・1二銀までになりますので、1二同玉は当然ですが、更に2一歩成とほごして龍筋を通します。これで途中1図になります。

(途中1図は2一歩成まで)
続最終回第8図途中1図

この局面では、どんな応手を考えても金打ちまでのように見えますが、ここで玉方に大道棋的な妙防があります。それは3二角引という移動合いによる、逃げ口作成と飛の効きを通す手です。これで虎口を脱したかに見えます。なぜなら2二金としても、同飛・同と・同玉・3三銀・1一玉でとどきません。
ところが詰方には、更にこれを上回る妙手が用意されているのです。角が動いた空点に2三銀と打ち込む、まさに強烈なK・Oパンチ、これぞ”玉の逃げ道に先着のすて駒”という詰棋忍法の一つなのです。途中2図をよく観察して下さい。

(途中2図は2三銀まで)
続最終回第8図途中2図

2三同玉を強要して、とどめともいうべき3三龍には、まさにオドロキの一手、詰将棋ならではの感が深い鬼手でした。これにて終焉になります。
第8図。2三桂・同角・1二銀成・同玉・2一歩成・3二角引2三銀・同玉・3三龍・同玉・3四金まで、11手詰。



なお、初手いきなり1二銀打は以下、同角・同銀成・同玉・2一角・2三玉で、つぎの3四金打が同香と取られますのでうまくいきません。
両軍の攻防が火を吹く、誠に詰後感のよい佳作品と思います。

まとめ
不動玉の形
初型で、どこにも動けない玉が存在する詰将棋の形で6種に分類できます。
① 十字飛車型
② X字角型
③ 飛角型
④ 自閉型
⑤ 打歩詰の型
⑥ その他の型
その解決法は、守備駒のある形で述べた、
㋑ “避ける”方法
㋺ “どける”方法
㋩ “取り払う”方法
の、3つのオマジナイで、”穴ふさぎ”と併用して解決します。
                                 ――不動玉の項おわり――

あとがき
“いつでも、どこでも、だれにでも”これが筆者の詰将棋哲学です。詰将棋のやさしい入門講座をと考えて、軽く書きはじめましたのが意外にながくなり、今回でやっと完結をみました。
詰将棋は手筋のカンズメです。よく熟読玩味して下されば、解法の習得と共に実戦の上達にも、必ずプラスになることと信じます。これに経験的な知識といわれるカンが加われば、まさに鬼に金棒となることでしょう。
読者の皆さん!末永くツメキストであって下さい。
                                              (完)


本編はこれにて完結となります。
なお、講座の次のページに「卒業試験懸賞問題」があり、こちらも掲載します。


卒業試験懸賞問題
詰芸百般免許皆伝を祝して、懸賞問題を提供します。新人ベテランを折りまぜての作品ですので、ふるって応募下さい。

―東京―A堤 計夫氏作
卒業試験懸賞問題A

―愛知―B中田章道氏作
卒業試験懸賞問題B

―埼玉―C柏川悦夫氏作
卒業試験懸賞問題C

―埼玉―D村山隆治氏作
卒業試験懸賞問題D

―大阪―E里見義周氏作
卒業試験懸賞問題E



次回、「卒業試験懸賞問題」の解答発表を掲載して締めとしたい、と思います。
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