続・詰将棋の能率的勉強法(完)(近代将棋昭和46年5月号)①

村山隆治氏の連載「続・詰将棋の能率的勉強法」、最終回の前半部分です。
不動玉の形(その2)とタイトルの下にあります。
詰芸百般免許皆伝
「好きこそ物の上手なれ」という格言とウラハラに、「下手の横好き」というのがあります。世間では、どうもこれを混同しているらしいのです。
好きな者は、ほっておいてもやらずんいはいられないのだから、勉強法などというものはいらないはずです。下手な者こそ勉強法が重大な関心事となってきます。そして最も能率のよい詰将棋の学習法が、本講座であったわけです。
さて、詰将棋を解く秘術の公開も、番かず取り進みまして、この一講にて千秋楽にござりまする。守備駒のある形からはじまった入門講座は、機会あるごとに”形と筋”について、あらゆる角度より申し述べてきました。
形と筋は、サイコロの目のごとく常に一体をなしているものであって、これに早く習熟することが、詰棋忍法を身につけるには必要であったわけです。
読者の皆さんは、すでに沢山の棋術を修得され、”形と筋”がいかに大切なものであるかが、よくわかったことと思います。かくして、ヨチヨチ・ルームから入園したツメキスト連中も、今や詰芸百般免許皆伝の腕前に達したはずです。あとは、この忍法を活用して、奇策縦横に解きまくるよりありません。
最終講は、”不動玉の形”の続きです。
③ 飛角型
飛と角の効きによって、玉が動けなくなっている形のことです。

(第1図)
続最終回第1図

第1図。『週刊文春』昭和37・2・12号・二上八段の作品です。
桂の使い方を考えるのがポイントになります。現在の形では桂を打つことはできませんネ。といって2一角成と捨てれば、3三桂と打つことはできますが、これでは逃がしてやるようなものでお話になりません。3二銀打の重い攻めも、玉方の1四角があっては所詮ムリ。4三の角が馬ならば、4二銀でオシマイですが、この形でもその手があるのです。4二銀、同歩と穴をふさいで、4一龍と捨てるのがキメワザです。(途中図)

(途中図は4一龍まで)
続最終回第1図途中図

図以下、4一同玉と取らせて、待望の桂の使用法で決まります。
第1図。4二銀・同歩・4一龍・同玉・3三桂・3一玉・2一角成まで、7手詰。



“穴ふさぎ”の要領は、今や詰将棋の常識となっているはずです。

(第2図)
続最終回第2図

第2図。清水孝晏四段著『新選詰将棋二百題』の中の詰将棋です。
この作品は、玉も至って窮屈ですが、詰方の飛も自軍の1五歩があるばかりに、横効きをジャマされていて、これまた窮屈な格好です。やたらに馬が動くと、えたりと入玉されてしまいますので、銀による王手しかないことに気付くはずです。その前に仮想図をよく見て下さい。

(仮想図)
続最終回第2図仮想図

この形なら詰筋の発見も容易でしょう。1五金の捨て駒手筋は、詰め手の基本型に属するものです。持駒が飛ならば、1五飛打ですし、持駒の代りに盤面の3五地点に飛があれば、1五飛と寄って捨てる手が成立します。
かくて、初手2五銀と打ち(ここ倹約して2五銀と引きますと、失敗しますから注意して下さい)、1五玉と歩をパクらせてから、再び原型に戻す1六銀の両王手が形です。この筋は”ジャマ駒のある形”で学習済みであり、『原型不変・消去の原則』という詰棋忍法でした。
第2図。2五銀打・1五玉・1六銀・同玉・1五飛・同歩・2五銀まで、7手詰。



“ジャマ駒のある形”の復習問題でした。

(第3図)
続最終回第3図

第3図。大山名人著『将棋段級審査』の第40問です。
“守備駒のある形”の典型的な問題です。龍の効きが2筋よりそれれば、オシマイになりますが、どうやって誘いだすのが良策でしょうか?
このような形の場合には、玉より離れている龍を最大限に玉に近づける方法を考えるのが、解くコツになります。といって直ちに2六桂は、確かに龍は玉に一歩近づきましたけれど、マトを射ていません。先づ3六馬とするのが正着です。同龍と取る手も、また2五合をすることもできませんので、1三玉と逃げます。この形に追い込んでおいて、2五桂と捨てるのが良策になります。同龍と取って途中図ですが、玉の行動範囲内に龍をおびき寄せましたので、つぎに3五馬と王手をしたときに、1四玉とはかわせなくなりました。この辺の呼吸をよく覚えておいて下さい。

(途中図は2五同龍まで)
続最終回第3図途中図

かくして3五同龍と取らざるを得なくなり2三飛成までとなります。
第3図。3六馬・1三玉・2五桂・同龍・3五馬・同龍・2三飛成まで、7手詰。



守備龍の移動法が参考になったことと思います。

(第4図)
続最終回第4図

第4図。『将棋世界』(昭和45年11月号)東京都・秋元龍司氏の作品です。
形から見ても、玉方2二桂の配置からまづ2三桂と打ちたくなりますネ。同角と取らせて、3三香も形です。これで”合駒の形”になってきますが、その選定が問題です。こんなときは、まづ歩合いを考えるのが手順、そこで3二歩合とし以下、2一馬・同玉と呼び出して4一飛成と迫ります。(参考1図)

(参考1図は4一飛成まで)
続最終回第4図参考1図

この形でまたも合駒ですが、何を合いしても詰方は、3二香成から3三桂のねらいしかありません。このねらいによって3一○合の駒も結局は取られてしまいます。取られた駒が頭に効く駒ですと、1二○打までの詰みになりますので、どうしても頭の丸い駒でなくてはいけません。そこで3一桂か、3一角かのどちらかですが、桂ですと以下、3二香成・同角・3三桂・1一玉・3一龍・2一歩合・2三桂・同角・2一龍までになります。それなら3一角ですとどうでしょう。やはり同じような過程をふんで参考2図となります。

(参考2図は2一歩合まで)
続最終回第4図参考2図

この形ですと、どうやっても詰みません。したがって前に戻り、最初の合駒の場合に、歩以外の駒なら何を合いしても、この図で持駒歩の代りに何かがありますので、詰んでしまう結果になります。

(参考3図は3二銀合まで)
続最終回第4図参考3図

それなら参考1図で、4一飛成を避けるために、3二銀と合駒を変えたらという疑念が生じると思いますが、(参考3図)それは以下、3二同香成・同玉・2三馬・同玉・2四銀・1四玉・3六角・2五合・2六桂まででキレイに詰んでしまいます。
さて大分脱線してしまいましたが、要するに2三桂から3三香というねらいは、解図者をして陥穽させんとする、作者の権謀術数であったわけです。
角で取ることができないことを計算に入れた、初手2一馬が妙手です。勿論同角なら3三香・3二角上・2三桂・2一玉・4一飛成・同角・3一香成までです。2一同玉と取らして3三桂から4一桂成が、なんとも云えぬシビレる手で、この辺の呼吸は大したものです。逃げれば桂と香の並べ詰みですので、同角と取って途中図になります。

(途中図は4一同角まで)
続最終回第4図途中図

ここで3三香と打って形を決めますが、3二合をしますと、2三桂・2一玉・4一飛成で駒が余って詰んでしまいます。そこで3二角と上りますが、以下2三桂・2一玉・4一飛成・同角・3一香成までで、見事に詰上りました。
第4図。2一馬・同玉・3三桂・3一玉・4一桂成・同角・3三香・3二角上・2三桂・2一玉・4一飛成・同角・3一香成まで、13手詰。



飛の成り捨てで収束するところがそつがなく、また玉方の角の動線が大変に面白く、実に不動玉の佳品と思います。



「三百人一局集」「四百人一局集」によりますと、第4図は秋元氏のデビュー作だったのですね。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:hirotsumeshogi
少ない知識をフル活用させています。
当ブログはリンクフリーです。
相互リンクは詰将棋関係のものであれば原則受けさせて頂きます。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR