続・詰将棋の能率的勉強法(10)(近代将棋昭和46年4月号)②

村山隆治氏の連載「続・詰将棋の能率的勉強法」、第10回の後半部分です。
(第5図)
続第10回第5図

第5図。『近代将棋』昭和44年10月号・秋田県・成田悟氏の作品です。
第4図とよく似た形をしていますが、ねらいとしている手筋も同じような味をもっています。やはり3三飛の移動法がポイントです。この方法が前題とは違っているところに、面白い点があると思います。
前図では先に1三桂としましたが、本図でこの手を指しますと、同飛と取られ、つぎの1二角も同飛と取られて失敗してしまいます。また1二角とせず、3二角も面白い攻めですが、1二玉と軽くかわされますと不詰です。もし欲ばって同銀と取ろうものなら、3一金・1二玉・3二龍・2二合・2一銀でオダブツになってしまいます。
この辺の綾を避けるために、先に1二角と捨てておくのが巧い手になります。同じような格好だと思って、同様な手順で詰むと速断してはならぬところです。1二同香と一目上げてからの1三桂は形です。同香では1二金の一発ですので同飛となり、飛の効きが3筋よりそれましたので、1一金と玉を送ってから3一龍は簡単な順です。
第5図。1二角・同香・1三桂・同飛・1一金・同玉・3一龍・2一合・2二龍まで、9手詰。



同じような形をしていても、駒の配置と持駒によって、違った手順になる参考作品。

(第6図)
続第10回第6図

第6図。清水四段の作品です。
詰方の馬が、遠く間接的に1四まで効いており、更に詰方の1五歩が置いてありますので、3二の守備馬が移動すれば玉はその死命を制せられてしまいます。3三歩の配置も、3二馬があることを暗示させています。そこで2二龍のタダすても、形としてあるのではないか位は、直感で判ることでしょう。
ただ、すぐに2二龍では同馬で、折角自軍の馬筋が通じても、1二に落ち込む穴があいていますので失敗してしまいます。それなら穴ふさぎの1二飛を、初手にきめておけばよいことが判るでしょう。
第6図。1二飛・同香・2二龍・同玉・3二馬・1一玉・2二角まで、7手詰。



飛のタテ効きを活用した、不動玉型です。

(第7図)
続第10回第7図

第7図。将棋世界誌付録『短編詰将棋傑作選』に掲載された、稲富豊氏の作品です。
これは守備駒の移動に属さない特異な不動玉型ですが、仲々の傑作品と思います。

(仮想図)
続第10回第7図仮想図

詰め手を思案する前に、考えるヒントをさし上げましょう。それは紆余曲折の結果、仮想図のようになったらどうでしょう。2四香の限定打から、2五桂で簡単ですネ。盤上の飛と持駒の桂一枚を巧妙に使用して、この形にすることを考えればよいのです。
詰め将棋ずれした人なら、ひとまづ2三飛成を考えるところでしょうが、同龍の手があってはどうにもなりません。また平凡な2四金は以下、2二玉・2三香・3一玉でダメですし、2三香のところ3四金と開き王手をしても、3一玉でつかまりません。となれば重い攻めですが、2五桂よりありません。2三玉の逃げなら2四香の一発ですので、2二玉の一手ですが、そこで3三桂成の両王手が浮んできます。3三同玉なら、こんどこそ2三飛成が成立しますが、3一玉といなされてビックリ、以下アワてて3二銀成・同龍・同成桂・同玉で広くなってしまいつかまりません。

(途中図は3三桂不成まで)
続第10回第7図途中図

ところがここにもう一つ、3三桂不成という寸鉄玉を刺す鬼手が残されています。(途中図)3一玉の逃げには、3二銀成の妙手により、同玉は2一龍・3三玉・2五桂まで。また3二同龍は、4三桂・同龍・2一龍まで。桂不成として、4一の点に効かしておくのが奇抜なねらいでした。
したがって、この3三桂不成には同玉のほかなく、2三飛成で見事仮想図が実現し解決します。
第7図。2五桂・2二玉・3三桂不成・同玉・2三飛成・同玉・2四香・3三玉・2五桂まで、9手詰。



香を短く使用する2四香も、締めくくりの手として面白く、それに意表の桂不成と、誠に申し分ない短編の傑作でした。
② X字角型
角の斜め効きによって成立している形。

(第8図)
続第10回第8図

第8図。清水四段の作品です。
2三飛と打って、1二玉の逃げに2四飛成の開き王手で………こんな筋が浮んだことと思いますが、生憎と3四馬が金に当っていますので、開き王手をしたときに素抜かれて失敗します。1四金がなければ2四飛で合い効かず、したがってこの守備金を”どける”か取り払うかに手はしぼられます。
2四飛は同金で簡単にダメ、そこで2五飛と打ちます。2四歩合ならどうしますか?チョッとしたメンタル・テストですので試して下さい。
さて2五飛には同金と取るよりありませんが、こんどは2三飛と打って開き王手をしたときに、質金が入手できますので、2三金打までとなります。
第8図。2五飛・同金・2三飛・1二玉・2五飛成・3四金・2三金まで、7手詰。



詰方2六歩の配置は、作意には不必要な駒なのですが、初手2五飛を限定させるために置いた苦心の駒と思います。

(第9図)
続第10回第9図

第9図。『サンスポ詰め将棋』昭和45・9・3日・大友昇八段の出題です。
形が混みいっていますので、初級者は手の選択にまどわされることでしょう。3五桂がありますので、2三桂と打って見たいところです。同金なら同桂不成・同角・2一金までうまくいきます。ところが2三同角ですと、同桂不成・同金で詰みません。
ほかに3二歩の手もありますが、軽く2一玉でも、また同金と取られてもとどきません。こんなときに詰将棋のベテランは、無意識のうちに2一馬の手を指してしまいます。いわゆる形と筋のカンが鋭いのです。同角は2三桂と打ってよいし、同金は4三桂不成まで。そこで2一同玉と取るよりありません。つぎの1三桂も形です。同金と取らせて2二歩・3一玉・4三桂不成まで、オシマイです。
第9図。2一馬・同玉・1三桂・同金・2二歩・3一玉・4三桂不成まで、7手詰。



舞台装置の割に、簡単な筋の作品でした。

(第10図)
続第10回第10図

第10図。X字角型における代表的暗算問題です。
こんな詰将棋を、手こずっているようでは追試験を行いますゾ。”穴ふさぎ”のコツを覚えていれば、ソレマデです。
第10図。2四桂・同歩・2二金・1三玉・3二金・2三玉・2二角成まで、7手詰。



どうも自信がなくなったという読者は、『逃げ道のある形』(昭和45年5・6月号に連載)を、もう一度熟読玩味して下さい。

(第11図)
続第10回第11図

第11図。清野静男七段著『詰と必死』の第61番です。
前題を少し複雑化したような問題なので、案外スラスラといくはずです。馬に敵金が当っていますので、ヘタな開き王手では素抜かれてしまいます。8一桂が動けば、8一銀の一発であることは判りますが、単刀直入に9三金としても同桂とは取ってくれません。同銀で固くなるばかりです。となれば平凡な8二金より手がないですネ。必然的に9三玉の形になりますが、ここで金の開き王手は、前述した通り、馬が素抜かれますのでダメです。
この形では、攻めの手掛りを得るために形を崩したい所です。形を崩すために常に使用される桂馬です。”手裏剣”みたいな働きをする駒、とに角とんでもない所から王手できますので、流れダマに当るようなものです。
8五桂・同銀で、飛が玉頭に効くようになりました。(途中図)

(途中図は8五同銀まで)
続第10回第11図途中図

この形になれば、玉を原型に戻して9四飛という、歩を入手しながらの攻めが続行できます。したがって9二金と両王手をして玉を戻し、9四飛・同銀で9三歩と打ち捨てて、待望の桂を吊り上げることに成功しました。
第11図。8二金・9三玉・8五桂・同銀・9二金・同玉・9四飛・同銀・9三歩・同桂・8一銀まで、11手詰。



手裏剣桂の恐しさを、よく覚えて下さい。

(第12図)
続第10回第12図

第12図。風変わりな一局を最後に紹介しましょう。不動玉の主駒は3一角で、守備駒は2一桂です。したがって従来の観念ですと、駒の打ち捨てによって守備駒を移動させることが、解決に結びついたはずです。本局でも玉頭に一枚捨てて同桂とし、2一銀が理想の攻め方になります。
ところが持駒は銀と桂ですので、持駒を打ったのではこの目的を達成させることができません。勿論初手2四桂捨ての手は、無謀です。盤駒を活用して目的を果す手は、1三角成の妙手よりありません。主駒と考えられる駒を捨てるトリックは、高級手筋として珍重されています。
1三同桂は2一銀・同玉・2三飛成・2二合・3二とまで、そこで1三同玉と取りますが、1六歩の配置より次の1四銀は、さして難しくない手と思います。(途中図)

(途中図は1四銀まで)
続第10回第12図途中図

下辺には逃げられませんので、1四同玉よりありませんが、1五飛より3六桂と打って詰上ります。
第12図。1三角成・同玉・1四銀・同玉・1五飛・2四玉・3六桂・3四玉・4四とまで、9手詰。



不動玉の主駒である3一角を、いきなり捨ててしまう所が誠に風変わりでした。
                                        ――以下次号――
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