続・詰将棋の能率的勉強法(10)(近代将棋昭和46年4月号)①

村山隆治氏の連載「続・詰将棋の能率的勉強法」、第10回の前半部分です。
不動玉の形(その1)とタイトルの下にあります。
図形による思考
詰将棋作家は、解図者が昇華して熟練工になったようなものです。そしてどこの企業にも熟練工と呼ばれる人は必ずいるはずです。
この人達は設計された図面をひと目見て、その物体が造形されていく過程を、読み取ってしまいます。即ち、図形による思考力が大変に発達しているわけです。
“形と筋”は、もはや熟練工にとって常識かも知れませんが、将棋でも上達のためには欠くことのできない感覚とされています。とくに詰将棋の世界では、この感覚の有無が技量を左右しますので、開校以来今日まで、あらゆる機会に詳述してきたわけです。

(イ図)
続第10回イ図

例えば、ごく初歩的パターンに、イ図のような詰めの基本型があります。これは離し角の合い効かずで詰みます。したがってこのような形の詰将棋の大部分が、離し角の筋をねらいとしているわけになります。このコツを覚えてしまいますと、この筋が進化したロ図の詰将棋も、簡単に手を選ぶことができます。

(ロ図)
続第10回ロ図

離し角のできる1三の点に玉を誘いだせば詰み形ですので、まず1三銀打は図面を一見してすぐ映るはずです。同玉は早く詰んでしまいますので、2三玉と逃げます。
この形でもし1一が空点になれば、こんどは1三銀を支点にして、3三金捨てから1一角の離し角筋に、舞台は暗転します。そこでこの形にもっていくために、1二銀と捨てる手が反射的に飛びだすはずです。

(途中図は3三同玉まで)
続第10回ロ図途中図

1二同香・3三金・同玉で途中図になりますが、パターンこそ違っていますけれど、離し角の基本型であることに違いはありません。以下1一角・3二玉・2三角・同玉・2二角成までで詰上りです。
ロ図。毎日新聞(昭和45・10・24)・大山王将・名人出題図。1三銀2三玉1二銀打・同香・3三金・同玉・1一角3二玉2三角・同玉・2二角成まで、11手詰。



このように、図形による思考法は時によっては素晴しい効果を発揮するのです。
さて、最終講座は”不動玉の形”です。

11 不動玉の形
あらゆる形の詰将棋のうちで、最も簡単に形の判断のつく作品が、この不動玉の形でしょう。読んで字のごとく、どこにも動けない王様、これより窮屈なことはありません。まるで成田山の不動尊のようなものです。不動尊と言えば”不動明王”の略であり、うしろに大火焔を背負い、常に石上に坐して悪魔を降伏させる、これまた極めて窮屈な”ほとけ様”なのです。
この不動玉の形は、玉を動けなくしている要因により、つぎの6種に分類ができます。このうち⑥の打歩詰め型は、特別なケースとして、すでに「歩詰めの形」という項目で、本講昭和44年7・8月号に連載しましたので省略します。
① 十字飛車型
② X字角型
③ 飛角型
④ 自閉型
⑤ その他の型
⑥ 打歩詰め型
玉は詰方の駒の効きによって、包囲されてはいますが、最後のとどめは自軍の守備駒によって防止しています。したがって大部分の図式は、「守備駒のある形」で述べた解決法
㋑ “避ける”方法(回避手段)
㋺ “どける”方法(排除手段)
㋩ “取り払う”方法(清算手段)
の、3つのオマジナイでよいはずです。

(ハ図)
続第10回ハ図

なお、チョッと見ると不動玉のような錯覚に落ち入り易い詰将棋に、ハ図のような作品があります。これは3一飛が浮き駒で、玉はいつでもこれを喰って逃げられますので、このような図式は不動玉とは言いません。
① 十字飛車型
飛車のタテとヨコの効きによって成立している形。

(第1図)
続第10回第1図

第1図。有名な古作物です。両方の桂打ちを防いでいる両馬の効きを、一方に限定する焦点の捨て駒、5四香の限定打で解決することは、今や常識の部類に属する手筋です。
第1図。5四香・同馬・6三桂・同馬・4三桂まで、5手詰。



(第2図)
続第10回第2図

第2図。塚田九段著『よくわかる詰将棋』の第18番です。
守備駒を”どける”よりありませんが、その手順が巧妙です。1一の駒がナマ角だけに2三桂と右から掛ける攻めは、2一に穴があきます関係上うまくないことが判ります。2二角成も同じことになります。
この場合、4三桂として香を吊り上げておくのは、形からいってもいわゆる筋というもの、これであとは敵飛の横効きを消せばよいのです。焦点の2二に角を成り捨てる手は、もう勉強済みのはず、もし同香なら4二馬・2一玉・5一飛成まで。そこで2二同飛と取りますが、2三桂で飛を吊り上げて、4二飛成までとなります。
なお、初手を2二角成としますと、同香と取られて以下、4三桂も軽く2一玉と逃げられて失敗します。2二同香でなく同飛なら、4三桂・同香・2三桂・同飛・4二飛成までの手順前後が成立しますが、これを避けているのは当然の処置です。
第2図。4三桂・同香・2二角成・同飛・2三桂・同飛・4二飛成まで、7手詰。



駒配りの面白さと、手順の巧妙さが印象に残る小品でした。

(第3図)
続第10回第3図

第3図。清水孝晏四段著『新選詰将棋』の一局です。
持駒は豊富ですが、敵龍が八方にらみですので、この守備力削減が急所となります。焦点の捨て駒に妙手ありとばかりに、1三角と打ちたい所ですが、これは良否を別としても一考に値する手です。まづ同桂は、4三桂・同龍・2一金・同玉・2二金まで。また同龍は、4二金・同銀・3二金まで。ところがもう一つ応手が残っています。それは2二に合いをする受け手です。これですと、4三桂と打っても3二玉とたたれてダメになってしまいます。ここで逆算式思考法を応用しますと、2二に合いをさせない方策を考えればよいことになります。それには、2二の点から龍の効きをそらせば、目的を果すことが判ります。かくして4三桂の手が浮んでくることでしょう。この辺が詰将棋一流の考え方というものです。

(途中図は1三角まで)
続第10回第3図途中図

4三桂・同龍・1三角(途中図)の呼吸をよく覚えて下さい。途中図以下は、1三同龍と取り、4二金・同銀・3二金まで。
第3図。4三桂・同龍・1三角・同龍・4二金・同銀・3二金まで、7手詰。



なお、1三角・同龍のところ、1三同桂は2一金・同玉・2二金までの、同手数詰上りとなりますが、超短編では致し方ないとされています。したがって、いずれを解答しても正解となります。

(第4図)
続第10回第4図

第4図。『週刊文春』昭和45・10・19号・二上八段の作品です。
前題と同じようなねらいを持った詰将棋で、3三飛の守備力の移動方法がポイントになっています。したがって敵飛の3筋への効きがなくなれば、1二角・同香・2二歩・1一玉・3一龍の順が生じます。
いきなり4三角は前題同様、3二に合い駒されてダメです。そこで1三桂はかねての一手、同香は1二角・1一玉・2二角・1二玉・3三角成・4二金・1一飛まで、やむなく1三同飛と取ります。ここで3二角が面白そうですが、以下1二玉・2一角打・2二玉・1四角成・4二金で3二馬が成立せず、失敗となります。1二角も同飛でムダ手、そこで4三角と打って(途中図)こんどは飛を4筋に移動させるのが巧妙な捨て駒です。(ここ5四角と打つ手もありますので、作図としては玉方5三歩を配置しておくところです。)

(途中図は4三角まで)
続第10回第4図途中図

これで前記ねらいが成立し、解決します。
第4図。1三桂・同飛・4三角・同飛・1二角・同香・2二歩・1一玉・3一龍まで、9手詰。



ワンクッションおいた飛の移動法が、参考になったことでしょう。
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