続・詰将棋の能率的勉強法(9)(近代将棋昭和46年3月号)②

村山隆治氏の連載「続・詰将棋の能率的勉強法」、第9回の後半部分です。
(第4図)
続第9回第4図

第4図。松田茂行八段の作品です。
形から一瞬映る手は、4二から打込む筋、それに2二の点に金気を捨てる筋だと思います。しかしこの誘い手は、いづれも失敗となり作者のねらいが功を奏します。
例えば4二銀なら、同角・同歩成・同金で以下続きません。また2二銀は同玉(同角なら2三桂まで)・2三馬・3一玉・2二馬・同玉・3四桂・3一玉・4二金・同角・同歩成・同金で、これも失敗です。手順がいかにもらしき手なので、この落とし穴に迷い込む人もでるはずです。
こうなれば、筋らしき手は断念して、俗の2三桂の手段に頭を切換えるのが賢明な策です。2三桂・2二玉で途中1図となります。

(途中1図は2二玉まで)
続第9回第4図途中1図

この局面での香頭の金捨ては、定形で常識的な筋です。1二同玉を強要して、1一桂成の両王手が正しい順で、ここ3一桂成の開き王手では、2二玉と寄られて詰みません。1一同玉と取って途中2図です。もし取らずに2二玉なら、1二馬・3一玉・2一馬まで。

(途中2図は1一同玉まで)
続第9回第4図途中2図

途中2図で、反射的に1二馬の手が映らないようでは、未だ修業不足ですぞ。
第4図。2三桂・2二玉・1二金・同玉・1一桂成・同玉・1二馬・同玉・2三銀・1一玉・1二香まで、11手詰。



初手の2三桂が、いかにも田舎くさい俗手ですので、筋のよいツメキストは結構詰めあぐんだことと思います。

(第5図)
続第9回第5図

第5図。埼玉県の柏川悦夫氏が『詰将棋パラダイス』(昭和42年2月号)に発表した作品です。
「持駒に桂があるときは、まず桂打ちを考えよ」これは、ことあるごとに説明してきた金言です。本局でも6三桂の狙いに触手が動くはずですが、果してどうなるのでしょう。手を進めて見ます。
6三桂・同飛、ここで直ちに4一飛成では6二玉・6一龍のときに、7三玉と逃げられてしまいますので、7三角が手筋の形です。(参考図)

(参考図は7三角まで)
続第9回第5図参考図

ここで7三同飛は、前記4一飛成で以下、6二玉・6一龍まで。また6二に何を合駒しても、4一飛成・同玉・4二金までとなります。これで手段に窮したかに思えますが、ここに至ってもまだ6二飛引とする移動合いのカンフル注射があります。この一手によって、4一飛成に同玉と取っても、この飛の横効きで詰みません。これぞ作者のほくそ笑む誘い手です。
面白そうに見えた6三桂が、ないとしますと4二角か4一飛成ですが、4二角は同飛と取られて切れ筋、そこで平凡な俗手4一飛成が正着となります。4一同玉と取って途中図です。

(途中図は4一同玉まで)
続第9回第5図途中図

この局面では、6三角が形ですが、軽く3一玉と寄られますと、金打ちができずに逃れ筋になります。もしここで玉方の2一桂がなければ、3一玉と寄っても2一金と打つことができます。そこで6三角と打つ前に、まづ3三桂と打ち同桂と移動させておくことが大切です。3三同桂と取らずに3一玉なら、1三角・同桂・2一金までです。
第5図。4一飛成・同玉・3三桂・同桂・6三角・同飛・4二金まで、7手詰。



初手に6三桂の落とし穴をしくんだ所などは、俗手の正着とあいまって、にくいばかりの小品です。
なお、玉方7五との存在は、6三角の限定を目的にした配置です。さもないと7四角と打たれ、合駒が余って準不完全作品になってしまいます。創作するときには注意して下さい。

(第6図)
続第9回第6図

第6図。『週刊文春』昭和45・7・20号・二上八段の作品です。
玉の行動半径は、いたってせまく、どうやっても詰むように見えます。ところが、いざ考えて尋常に勝負となりますと、意外に誘い手が多くて迷ってしまうことでしょう。
開き王手と両王手の筋、それに角打ちの筋が入り乱れて、それこそ”コンガラ童子”になってしまいます。数多い手の中で、3三角の穴ふさぎが詰将棋らしき手で、気が引かれますネ。なんで取っても穴がうまりますので3一龍・1二玉・2一龍まで、この狙いがありますので余計にその気がするわけです。ところが軽く1二玉とかわされますと、つぎなる1一角成の筋も同角と取られて、水泡に帰してしまいます。
4一銀不成の合効かず筋は、1一玉・1二歩・2一玉・3二龍が目的ですが、1一玉とせず2一玉とさがられますと、3二龍・1一玉で打歩詰めに誘い込まれてしまいます。
3一銀不成の両王手も、うまそうでいて詰みません。それは3一銀不成・1一玉・1二歩・2一玉・3二角・1二玉・4三角成・2二歩合でとどきません。また4三銀不成も以下、2一玉・3二銀成・1二玉・2一角・1一玉で打歩詰めになってダメですし、1一角の手も1二玉で失敗です。
以上の検討が、快刀乱麻の名推理でいづれもダメと、極めて短時間で解決つけば大した腕ですが、自己の詰棋力不足が原因で、読みが足らないのではないかと、あらぬ方向に猜疑心が働いてしまうので仕末が悪いのです。
さて、残された3一銀成の俗手が正着で、1一玉となり途中図です。

(途中図は1一玉まで)
続第9回第6図途中図

この手段も1一玉となった形が打歩詰局だけに、読みの対象からはづされ易いところが作者のねらいでもあるわけです。1二歩打を可能にする1二龍捨てが、チョッと気づきにくい手と思います。これが読めてはじめて3一銀成の手の発見になるわけです。あとは容易な追い詰めで解決します。
第6図。3一銀成・1一玉・1二龍・同玉・2一角・1一玉・1二歩・2二玉・3二成銀まで、9手詰。


ズッコケそうな3一銀成の手段には、一杯喰わされた読者もいたことと思います。

(第7図)
続第9回第7図

第7図。『よみうり詰将棋』(昭和44・2・23日)塚田九段の作品です。
2一玉の逃げを、あらかじめ防止する手を考えますと、2三桂と打つ手が1一の点にも効いてきますので当然のように思われます。ところがこの玉には3二と上部に脱出する気配もあります。現に2三桂と打ちますと、3二玉で銀の持駒では逃げを封じることはできません。したがってこの形では、3二玉と上らせてはいけないのです。
そこで、俗に4二銀と打つのが3三の点を睨んでよい手となります。これでも3二玉なら、3三銀成・2一玉・4三馬・1一玉・2三桂までキレイに詰みます。2一玉の逃げは当然で、4三馬と追って途中図です。

(途中図は4三馬まで)
続第9回第7図途中図

持駒が頭の丸い桂ではどうにもならず、合駒を強要した4三馬に対し、何を合いしたら最善になるでしょうか?すでに学習済みですので、キッパリと選んで欲しいです。
3二歩合ですと、3一銀成の手筋が生じ、同玉は4二と・2二玉・3二馬・1一玉・2三桂まで、また3一銀成に1一玉なら2三桂・2二玉・3二馬までとなります。この2三桂を防ぐ目的で3二銀合ですと、やはり3一銀成・1一玉に同じように2三桂とし、同銀・2一馬まです。
このような結果で、どうしても3一銀成・同玉・4二とを回避するような、横に効く合駒でないとまずいことが判ります。
まず飛合いは、同馬・同玉・3三飛・2二玉・3一飛成・2三玉・3三龍まで、桂が余ってしまいますので最善ではありません。そこで3二金合いが最善となりますが、これも同馬と切って3三金と押さえ、2一玉の逃げに3一銀成とさばきすて、4二とからの活用で容易な寄せ手順となります。
第7図。4二銀・2一玉・4三馬・3二金合・同馬・同玉・3三金・2一玉・3一銀成・同玉・4二と・2一玉・3二と・1一玉・2三桂まで、15手詰。



俗手に”合駒の形”を挿入した、塚田流作品でした。

まとめ
俗手の形
短編詰将棋の新しい分野として開拓された手筋で、筋のよいツメキストの感覚の盲点をつく形式を採り入れているのが特徴です。
この入門講座の開講に当たり、冒頭に述べた”詰将棋は、駒を捨てることと見つけたり”という詰将棋語録は、この俗手の形には適用しません。俗手の形には、詰将棋らしき手筋の誘い手が、いくつかありますので、熟練者はすぐこの紛れに落ち込みますが、この筋を検討してダメなときは、早急にポイントを切換えて、平凡な王手を探すことが解法のコツです。
                                     ――俗手の項おわり――



次回の更新は「詰将棋パラダイス2014年9月号 ちょっとした感想」を予定しています。
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詰みを早く見つけることに腐心しています

非常に良い連載をしていただきありがとうございます。 詰将棋を解きやすくするために、駒の使い方で詰め方を分類しようとしていてこのページにたどり着きました。 一生懸命読ませていただきます。

M本さん

コメントありがとうございます。
大分前の連載ではありますが、現在でも十分に楽しめるのではないかと思います。
私は作者ではありませんが、少しでも棋力や勝率の向上に繋がれば幸いです。
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Author:hirotsumeshogi
少ない知識をフル活用させています。
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相互リンクは詰将棋関係のものであれば原則受けさせて頂きます。

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