続・詰将棋の能率的勉強法(9)(近代将棋昭和46年3月号)①

村山隆治氏の連載「続・詰将棋の能率的勉強法」、第9回の前半部分です。
俗手の形とタイトルの下にあります。
事実の認識
詰将棋では、筋と形とを多く知ることが、上達への近道とされています。とくにパターン(形)の認識ということは、重要なことなのです。
「ああ、なるほど。こんな形か」といった類いの、事実を認識することに対する”見過し型人間”と、「どうもおかしいぞ?なぜだろう」という”疑問発生型人間”との間にどのような違いがあるのでしょうか。
勿論、この場合の”見過し型人間”とは、単に表面的な理解にとどまるのに対して、疑問発生型人間は、なぜだろうということに端を発して、ものごとの本質を追求し、認識するという方向に向うものと考えられる人間のことです。
すべてこのように、わかっていると思っていても、案外と事実を認識していないことが多く、やはり正確な認識には「これは変だなー、なぜだろう」という疑問から始まって、はじめて事実を認識することが、できるのではないかと考えられます。したがって論ずるまでもなく”疑問発生型人間”の方が、上達は早いことになります。
将棋全体を通じても、この「なぜか」という疑問を持つことは非常に大切です。この疑問を持つか持たないかが、詰将棋に強くなれるか、なれないかの分かれ道だといっても過言ではないでしょう。
事実の認識は「なぜ」が、前提になることを肝に銘じて頂き度いものです。
今月は、筋のよいツメキストにとっては、最も感覚の盲点になる「俗手の形」の詰将棋について勉強しましょう。

10 俗手の形
俗っぽい平凡な田舎くさい手のことを、一般に俗手(ぞくて)と称しています。
短編詰将棋の手筋もすでにでつくして、新しいオリジナルな手筋はもう創造することは難かしいのではないかと、噂されている現在です。したがって各誌に発表されている短編物は、いくつかの筋の組合わせであり、帰一するところは同じねらいであっても、そこまでに運んでいく過程が問題を含んでおり、創作者はその辺に苦心を払っているわけです。
そのような行き詰まりを、新しい分野で開拓していこうというのが、この項でとりあげた「俗手の形」なのです。

(参考図)
続第9回参考図

さて、俗手といっても、参考図のような詰将棋では、2三銀・3一玉・3二金まで、平凡な俗手で詰みますが、これは”詰む将棋”であって詰め将棋ではありません。
いかにも詰手筋らしき誘い手を見せて、その実それでは詰まず、他の平凡な手が正しい着手となるような、解図者の感覚の盲点をついた詰将棋のことを「俗手の形」として、採り上げてみました。とくにこの詰将棋学校に入学して、成績優秀な皆さんは、この落とし穴におちこみ易いので呉々も注意して欲しいと思います。
この新しい傾向の詰将棋は、塚田正夫九段・二上達也八段・内藤国雄八段等が、好んで作られているようです。これからのツメキストは、このような新しい波のものも、マスターしておく必要があります。

(第1図)
続第9回第1図

第1図。『よみうり詰将棋』(昭和42・2・12日)塚田正夫九段の出題です。
玉は1二と3三の両方逃げがありますが、金の持駒がないので上部への逃げを押さえることはできません。したがって、どちらにも逃がさない攻めを考えるのが常識です。
筋のよいツメキストが直感で映る手筋は、3二とです。といいますのも、1二玉と逃がしては詰まないと、ピンとくるからです。ところが、いかにも筋らしい3二との手段は誘い手であり、作者の落とし穴なのです。即ち3二と・同玉・4三銀・3三玉(2二玉なら4二飛成まで)・3四銀成・同玉・4五飛成・3三玉・3四銀・2二玉で詰みません。3二とが余りにも詰将棋らしい筋なので、これに執着してしまうのです。
着手は平凡な3一飛成の俗手なのです。筋の悪い人なら、むしろ気が付きやすい手ではないかと思います。3一飛成・1二玉で、攻めが中断すると早合点をし、読みを打切ってしまうところに誤算が生じるのです。それに続く3二龍がまたまた大俗手、全く感覚の盲点をつく一手で途中図となります。

(途中図は3二龍まで)
続第9回第1図途中図

この形は「合駒の形」です。飛・金以外の合駒なら、2一龍と桂を取ってはいり、以下同玉・3二銀・1二玉・2一銀打で詰み、したがって合駒は飛か金ですが、飛では同龍と取って3二飛の一発、そこで金合いが最善ときまります。2二金合を同龍と切り、3一銀より3四金捨ての好手で、上部脱出を封じ桂吊しまでとなります。
第1図。3一飛成・1二玉・3二龍・2二金合・同龍・同玉・3一銀・3三玉・3四金・同玉・3五銀・3三玉・2五桂まで、13手詰。



いかにも筋らしい手筋を誘い手に挿入し、作意はその裏をかく俗手を採用して、解図者を感覚の盲点におとし込む好作品でした。

(第2図)
続第9回第2図

第2図。『週刊文春』昭和37・7・23号・二上八段の作品です。
入学以来今日までの勉強で、いろいろと解くコツを覚えてきました。そしてその大部分の手筋が、大駒をタダで捨てる手法でした。したがって詰棋感覚からいって相手駒との総裁は無筋とされているのが常識です。
この詰将棋でも、1三桂打が面白い手として目に映りますが、以下1二玉(同香なら1一金まで)・2二金・同金・同馬・同玉の切れ筋で失敗となります。1三桂打がダメならば俗手ですが、1一馬よりないことに思考を転換するのが賢明な策です。1一馬・同玉で途中図となります。

(途中図は1一同玉まで)
続第9回第2図途中図

この局面での次の一手が、意表を衝く手段ですが、ピタリと当たるでしょうか。1二金と惜し気もなく一枚の金を捨ててしまうのが巧妙な手です。途中図では、1三香が浮ぶと思いますが、1二角合の妙防で以下、同香成・同玉・1三金・1一玉で不詰です。
1二金捨てで上部に誘い出し、1三香と打って以下、2枚の持桂の並べ詰みです。
第2図。1一馬・同玉・1二金・同玉・1三香・2一玉・3三桂打・2二玉・1四桂まで、9手詰。



俗手作品では、紛れの用意がとくに欠かせない作図感覚になります。本局でも初手の1三桂と、続く3手目の1三香が、巧妙な紛れ筋なのです。なお、5手目の1三香は「限定打」になっています。

(第3図)
続第9回第3図

第3図。内藤国雄八段の作品です。
詰方1四桂の配置から見て、これを拠点として攻めのアヤをつくることに間違いはありません。
初手は、4一角か2二金か1二銀のうちの一手ですが、どう見ても1二銀が筋に映ります。勿論1二同玉なら2二金まで、また1四玉なら3二角の離し角で詰みますし、3二玉なら2三角・3一玉・3二金までとなります。となれば2四玉の逃げしかありませんが、この手がウイーク・ポイントで詰みがないのです。なんとなれば、2四玉の逃げに2三金と打てば、1四玉とカゲにかくれて失敗ですし、また3四金と歩を取って王手をしても以下、同玉・2三角・3五玉で、3三桂が効いていますので4五角成ができずに、矢張り詰みません。
1二銀の手が不成功に終わったので、こんどは4一角を検討してみましょう。これとて3二香合とされ、1二銀・2四玉で金一枚となり詰みません。
金銀が持駒にある詰将棋では、金は最後まで保存しておくことが一般のセオリーになっています。そのウラをいって本局は、初手に2二金と打つのが正着になっています。2二金・2四玉で途中1図となります。

(途中1図は2四玉まで)
続第9回第3図途中1図

2四玉でなく1四玉の逃げなら、3二角の離し角で詰みます。途中図からの今後の攻めは、上部への逃げを封じ乍ら、離し角の狙いを実現させることです。それには3五銀と捨てて歩をつり上げ、3四金とはいるのが巧い手で、ならいある手筋なのです。
たんに3四金と歩を取っては、逃げ出されてしまいます。かくて1二角の離し角で解決します。途中2図参照。

(途中2図は1二角まで)
続第9回第3図途中2図

第3図。2二金・2四玉・3五銀・同歩・3四金・同玉・1二角・2四玉・2三角成まで、9手詰。



俗手の2二金の意味を、よく玩味してほしいと思います。
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