続・詰将棋の能率的勉強法(7)(近代将棋昭和46年1月号)①

村山隆治氏の連載「続・詰将棋の能率的勉強法」、第7回の前半部分です。
限定打の形(その1)とタイトルの下にあります。
詰め手筋の発展
明けまして、おめでとうございます。本年も相変わりませずに、ご愛読の程をお願いしておきます。
「目出度さも ちう位也 おらが春」。
信州の生んだ俳人一茶は、文政2年57才の初春の折に、この句を残しております。はつ日を拝しお雑煮を祝って、万事めでたづくめの新聞を読み終わると、もう何もなすこともなく、やおら将棋盤をひっぱり出し、徒然なるままに詰将棋の一局でも捻り出そうかなどというご仁は、さしづめこの句に代表されるような、ごく平凡な詰棋人ではないかと思います。
年の初めにあたり、どなたでも覚えておいて損のない”詰め手筋の公式”と、その発展の過程を、お年玉にさしあげましょう。これによって詰将棋を作る要領がわかりましたなら、まづ簡単な基本筋を活かして試作してみて下さい。
ここもとご覧に供しますのは、詰棋人呼んで”金頭の桂捨て術”という忍法集です。この術を活用した詰将棋は沢山ありますが、その中で特に参考になると思われる作品をご披露します。いろいろな手筋との組合わせによって、かくも同工異曲の作品が生まれる所に創作の妙味があるのです。

(第1図)
続第7回第1図

第1図。金頭桂捨術・基本図。
4三桂・同金・3二金打まで、3手詰。



(第2図)
続第7回第2図

第2図。基本応用図。
4二金打・同金・4三桂・同金・3二金打まで、5手詰。



(第3図)
続第7回第3図

第3図。基本応用図。
3二金・同金・4二金・同金・4三桂・同金・3二金まで、7手詰。



(心得)第2図のように、3三金と打たれて詰めよを掛けられた局面で、玉方が金を打って詰めをさけるためには、2二金打が最善。実戦に役立つ受けの手筋。

(第4図)
続第7回第4図

第4図。二上八段作品。
4二角・2一玉・2二銀・同金・3一角成・同玉・2三桂・同金・3二金打まで、9手詰。



(第5図)
続第7回第5図

第5図。二上八段作品。
2三飛・1二玉・1三銀・1一玉・2二飛成・同金・2三桂不成・同金・1二金まで、9手詰。



(第6図)
続第7回第6図

第6図。清野七段作品。
2二銀・同金・2三桂不成・同金・3二銀・2二玉・4三銀・3一玉・3二成銀まで、9手詰。



(第7図)
続第7回第7図

第7図。塚田九段作品。
7一飛成・同金・7二銀打・同金・同銀不成・同玉・7三金・6一玉・5三桂不成・同金・6二金打まで、11手詰。



(第8図)
続第7回第8図

第8図。内藤八段作品。
5一龍・4一金打・2二角・同玉・4二龍・同金・2三銀・3一玉・4三桂不成・同金・3二金まで、11手詰。



(第9図)
続第7回第9図

第9図。金田秀信氏作品。
2四桂・同金・2一銀・2二玉・2三角成・同玉・3三金まで、7手詰。



あまり前座がながくなりましたので、この位で真打ちにはいります。今月は「限定打の形」です。

9 限定打の形
飛・角そして香というトビ道具を遠く離して打つ攻め方は、実戦ではよく現出する形です。ただ実戦における遠打ちは、それによって詰めるという目的よりも、局面を有利に導くという場合の方に重点がおかれています。したがって実戦にでてくる遠打ちの手は、妙手とは程遠いものです。
ところが詰将棋においては遠打ちすることにより、位置の転換もしくは質の転換を計るのが主な目的です。それゆえにこの手筋がハイクラスの趣向として、珍重されているわけです。ただ惜しいことには、短編詰将棋の分野では、この趣向を採用することが大変に難かしく、どうしても中編以上の作品となってしまうことです。現在ある特種の詰将棋専門誌と棋誌を除いては、週刊誌・新聞・雑誌とも、すべて商業用的なものばかりであり、当然この遠打ちの詰将棋には、殆どお目にかかれないと云っていいでしょう。
駒を離して打つ場合に、どこの点から打っても結果が同じであるというのでは芸がありません。ある特定の点から打つことによってのみ、詰みがあるというところに面白さがあるのです。これが限定打というもので、これは”遠打ち”と”短打”に区分されます。
A 遠打ちの形
① 飛の遠打法

(第10図)
続第7回第10図

第10図。『詰将棋パラダイス』(昭和43年9月号)・東京都・安達康二氏の作品です。
パラッと大模様な駒配りですが、飛の遠打ちという趣向を主眼にしている以上、致し方ない配置なのです。
玉方の8四角が前方に移動すれば、5一角成という手が生じてきます。ところが同じ斜線の筋で交錯している角ですので、単なる敵角の移動では合駒が効いてきて詰みません。かりに3四飛と俗に攻めますと1五玉と逃げられ、5九角と引いて王手をしても、4八歩合でダメです。また2三桂成と詰将棋らしき手で迫っても、1五玉とかわされますと、飛を5段目のどこかに打って王手するよりありません。かりに7五の点以外の所に打ちますと2五歩合で詰みません。そこで7五の点に飛を打つとどうなるでしょう。これによって8四角の効き筋が、前方に限って消えますので、こんど2五に合いしますと、5九角と引いて合い効かずとなり詰上ります。したがって7五飛に対しては同角よりありませんが、そこで5一飛成と背後よりおびやかしても4二歩合が効き失敗となります。
このとき、もし6四の点が何等かの形で埋まっていれば、この手が成立することが判ります。その形に持っていくために、初手で6四飛行と王手をするのが巧い手です。1五玉なら1四飛・同玉・1三飛・2四玉・2五銀までですので、同香と取ることになり、そこで2三桂成とします。もし同銀なら、2六飛・1五玉・2五金まで、また同玉は2二飛の一発です。したがって前に述べたように1五玉と逃げますが、そこで7五飛と打って途中図となります。

(途中図は7五飛まで)
続第7回第10図途中図

この局面での7五飛とは、角の効き筋を中断する目的とはいえ、なんと絶妙な遠飛の一手でしょう。よくこの手を熟読玩味して下さい。かくて7五同角と取らざるをえなくなりますが、先に香を6四に吊り上げてありますので、下辺への効きが消えています。こんどは5一角成で成功します。
第10図。6四飛行・同香・2三桂成・1五玉・7五飛・同角・5一角成まで、7手詰。



短編に飛の遠打を盛り込んだ、カラクリ詰将棋ですが、仲々手の込んだ面白い作品と思います。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

hirotsumeshogi

Author:hirotsumeshogi
少ない知識をフル活用させています。
当ブログはリンクフリーです。
相互リンクは詰将棋関係のものであれば原則受けさせて頂きます。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR