続・詰将棋の能率的勉強法(6)(近代将棋昭和45年12月号)②

村山隆治氏の連載「続・詰将棋の能率的勉強法」、第6回の後半部分です。
(第7図)
続第6回第7図

第7図。短編のベテラン作家、神戸市の吉田健氏が『詰将棋パラダイス』(昭和42年8月号)に掲載した作品です。
中段玉の詰将棋は、仲々暗算では解きがたいと思いますが、手数が短いのでしっかり考えて下さい。図柄をよく眺めてみますと、この玉には上下2方向に逃げをもっていることが判ります。即ち6四飛成とすれば5六玉の逃げ、またこれを嫌って6六飛成では4四玉の逃げが生じます。そしていずれの場合も逃れ筋となってしまいます。なんとしても5六玉より4七玉と、逃げこまれないようにするのが先決。そこでこれを阻止する手として、まづ5四飛の発見はそんなに時間をとらない事でしょう。
さて、5四飛に対し同玉は、6四飛成・4三玉・5三龍まで。また同香は6五飛成の好手で、同玉・6六金までとなります。そこで5四同馬と取り、途中図です。

(途中図は5四同馬まで)
続第6回第7図途中図

ここで6六飛成は、4四玉・3四金・4五玉で馬の影にはいり込み、もう一押しの3三金の開き王手も、2三金と馬が素抜かれて失敗します。矢張り前記の6五飛成が、この局面での最善手です。こんど4四玉なら3四金まで、また同玉なら6六金まで。
玉方6五同馬の一手ですが、これで馬の効きが消えたので4五金が打て、以下5六玉、4六金の両王手で解決します。(詰上り図)

(詰上り図は4六金まで)
続第6回第7図詰上り図

第7図。5四飛・同馬・6五飛成・同馬・4五金・5六金・4六金まで、7手詰。



二枚飛の捨て方が参考になったことと思います。

(第8図)
続第6回第8図

第8図。『詰将棋パラダイス』(昭和45年6月号)・東京都の高校生新人小西真人氏の作品です。
持駒に歩のある作品は、思考範囲が狭くなるといわれています。たしかに歩は玉頭を叩く一手にしか使用できませんので、その分だけ紛れが少くなるからです。本局でもこの形では、初手に歩は打てませんので、飛打ちかと金による王手か、いづれかに限定されることになります。
飛を手放してしまっては、あとの楽しみがなくなりますので、と金による王手を考えるのが普通です。2一とが面白そうに思えますが、以下同玉・2二歩・3一玉・4一飛・2二玉・4二飛成・3二歩合で不詰です。また3二とは、同玉・4二飛・3三玉・3四歩・2四玉・4五飛成・3三歩合・2五龍・1三玉・1四龍・2二玉・3三歩成・同桂で以下詰みません。
さて、と金の王手がないとしますと飛打ちよりありませんが、二段目のどこに打つのが最善になるのでしょうか?3二飛は1三玉で参考図になり、これは打歩詰め形でどうにもなりません。

(参考図は1三玉まで)
続第6回第8図参考図

作者のねらいはこの点にあったわけです。そこで一旦5一馬の効き筋を消す4二飛の限定打が、歩詰回避の好手となります。もし3二に合いをすれば、こんどは同とと取って大丈夫です。
1三玉の逃げに1四歩と打ち、以下2四玉・4四飛成の両王手で詰上り図です。

(詰上り図は4四飛成まで)
続第6回第8図詰上り図

第8図。4二飛・1三玉・1四歩・2四玉・4四飛成まで、5手詰。



なお、4二飛に対し3三玉は、3二と・2四玉・4四飛成・1三玉・1四龍まで、7手で歩が余ります。したがって玉方最長手順という規定から考えますと、この方が正解ではとの疑念を抱くと思いますが、手駒が余らないように逃げる条件が優先しますので、この解答は不正解になってしまいます。初心者は解答を書く場合に注意して下さい。
歩詰回避の限定打と両王手をミックスさせた小品でした。


付録
――桂香両王手の元祖――
第3図の例題は、桂と香のコンビによる両王手の詰将棋でしたが、その元祖ともいうべき図式を紹介しましょう。

(第9図)
続第6回第9図

第9図。古作物です。江戸時代の詰将棋は駒数が多く、形も実戦型なのが特徴であり、本局など玉方の駒配りは実戦そのものです。
動けない玉とはいえ、要所に守備駒が配置されていますので、平易な順では詰まない筈です。香の効きが重いので、一枚は捨てること位、形から判りますが、そのタイミングがポイント、無雑作に桂が跳びだすと穴があいて、そこから逃げだされてしまいます。
このような場合には、まづ下辺から攻めて形を決めていくのが常道です。2二銀・同銀・5一角とたたみこんでいきます。ここ手順前後して先に5一角としますと、4二に合い駒をされ、2二銀なら同玉で、また4二同角成なら同銀・2二銀・3二玉でいづれも詰まなくなります。5一角・同金で途中図ですが5一を埋めておく効果は最終に現われます。

(途中図は5一同金まで)
続第6回第9図途中図

下辺の形が決まりましたので、こんどは上部より圧力をかけます。4五桂と跳んで香先きを軽くし、つぎの3二飛成の一手が、玉を桂・香の接点に誘い出す絶妙手なのです。両王手の筋が懸念されるときは、あらゆる手段を講じて、両駒の接点に呼び出すのが解法のコツです。
3二同玉に待望の4四桂の両王手が出現して、以下4二玉・3二香成までとなります。この時もし5一の点があいていますと、この穴より逃げ出されてしまいます。勿論角は手駒にあるわけですが、この持駒では詰ますことはできません。”宝の持腐れ”という格言は、こんなことを指していうのでしょう。序盤に捨てた角の効果を、よく味わって頂き度いものです。
第9図。2二銀・同銀・5一角・同金・4五桂・同銀・3二飛成・同玉・4四桂・4二玉・3二香成まで、11手詰。



両王手の意識が、すでに江戸時代より芽生えていたということは、まさに驚きです。なおこの古作物の出典は、五代、大橋宗桂の図式『象戯手鑑』の第36番といわれています。参考までにその作物と詰手順だけを掲載しておきますので、盤に並べて鑑賞して下さい。

(第10図)
続第6回第10図

第10図。『象戯手鑑』第36番。
8六金・同玉・7七銀・8五玉・8六銀・同玉・7八桂・8五玉・7七桂跳・7四玉・6六桂跳・6三玉・7二角成・同銀・5五桂・同金・6二飛成・同玉・5四桂・5一玉・6二香成まで、21手詰。



――・――・――
第2図宿題解答
3二飛成・1三玉・1四金・同玉・1二龍まで、5手詰。



まとめ
両王手の形
両王手は将棋独特の形で、実戦には殆ど現われません。それだけに、古来より両王手のねらいの詰将棋は多く創作されています。
同時に2方向から王手を掛けられますので、1方向は当然開き王手の形となります。玉方はこれに対し、合駒によって防ぐ手段はなく逃げるより方法がないのが特徴です。
両王手には、
㋑ 大駒のみによる両王手
㋺ 大駒と小駒による両王手
㋩ 小駒のみによる両王手
とがあり、更にいずれも
① 途中に両王手の形
② 最終に両王手の形
とに区分されます。
解法のコツは、両駒の効きの接点に、捨て駒によって玉を誘い出すことです。
                                ――両王手の項おわり――



第7図は「嬉遊曲」嬉第13番に収録されています。

第8図、現在では少なくとも短編において、2手長駒余りは認められないでしょうね。
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