続・詰将棋の能率的勉強法(5)(近代将棋昭和45年11月号)①

村山隆治氏の連載「続・詰将棋の能率的勉強法」、第5回の前半部分です。
両王手の形(その1)とタイトルの下にあります。
ツメキスト
数年前、若い者の間に爆発的人気を呼び、驚異的なベスト・セラーになった本に、『頭の体操』というユニークなパズル集がありました。
その著者、多湖輝先生は、まえがきで次のように書いて嘆いています。
――最近若い人たちの間で、脳動脈硬化症なる病気が蔓延している。脳ミソがコチコチになる病気だ。大学受験や、就職試験で、記憶力ばかりが発達し、奔放な空想力や、豊かな独創力がなくなったのが、原因かもしれない。
これは、ゆゆしき問題である。歴史を創っていくものは、常識や固定観念ではなく、むしろ、その枠を破っていく独創力なのだ。
そこで私は、この脳ミソがコチコチになった悲しむべき脳動脈硬化症患者を救う意味で、この本を書くことになった。――
これによると、近頃電車の中で、いい若い者がマンガの本をむさぼり読んでいるのも、これを治療するためかもしれませんが、どう見ても実に幼稚です。
わが党の愛読者達には、こんな予防医学はいりません。将棋パズルともいうべき詰将棋は、まさに脳の”コレステロール”を取り去る妙薬なのですから。
“若者よ!ツメキストたれ”
今月は、開き王手の特殊形である両王手について解説します。

8 両王手の形
2個の駒の効きにより、同時に実施される王手のことを両王手と呼んでいます。具体的にいえば、同時に2方向から王手を掛けられていることになりますから、玉方にとって一手で両方の王手を凌ぐには、”千手観音”の王様よりありません。したがって玉は逃げるほか手段がなく、合駒は用をなさないことになります。この形は実戦に現われることが少く、これも詰将棋独特の分野に属します。詰将棋作家なら誰でも魅力を感じる筋ですので、この種の作品は大変に多く発表されています。そして両王手の形は、
① 両王手の形が途中に現出する場合
② 両王手の形が最終の詰上りに現出する場合
との2つに区分ができます。
両王手の価値としては、詰上り両王手の方がいかにもハプニングであり、したがって鮮烈な印象を詰後感に与えるだけに、途中の両王手よりはるかに大きいと思います。
また両王手を掛ける使用駒によって、
㋑ 大駒のみによる両王手
㋺ 大駒と小駒による両王手
㋩ 小駒のみによる両王手
に分類ができます。
㋑は、飛・角の両駒から生じますが、㋩は香と他の小駒によって生じます。
① 途中に両王手の形

(第1図)
続第5回第1図

第1図。塚田正夫九段著『続・楽しい詰将棋手帖』の第36題です。
4三への逃げが見えすいていますので、初手の3三飛は当然の一手となります。3三飛・2一玉となって2二銀打ちが考えられますが、以下1二玉・2三飛成・同馬で逃れ筋です。ここ2三同馬でなく同玉なら、3三角成・1二玉・1一銀成・1三玉・1二成銀・同玉・2二馬で詰んでしまいます。実戦なら”トン死”というところでしょう。

(途中図は2二同玉まで)
続第5回第1図途中図

2二銀とせず、2二桂成・同玉(途中図)として、両王手の可能点に誘いだすのが急所となります。途中図で、開き王手か両王手かと迷うところですが、このような形における3一飛成という、両王手の呼吸をよく覚えて下さい。この巧手によって急転直下解決します。もし1三玉の逃げなら、2二銀・2四玉・3五龍まで。
第1図。3三飛・2一玉・2二桂成・同玉・3一飛成・同玉・2二銀・3二玉・3三角成まで、9手詰。



本局は大駒のみによる両王手の例題です。

(第2図)
続第5回第2図

第2図。内藤八段の作品です。
1五角が香の効きを中断していますが、1筋をにらんでいる1六香の存在は、一見して開き王手か、あるいは両王手のねらいを含みにもっていることは、すぐ気が付かれたことと思います。
1二金が面白そうな手に見えますが、検討してみましょう。即ち1二金・同玉・3三角成・1三合・2三金までと、早合点してはこまります。1三合をしないで1六角と香を抜かれてしまいますと、玉方の3一桂が2三の点を守っていますので、2二金としても1三玉で、つぎの2三馬ができず失敗に終わります。
初手3二金とするのが好着です。同玉なら4二角成・2二玉・3二金でオシマイ。そこで1三玉とおびき出されてしまいます。もし1二玉なら3三角成の開き王手で、2二馬の手が生じて詰みます。このように玉の背後から突っついて、正面におびき出す戦法を”キツツキ戦法”といって、これは「天と地と」ブームの川中島合戦で、信玄が計略した奇襲戦法なのです。3二金の”キツツキ戦法”に1三玉とおびき出されて途中図です。

(途中図は1三玉まで)
続第5回第2図途中図

ここで2四角の両王手が、詰方の香を取らせない唯一の手段であり解決します。
第2図。3二金・1三玉・2四角・同玉・1五金・1三玉・2五金まで、7手詰。



これは大駒と小駒による両王手の例題であり、超短編として仲々の好作です。とくに締めくくりの2五金寄りが、なんともいえぬトボケた味の好手と思います。

(第3図)
続第5回第3図

第3図。原田泰夫八段著『新しい詰将棋百題』の第17題です。
小駒のみによる両王手と、駒の打換えという2つの手筋をミックスした小品です。1五銀が金ならば、2五金の開き王手があるということに着目すれば、もう初手はお判りでしょう。香先を通す2四銀の両王手が軽手、宮本武蔵の二刀流のように、一度に両方から襲いかかられてはたまりません。鬼よりこわい両王手に遭遇して、2四同玉の一手に1五金と俗に打ち、1三玉と戻ったとき2五金と開く手が、第2図の収束と同じ味で詰上りになります。
第3図。2四銀・同玉・1五金・1三玉・2五金まで、5手詰。



これは小駒のみによる両王手の例題ですが、このような小駒だけの両王手は一度発表されてしまいますと、二番煎じは新鮮味が大変にとぼしくなってしまいます。ですから一つの手筋だけでまとめようとせずに、いくつかの手筋を複合することで、変わった味を生みだすように作家は心掛けるべきです。
本局は駒の打換え手筋をミックスさせて、面白味をだしています。

(第4図)
続第5回第4図

第4図。『詰将棋・二上達也作品集』の第68番です。
馬筋が重いとばかりに、いきなりの2三飛成ですと、以下同銀・2二銀・1二玉・2一角・同龍・同銀不成・同玉・2二飛・3一玉で失敗となります。なお2三飛成に同銀と取らず3一玉の逃げなら、詰みますから試して下さい。
初手の2三飛成は、ねらいとしては鋭いのですが、残念ながら1二玉という逃げが成立してダメでした。そこでこの逃げをあらかじめ封じておけばよいという考えのもとに、1二角が浮んでくることと思います。なぜ銀でなく角がよいかは、この詰将棋を解くねらいとして、ジャマな3三飛を消去し、2二銀打を常に頭に画いておく必要があるからです。
“香頭に手段あり”ともいうべき1二角打に対し、2二玉なら2三飛成の両王手で、以下3一玉・2二銀・4二玉・5三龍まで。また1二同香なら2三飛成・同銀・2二銀・3二玉・3三馬まで。更に1二同玉なら1三銀・2一玉・2三飛成・3一玉・2二銀成・4二玉・5三龍までとなります。かくて1二角に対しては、3一玉の逃げが最善です。そこで2つの接点に誘いだす2二銀捨てで、同玉となり途中1図です。

(途中1図は2二同玉まで)
続第5回第4図途中1図

この局面で両王手の開幕となるわけですが、どの両王手が正しいのでしょうか?
1三飛成と2三飛成と3二飛成の3方法がありますが、このうち1三飛成は同玉で、手段がつきますから、あとの2方法にしぼられてきます。2三飛成は3一玉・2一角成・同銀・同龍・同玉・2二銀・1二玉で、これもとどきません。このような結果で3二飛成が正着ですが、同玉となって途中2図となります。

(途中2図は3二同玉まで)
続第5回第4図途中2図

この局面になれば、あとは収束の運び方だけで、3三銀から2一角成と、初手に打った角を2段活用して見事に詰上ります。
第4図。1二角・3一玉・2二銀・同玉・3二飛成・同玉・3三銀・3一玉・2一角成・同玉・2二銀成まで、11手詰。



詰後感のよい好作品と思います。
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