続・詰将棋の能率的勉強法(3)(近代将棋昭和45年9月号)②

村山隆治氏の連載「続・詰将棋の能率的勉強法」、第3回の後半部分です。
(第6図)
続第3回第6図

第6図。内藤国雄八段の作品です。
飛筋が重いので、馬の移動による開き王手のねらいであることは、形から見てすぐに判ることでしょう。玉の右辺への逃げを封じる意味で、6三馬が有力に映りますが、8三歩合とされ銀一枚では続きません。矢張り合い効かずをねらう9四馬が正着です。
もし7一玉と逃げれば、どうやって詰ますか考えて下さい。頭銀を読んだ人は落第。8一飛成の手が映った人は、多少コツのわかりかけた点を認めて及第。直感で8二飛成をピタリと当てた人は、優等生です。この好手で以下、同玉・8三銀・8一玉・7二銀不成・9二玉・8三馬まで、きれいに詰みます。また7一玉でなく8五合いでも、8三銀で同じ順にて詰みます。

(途中図は8五桂トビまで)
続第3回第6図途中図

7一玉の変化が、いかにも本手順のようにカン違いしてしそうです。ところが玉方にはこの時点で、8五桂ハネという天狗飛び切りの鬼手があります。(途中図)この移動合駒によって、玉は広々としてきます。こんどは8三銀と打っても、7三玉で遁走されてしまいます。そこで8五同飛と取り、この飛車をすてて7四桂と攻めの拠点を築き、馬の活用で解決します。
第6図。9四馬・8五桂トビ・同飛・7一玉・8二飛成・同玉・7四桂・7三玉・8四銀・7四玉・8三馬まで11手詰。



なお、4手目7一玉のところ7三玉は、8四馬・7二玉・7三銀以下容易に詰みます。
玉を窮屈にしている7三桂のカラハネの巧手が、いかにも気持ちのよい捨て駒でした。

(第7図)
続第3回第7図

第7図。『週刊文春』昭和37・5・14号二上八段の作品です。
不動玉の攻め方は、捨て駒によって玉の逃げを封鎖しながら、搦め手からの突破口を造りだすことです。飛の活用を計る5三金捨てから4一飛成の順は、すぐに映ることでしょう。4二の点に合駒をしたのでは、3二銀不成の一発でオシマイですので、玉の逃げ道を開く4二銀引は当然の応手、何の変哲もありません。これで途中図です。

(途中図は4二銀引まで)
続第3回第7図途中図

この局面で、3三金の焦点打はもう常識の手筋になったはず。この手で弱った人は、いま一度ふり出しに戻って復習して下さい。
第7図。5三金・同金・4一飛成・4二銀引3三金・同馬・3二銀不成・同馬・3四金まで、9手詰。



玉の逃げ道を開く目的の移動合駒は、本局のように必然性のものから、更に発展して意外性のものまで、その種類は頗る多いのですが、よりハプニングの方が詰将棋という感を深くします。
③ 駒の損失を防ぎ守備に活用する目的

(第8図)
続第3回第8図

第8図。二上八段の詰将棋です。
初手の3四馬は、取ってもまた合駒をしても簡単なので、すぐに浮んだことでしょう。実戦心理では、2三銀と打込むところでしょうが、1三玉で逃れ筋になります。
3四馬・1三玉と舞台はかわって、2二銀で同飛の一手、そこで3五馬と執拗に迫って途中図となります。

(途中図は3五馬まで)
続第3回第8図途中図

この局面で2四に飛以外の合駒をすると、2五桂・1二玉・2二とまで飛が取られた上に詰んでしまうし、また2四飛合とすれば2五桂・1二玉・3四馬・同飛・2二とで矢張り飛が余って詰みます。
この際、2四飛と上って移動合いをするのが、駒の損失を防ぐ意味から考えても、また詰上りに駒を余らさないという規定にのっとっても正しい応手なのです。
第8図。3四馬・1三玉・2二銀・同飛・3五馬・2四飛上・2五桂・1二玉・3四馬・同飛・2二とまで、11手詰。



(第9図)
続第3回第9図

第9図。銀がぶらついているので、これに連絡をつける攻めでないと成功しません。それには玉の両腹から打診する金打ちと、離し香しか手段はありませんが、1七金の平凡手は、3六玉・3九香・3七桂合・同香・同馬・同龍・4五玉で失敗です。また2九香は、同馬なら3七龍・1八玉・1七龍までで、うまいのですが、2八歩合で入玉されてしまいます。残された3七金は同馬の一手ですが、素直に同龍と取っては1八玉でダメ、この形にしておいての2九香が味のよい手で、途中図となります。

(途中図は2九香まで)
続第3回第9図途中図

この局面で2八合いは3七龍で簡単(馬を呼戻した効果テキ面です)。また、上部への逃げも不可能となっています。これで窮したかに見えますが、玉方に2八馬というカンフル注射のような素晴らしい移動合いの妙防があります。どうせ取られる馬ならばというような、最後っぺ的一手ですが、どうして見事な好手であり、すこしもムダのない駒さばきには驚きです。
2八同香も同龍も、玉方の思うツボとなりますが、3七龍から1七龍の活躍で香筋を通して解決します。
第9図。3七金・同馬・2九香・2八馬・3七龍・1六玉・1七龍・同馬・2五銀まで、9手詰。




付録 合効かずの形
これまでの解説では、詰方の飛・角・香による王手に対し、玉方も何らかの形で合駒することが可能でした。ところが合駒をした途端に詰んでしまうから、したがって合駒ができず、玉は逃げるより手段がない特別な形があります。これを”合効かずの形”として付録にしました。

(第10図)
続第3回第10図

第10図。京都市の田代達生氏が『詰将棋パラダイス』に発表した作品です。
初手2四飛で簡単に寄りそうに見えます。しかし2二歩合とされると、1四馬のにらみで詰みません。この歩合をはばむために初手2二金と捨て、玉を一間誘いだしての2四飛が巧妙な一手なのです。(途中図)

(途中図は2四飛まで)
続第3回第10図途中図

途中図で玉方の応手は、3一玉と逃げだすか、2三に合駒するか、それとも同馬と取るかの3通りです。3一玉は2一飛打・4二玉・5二金まで。2三合は何を打っても3二金の一発ですので、合駒無用となり”合効かずの形”であることが判ります。かくて2四同馬が最善ですが、2一飛と玉を引き戻して(退路牽制手段)解決します。
第10図。2二金・同玉・2四飛・同馬・2一飛・同玉・3二金まで、7手詰。



2二金と捨てての2四飛が、いかにも新鮮で超短編の佳品と思います。
なお、4手目2四同馬のところ、3一玉と逃げても7手詰ですが、この変化は単なる駒の並べ詰みですので、このような場合には妙手の多い前記手順を正解とするのが、作者に対するエチケットです。

(第11図)
続第3回第11図

第11図。『毎日新聞』昭和43・9・14掲載の大山王将出題になる詰将棋です。
目に映る4四金は、2三玉で以下2五龍・2四金合にて失敗します。このような形には逃路先着の術の忍法により、2三銀の焦点打が穴場になります。これに対し同銀・同香いづれも4四金・2四玉・1三銀で詰みますので、同玉の一手です。そこで2五龍と廻って途中図となります。

(途中図は2五龍まで)
続第3回第11図途中図

この途中図の形が”合効かずの形”であることは、もうおわかりですネ。そうです。2四に合駒をすれば1三金打の一発です。かくて1二玉の逃げに、2二金と穴ふさぎの捨駒をし、1三銀捨ての軽手で詰上ります。
第11図。2三銀・同玉・2五龍・1二玉・2二金・同香・1三銀・同玉・1四龍まで、9手詰。



これも仲々の好短編でした。なお、5手目2二金のところ1三金としますと以下、同玉・2二銀・1二玉で失敗しますので、キメ細かい注意力が必要です。

まとめ
合駒の形
合駒は、それぞれの形態によって3種類に分類される。
A 直接合駒
B 間接合駒(中合い)
C 移動合駒
このいづれの場合の形態にも、
① 詰方に取られる合駒
② 詰方に取られずに残る合駒
とに、区分される。
○ 合駒の目的
Aの場合――守備駒の増加
Bの場合――歩詰誘致・守備駒の増加・および逃げの併用
Cの場合――歩詰誘致・逃げの併用・および駒の損失回避
○ 合駒の選定法
1 合駒が取られる場合には、最も使用に不便な駒を選ぶ。
2 合駒が取られずに残る場合には、最も働きの大きい駒を選ぶ。
以上を要約すれば、いづれの場合でも、詰手数が最も長くなるような合駒を選定すればよいことになります。
○ 合効かずの形
合駒の形における特殊形で、愛(合い)することのできぬ異常図式。
合いができないので、玉は逃げるより方法がなく、合駒の形より比較すれば全くの単純形です。
                             ――合駒の項おわり――
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