続・詰将棋の能率的勉強法(3)(近代将棋昭和45年9月号)①

村山隆治氏の連載「続・詰将棋の能率的勉強法」、第3回の前半部分です。
合駒の形(その3)とタイトルの下にあります。
合駒の昇華
合駒について、これまでに”直接合駒”と”間接合駒(中合い)”の形を勉強してきました。そしていずれにもいえることは、この種の合駒の選定に当っては、詰手順が最もながくなるような駒を選ぶことが、大切であるということを学びとったはずです。
ところがこれから学習しようとする合駒は駒の選定を必要とせず、盤面駒の移動によって、詰方の飛・角・香による飛び駒の効きを中断する、いわば”合駒の昇華”ともいうべき形なのです。そしてこの種の合駒のことを残り駒を選んで打つ一般合駒と区別して、”移動合駒”としました。
なおジャマ駒のある形で、詰方のジャマ駒の処理方法を解説しましたが、ジャマ駒は玉方にも存在することがあります。その駒があるために、詰方の打歩詰を誘致することができないという場合と、玉の逃げ道をあけることができないという場合とです。これらは特殊なケースとして、玉方の不要駒のある形として扱うところかも知れませんが、これらはすべて移動合駒の形となって現われます。したがって本章で説明することにしました。
C 移動合駒の形
移動合駒の目的は、
① 打歩詰を誘致する
② 玉の逃げ道をあける
③ 駒の損失を防ぎ守備に活用
の3項目です。このうち最も高級な手筋は、①の打歩詰を誘致するものであり、以下②そして③の順になります。
① 打歩詰を誘致する目的

(第1図)
続第3回第1図

第1図。自作の趣向詰です。2四の歩突きが目に映りますが、以下3三玉・3四歩・4三玉となり、ここで一歩あれば4四歩と打って同馬と取らせ、4二銀成までで詰みます。しかしこの一歩がありませんので、初手6七馬と歩を取るのは当然ですが、次の玉方の応手がまことに奇妙なので面白いと思います。
ここで4五に何を合駒しても、前記手順で詰んでしまいます。それというのも玉方の5五馬が4四の点に効いていますので、詰方の4四歩打が可能になるからです。この馬筋が消えれば、打歩詰の禁手で不詰となります。そこで詰方の6七馬に対し、5六馬と移動して合駒に活用するのが、まことに絶妙な手段といえましょう。この5六馬の移動合いに対し、直ちに2四歩としますと、以下3三玉・3四歩・4三玉(参考図)で打歩詰局となって失敗します。

(参考図は4三玉まで)
続第3回第1図参考図

この種の移動合駒はまことに珍らしく、その数はいたって僅少のようです。
第1図。6七馬・5六馬・同馬・同金・3四角・3三玉・4三角成・同玉・4四歩・3三玉・3四歩・2三玉・2四歩まで、13手詰。



角を歩に変える3四角から4三角成の手筋は、”価値交換の形”で紹介した第2図と同じねらいです。

(第2図)
続第3回第2図

第2図。5二香・4一玉・3二角・3一玉・2一角成・同玉・2二香・3一玉・3二香・4一玉・4二香まで、11手詰。



4本の香を5本に変える手筋でした。

(第3図)
続第3回第3図

第3図。看寿の『将棋図巧』第20番図式です。詰方の妙手よりも、受けの妙手を中心とした構想形の異色作品でもありますから、盤に並べて鑑賞して下さい。
2三歩成・4三玉・4四銀・3四玉・5五桂・7八馬で途中1図となります。

(途中1図は7八馬まで)
続第3回第3図途中1図

さあ、なぜ7八馬と寄るのでしょう?その前に7八馬のところ、7八合をしますと以下、3五歩・同馬・3三銀成・同龍・同と・同玉・2三成香・3四玉・3三飛までとなって簡単に詰みます。したがって詰方が5手目に、5五桂と歩を取って開き王手をした時、玉方の6八馬が3五の点に効いていて、詰方の歩打を可能にしているのを避け、7八馬と寄り捨てる珍手が、打歩詰を誘致する目的をもった移動合駒なのです。
途中2図で7八同馬と取りますと5六歩合となり、以下2四と・同玉・6八馬・5七桂合・同馬・同歩成で、角・桂・歩の持駒があっても詰みません。取れる馬を取らずに、2四と・同玉と誘い、7九馬と寄ってあくまで3五歩打の筋の打開を計るのが、うまい攻めで、途中2図となります。

(途中2図は7九馬まで)
続第3回第3図途中2図

こんどは逆に詰方の馬を取らざるを得ないハメになり、7八馬寄り妙着もご破算とはまさに虚々実々のかけ引きで、実に面白い応酬です。これで3五歩打が可能になり、上部脱出の穴をふさいで龍を入手し、以下は平凡なフィナーレとなります。
第3図。2三歩成・4三玉・4四銀・3四玉・5五桂・7八馬・2四と・同玉・7九馬・同馬・2三成香・3四玉・3五歩・同馬・3三銀成・同龍・同成香・同玉・4三桂成・同桂・2三飛・4二玉・4三香成・①5一玉・5二歩成・同金・同成香・同玉・6四桂・6二玉・5二金・7一玉・7三飛成・8一玉・7二桂成・9一玉・8二成桂まで、37手詰。
変化① 3一玉なら3三飛成・2一玉・3一龍・同玉・2三桂・2一玉・1一桂成・同玉・1二飛・2一玉・2二飛成まで35手。



『図巧』中でも異彩を放つ、まことに印象深い卓絶な作品です。
② 玉の逃げ道をあける目的
移動合駒の大部分が、この目的によるものであって、その例は多い。

(第4図)
続第3回第4図

第4図。逃げ道のある形の詰将棋です。したがって、右から攻めては、それこそ”追う手”えたりと逃げられてしまいます。
2三歩の押さえ駒がありますので、玉の脱出を左方からの飛打ちで封鎖することは、形を一瞥すれば判る筈です。ただ、どこに飛を打つかが思案のしどころ”三手の読み”が要求されます。飛車の打つ位置の選定をあやまると、不詰となってしまうケースはよくあることです。
攻めの継続を考えて、5一飛が正着。何を合いしても2二金の一発なので、抜け穴を開ける4一金引が巧妙な移動合駒となります。(途中図参照)

(途中図は4一金引まで)
続第3回第4図途中図

途中図以下は、2二銀から5二金捨てで、飛の横効きを通して解決します。
第4図。5一飛・4一金引・2二銀・4二玉・5二金・同金・3一飛成まで、7手詰。



逃げ道をつくりながらの移動合い、そうなりますと左から無造作に飛打ちなどと軽く考えては失敗のもと、飛車の位置が5一の点でなければ成功しないことが判ります。

(第5図)
続第3回第5図

第5図。『新選詰将棋』清水孝晏四段著の中の一局です。
現局面から3二玉と逃がしては、飛と桂の持駒しかありませんので、詰みがなくなるのは明らかでしょう。したがって、いきなり5四桂と追うのは異筋です。
それならば5四桂・3二玉となった局面を観察し、どんな形になっていたら寄せやすいのか、その辺を推理するのも上達には欠かせないコツというものです。

(仮想図)
続第3回第5図仮想図

仮想図だったらどうでしょう。4一馬で簡単です。ではこの形にもっていくにはどんな手が?初手2二飛という可能性ある手が浮んできます。このように水平思考していけば、詰筋の発見も容易となります。
さあ、2二飛打に対して最善の応手が、すぐにひらめきますか?2二同銀なら全く仮想図と同じ、また3二に何を合駒しても、5四桂・5一玉・6二馬まででオシマイです。そこで玉の退路を開きながら、スッと立った3二銀の移動合いが、まさにピッタリ間にあっています。

(途中図は4一馬まで)
続第3回第5図途中図

ここで、じっくりと腰を落とし、5四桂から4一馬の英断で途中図ですが、2二玉と飛を取って逃げれば、2三金の急所打ちでダウンさせてしまいます。収束は打った桂馬が更に活用されて、頭金までです。
第5図。2二飛3二銀上・5四桂・3一玉・4一馬・同銀・4二桂成・同銀・3二金まで、9手詰。



短編に移動合いを挿入した佳品でした。
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