続・詰将棋の能率的勉強法(2)(近代将棋昭和45年8月号)②

村山隆治氏の連載「続・詰将棋の能率的勉強法」、第2回の後半部分です。
② 詰方に取られずに残る中合い駒
取られずに残る場合には、その守備力を二段活用するのが常識になっていますので、局面に応じて最適の駒を合いに使用することが肝要です。したがって最も価値のある大駒を使用するとは限りません。

(第4図)
続第2回第4図

第4図。大道詰将棋によく提出される「香歩問題」の基本図です。
香打ちで簡単と考えるご仁は、飛び駒の利害と、それを逆用する中合いの妙策を知らない初心者です。
槍(香車)は手許に引いて使えと言う言葉は、槍術の極意です。そこで2九香と打ってみましょう。香の働きを百%発揮した手ですが、この状態になってもまだ玉方には工夫の余地が残されていますから、将棋とはまことに変幻自在なものです。その中合いの妙着は、2三銀合という奇手であり、無雑作に同香不成と取れば、1二玉と槍の手許に飛び込まれて脱出されます。それなら何の駒を合いしても同じような結果になると思われますが、なぜ銀合いが正着なのでしょうか?(途中図)

(途中図は2三銀合まで)
続第2回第4図途中図

取られない合駒ときまれば、価値のより大きい駒がよいことになりますが、それなら金ではどうなるのか、進めてみましょう。
2三金合・2二歩・1一歩・1二歩・同玉・2三金以下容易です。4手目の1二歩に対し同xと取れるx駒となれば、角か銀しかありませんが、角と銀との守備力を比較したとき、この局面では銀の方が受けに強力なことが判ります。
第4図。2九香・2三銀合・2二歩・1一玉・1二歩・同銀・2一歩成・同銀・1二歩・同玉・2三金・1一玉・1二歩・同銀・2二金まで、15手詰。



まさに『将棋は歩から』という感を深くする大道棋、なお初手は2四香とすべきでしたが、香の効果を考えて2九香としました。
9手目1二歩打のところ、2一同香成という手もチラつきますが、これは同玉でも、また1二玉と逃げられても詰みません。

(第5図)
続第2回第5図

第5図。『二上達也作品集』の第24番図式です。
中合いの詰将棋では、その中合い駒を何の前提工作もなくすぐに取り払っては、大体中合いの術中に陥いると思って差支えありませんが、この中合い駒が最後まで残るケースはまことに少いようです。
駒の配置からも判りますように、盤上駒を活用しての王手はありません。とすれば香打ちよりないわけですが、これに対して飛の中合いが正しい応手であり、これは第3図で学んだ棋術の応用といえます。すなわち、4四香・4三飛合で途中図となります。

(途中図は4三飛合まで)
続第2回第5図途中図

飛か金以外の合駒では、4二馬という豪快な手があって容易に詰みますが、この手筋は前記第3図で学習済みです。
4三金合ならどうでしょう。以下、3二馬・5一玉(ここ3二同香は4三龍・3一玉・4一龍まで、また3二同玉は4三香成・2一玉・1一金まで)・4一馬・同玉・4三龍・5一玉・4二龍までで、駒余り詰め。この変化で、玉方が4三飛と中合いした理由が判ります。すなわち4一馬のとき、同飛と取る手が成り立つからです。これは冒頭で述べた守備力の二段活用であり、したがって玉方にとって最善の合駒と断定することができます。
途中図でのつぎの一手は、3二馬ですが、そのねらいは変化で書いた通りで、5一玉の逃げを見越した巧い手、そして更に4二馬と連続ワザを掛けるに至って、まさに絶頂に達します。やがてフィナーレとなり終曲(局)です。
第5図。4四香・4三飛合3二馬・5一玉・4二馬・同飛・5三龍・5二飛寄・4二香成まで、9手詰。



なお、途中図で直ちに4二馬では、玉が4一の形だけに同飛と取られ、以下同香成・同玉・4四飛・3二玉で失敗します。また5手目4二馬のところ4一馬では、同飛・5三龍・5二金合・4一香成・同玉で、4二飛が打てず、これまた失敗です。
4二馬の捨ては光彩を放つ一手であり、技巧卓絶の佳品と思います。

(第6図)
続第2回第6図

第6図。『近代将棋』昭和44年10月号・新潟県・OT・松田氏の作品です。
戦列より遠く離れている龍と飛が、なにやらうす気味悪い存在ですが、どちらも十字飛車の攻めと守りを秘めていることは確実。また詰方の7一銀は、早晩玉が9二の点に落ち込んできたときに、2二飛成の合い効かずの筋を暗示させています。
9九飛に触手が動きますが、9八歩合とされて入玉行進曲ですので、初手8六金と平凡に寄り、9四玉と上がって途中1図になります。

(途中1図は9四玉まで)
続第2回第6図途中1図

ここで更に8五金と追撃しては、9三玉・9四歩・9二玉・2二飛成・3二歩合で息が切れてしまいます。とに角、敵龍の効きが素晴しいので、なんとか一方の効きだけでも消すことが先決になります。
金立ちがなければ角を打っての王手よりありませんが、果してどこに打つのが正しいのでしょうか?正解は5八角です。というのは、この一手により龍の横効きが中断され、攻めの9九飛廻りを可能にするからです。したがって5八角に対して、合いすることはできません。
5八同龍と取らせ、この点に誘いだしておく含みは以下、8五金・9三玉のときに5七角と再度遠角を放って、敵龍の二段目効きを中断させる深慮遠謀があったからです。途中2図をよく観察して下さい。

(途中2図は5七角まで)
続第2回第6図途中2図

このように龍の効き筋に捨てる遠角限定打の構想は、『将棋図巧』その他古作にもありますが、短編でしかもこのような簡潔な形で表現したのは、まことに珍らしいことです。
さて5七角に対し同龍では、詰方の香が効き筋を中断していますので9九飛の一発。また9二玉では2二飛成で簡単となれば、玉方これで万策つきたかに見えます。ところがもし5七角が移動できれば龍筋が通り、したがって詰まなくなる筈です。そしてその目的を達成する中合いの手段がまだ残されています。常に9四歩・9二玉・2二飛成の手をねらわれていますので、このねらいをも同時に防ぐ中合いでなくてはなりません。それが絶妙な応手、6六角の中合い形として出現します。(途中3図参照)

(途中3図は6六角合まで)
続第2回第6図途中3図

勿論、この中合いを同角と取れば玉方の思うツボ、9二玉で失敗です。途中3図以下は9四歩と打ち、9二玉の逃げに2二飛成として同角と取らせ、自角の効きを玉頭に通して収束に至ります。
第6図。8六金・9四玉・5八角・同龍・8五金・9三玉・5七角6六角合・9四歩・9二玉・2二飛成・同角・9三角成・8一玉・8二馬まで、15手詰。



本作品は、第34期の塚田賞(短編)を文句なしに獲得した傑作であり、”看寿の再来”と賞せられたものです。
                                         ――以下次号――



次回の更新は「詰将棋パラダイス2014年8月号 ちょっとした感想」を予定しています。
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