続・詰将棋の能率的勉強法(2)(近代将棋昭和45年8月号)①

村山隆治氏の連載「続・詰将棋の能率的勉強法」、第2回の前半部分です。
合駒の形(その2)とタイトルの下にあります。
“中合いの妙味”
前回に書きました直接合駒の形は、取る取られぬは別として、常に玉方の駒の効く点に打たれましたが、これから解説していく間接合駒の形は、玉方の駒が効いている点には合駒が打たれず、全然何の連絡もない中間点に打たれる合駒のことで、一般には”中合い”と称しています。
大道詰将棋の殆どがこの中合いの形で、世の天狗連をよいカモにしていますが、それ程に妙味ある落とし穴を多く含んでいるのが特徴です。
B 間接合駒(中合い)の形
詰方の飛び駒による王手には、玉方にも合駒という受けの余地があることは、すでに述べた通りですが、ここで飛び駒の性格について説明しておきましょう。
飛び駒の利点、それは離れた点から相手を襲う性能が示すように、距離に比例して大きくその働きが変わることです。したがって離して使用するのが常識となっていますが、詰将棋ではしばしば短く使う手法が高級手筋として、採用されています。
ところで逆に飛び駒に対する玉方から見ると、離れた飛び駒にねらわれる程危険千万なことはありません。そこで飛び駒は手許に呼び寄せよ、これが飛び駒に対する心得になる訳で、実戦でも大いに活用されています。
さて、この飛び駒の働きの泣きどころを応用したのが、これから説明する中合いの詰将棋なのです。
① 詰方に取られる中合い駒

(第1図)
続第2回第1図

第1図。『近代将棋』昭和43年9月号、愛知県、駒三十九氏の作品です。
形を観察してみましょう。要所を銀、桂、と、が堅めていますので、逃げ道のある玉ではありませんが、飛の持駒だけでは駒不足であることがわかります。詰方の5八馬はどうやら開き王手をねらっているようですが、ウカツに桂がはねては敵歩に喰われます。したがって開き王手をするときは、詰む前提が必要となります。
一瞬目に映る5七馬は、1四玉で敵馬の守りが固くてダメ。とに角、飛を打つ王手よりありませんが、単に2五飛では1四玉でこれまた指し切りです。持駒の補充を計るために2九飛と打ってみましょう。これに対し1四玉なら、2五銀、1五玉、5九馬まで。また2五に何を合駒しても、同銀、1五玉、4八馬で詰んでしまいます。逃げもできず、合いもできず、これで玉方手段に窮したかに見えますが、前もって2六の点を空地にせずに、何等かの駒で埋めておけば、4八馬の王手が不可能になることが判ります。このねらいに立脚した防御手段が、初手の2九飛に2六○合という形になって現出します。これが中合いです。
なおここで、解答者のエチケットを申し添えておきます。それは飛び駒を離して打つ場合に、詰将棋ではその目的を達成するのに必要とする点のうち、最も玉に近い点に打つことが常識となっています。したがってここでは2七飛が正しい位置になります。懸賞問題で解答を書く場合には、2八飛あるいは2九飛と書いても、勿論不正解にはなりません。

(途中1図は2六○合まで)
続第2回第1図途中1図

さて、2七飛、2六○合で途中1図です。取られてしまう中合いですので、価値の一番低い駒でよいわけです。したがって桂、香のいづれかになりますが、まづ香を合いしてみます。以下同飛・1四玉・3五桂・5八歩成・1五香・同馬・2三飛成まで、歩が余りますので、○は桂と決定します。すなわち2六桂合とし同飛・1四玉で途中2図です。

(途中2図は1四玉まで)
続第2回第1図途中2図

この局面では、玉が上手に死角に逃げ込んだように思われます。なぜなら、3五桂と開き王手をしても、5八歩成・2三飛成・同馬・2六桂・2四玉で3四とができずに不詰、また2五銀は1五玉・1六飛・2五玉で切れてしまいます。
さあ、こんどは詰方が手段に窮したようです。もう一度現局面をよく凝視してみましょう。何かジャマ駒がありませんか?
そうです。今進んだばかりの飛がジャマで桂打ちを阻んでいるのです。”ジャマ駒のある形”で学んだ忍法、『原型不変、消去の原則』にのっとり、2四飛と焦点に捨てる手が至妙なキメ手となり解決します。
第1図。2七飛・2六桂合・同飛・1四玉・2四飛・同歩・3五桂・5八歩成・2六桂まで、9手詰。



なお、2四飛に対し同馬は2六桂まで、また同玉は5七馬・1四玉・2六桂まで。いづれの場合も飛のいなくなった点の桂打ちが、命取りになっています。
短編に中合いの妙味を挿入した佳品です。

(第2図)
続第2回第2図

第2図。自作『詰将棋流鏑馬』の第19番です。
詰方の3三歩が玉のコビンをにらんでいますので、平凡に5一飛成とすれば、実戦なら相手が投げることでしょう。それもその筈で、3一合では何でも同龍と切られて頭金です。また1二玉と逃げれば、6二龍と質駒の金を取って2枚の金を手駒に持ちますので、2二に何を合駒をしても同龍と切って、2枚金の並べ詰みです。
玉方の手段はこれ以外にないでしょうか。1二玉の逃げに、もし質駒の金が取られないならば、駒不足で詰まないことが判ります。それには危険でも龍を誘い込んで、質金から離すよりありません。具体的には4一○合と中合いをするのですが、果して何の駒が最善なのか考えて下さい。合駒の原則論より判断すれば、容易に気がつく筈です。途中1図を見て、5分で決定できれば合格とします。

(途中1図は4一○合まで)
続第2回第2図途中1図

4一には何を合駒しても取られてしまいますから、金気の合駒は無用なことがわかります。残ったものは角桂香しかありませんが、この局面では角も銀と同じような働きがありましたので、桂と香にしぼられてきます。
まず香合いは以下、同龍・1二玉・1一金・2二玉・3二龍・1一玉・1二香まで、平易な順で詰んでしまいますので、詰将棋としての価値がありません。かくて最善の合駒は桂と決定、これを同龍と取り1二玉の逃げで途中2図となります。

(途中2図は1二玉まで)
続第2回第2図途中2図

玉方の巧妙な中合いで、こんどは詰方のピンチです。1一金は2二玉で3二歩成が飛の効きで不可能、また3二龍は2二合でこれまた失敗となります。ここで思考をはづませると、もし2三の点が空所なら、2二合でも2三金が打てて詰むことが判ります。かくして途中2図で2四桂という軽手が発見できるでしょう。この一手により見事に功を奏しピンチを脱して、解決します。
第2図。5一飛成・4一桂合・同龍・1二玉・2四桂・同飛・1一金・2二玉・3二歩成まで、9手詰。



玉方の危機を脱する4一桂の中合い捨て、これに対しこの取った桂で、2四桂という突破口を開く詰方の好手、まさに虚々実々の応酬でした。

(第3図)
続第2回第3図

第3図。なんといっても虚々実々の典型詰将棋は、ご存じ、大道棋です。一間しごく簡単に詰むように見せかけて、その影に妖気を漂よわせているのが特徴です。
本局でも9六金・8四玉・8七香で、玉方は直接合駒ができず、簡単に終わりという錯覚に落ち込むのが普通です。それがまた大道棋屋のねらいでもあります。
ここに至って、いかにも情ない渋面をつくり、やおら飛車を駒箱より摘み上げます。おやおや、どこに打つのだろうと、いぶかしい顔で見ていると、ピタリ8六飛と中合いをぶちかまされ、アッとお客は声をあげます。

(途中1図は8六飛合まで)
続第2回第3図途中1図

途中1図を見て下さい。こんな鬼手が出没しますので、大道棋にはウッカリと手がだせないのです。なぜ飛の中合いをするのか、不思議に思われる読者のために詳解します。
価値の低い駒ならそれ程ショックを受けないのですが、とにも角にも王より大事な駒をタダで呉れるというのですから、まさに青天の霹靂です。人間心理の機微を衝く魔手と思います。ここで猪突型の棋客は、飛車を貰えばなんとかなるとばかりに、スンナリ8六同香とパクつくが、軽く7五玉と肩すかしをくってギャフンとなります。(参考図)

(参考図は7五玉まで)
続第2回第3図参考図

8五の点に効く駒を合駒に使用しないと、8五金という好手で以下、同玉・8六馬・8四玉・8五馬まで簡単に詰みます。そこで合駒の範囲は、金か飛に限定されますが、金合いですと矢張り8五金と捨て、同金・同香・同玉・8六金・8四玉・8五香で詰みです。その結果として飛が最善の合駒になるわけです。
途中1図以下、8五金・同飛・同香・同玉・8六飛・7五玉・5六飛・8四玉・8七香にて途中2図となります。

(途中2図は8七香まで)
続第2回第3図途中2図

この局面でまた合駒の形ですが、こんどは8六に中合いはできません。なぜなら同飛と取られ、7五玉・5六飛・8六合・同馬・8四玉・8五馬までとなるからです。
さて8五の合駒は、角か桂しかありませんが、桂合いなら同香・同玉・8六馬・8四玉・7六桂までとなりますから、角合いが正しいことになります。以下、8五同香・同玉・8六馬・8四玉で5七角と打ちます。(途中3図)

(途中3図は5七角まで)
続第2回第3図途中3図

これでやっと収束近くになったわけです。同じようでも6二角では、7三香合とされ同角成・同桂で、この飛んだ桂が8五に効いてきてトンダ失敗となりますから油断禁物。5七角に対して7五桂合としますが、同角と取り同歩・5四飛・7四合・9六桂で見事に終結です。なお7五香合でも、同じような手順で詰みますので正解となります。
第3図。9六金・8四玉・8七香・8六飛合8五金・同飛・同香・同玉・8六飛・7五玉・5六飛・8四玉・8七香・8五角合・同香・同玉・8六馬・8四玉・5七角・7五桂合・同角・同歩・5四飛・7四合・9六桂まで、25手詰。





第1図、駒三十九氏の作品は「からくり箱」第31番に収録されています。
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