続・詰将棋の能率的勉強法(1)(近代将棋昭和45年7月号)②

村山隆治氏の連載「続・詰将棋の能率的勉強法」、第1回の後半部分です。
(第4図)
続第1回第4図

第4図。塚田九段作『近代将棋』昭和43年3月号の巻頭詰将棋です。
合駒は最初のうちに現われるとは限りません。後半にでる例題を紹介しましょう。ヒントとしては、1一玉と逃げた形の場合に詰む攻めでないと、成功しないということです。
持駒に桂があるときは、まづ桂打ちを考えよとは詰将棋を解く秘訣ですが、そうばかりとは限りません。なぜなら初手1四桂は1一玉で、ヒントに造反することになります。
詰方の3四飛にヒモをつける3二飛打が正着、ここ4二飛が実戦的な手ですが、以下2三玉・3二飛左成・1三玉で打歩詰となって失敗します。なお2三玉とせず1三玉なら1四歩・2三玉・3二飛左成までで詰みます。正着の3二飛打でも2三玉と応じますが、1五桂という巧い手があって攻めが続きます。もし1三玉と逃げれば1二飛成・同玉・3二飛成で簡単、そこで1五同香と取る一手です。この手は玉の退路を封鎖する目的を持っています。なぜかはあとで判明します。ここで2四歩と打ち1四玉・1二飛成で途中図となります。なお1四玉のところ1三玉では、3三飛成・同桂・同飛成・1二玉・2三歩成・1一玉・2二龍まで。

(途中図は1二飛成まで)
続第1回第4図途中図

途中図まできてやっと合駒の局面が現出しますが、着手から数えて8手目です。さて1三に打つ合駒は、横に効くものでないと2三龍の一発で終わりですので、金と決定しますが、2三歩成の開き王手から龍を切って詰上ります。
第4図。3二飛打・2三玉・1五桂・同香・2四歩・1四玉・1二飛成・1三金合・2三歩成・3四銀・1三龍・同桂・2四金まで13手詰。



穴ふさぎの手筋、合駒の手筋がミックスされ、紛れの中に打歩詰の形を挿入した作品でしたが、このように複雑化されていくのが短編詰将棋の宿命ともいえるのです。
② 詰方に取られずに残る合駒
実戦将棋あるいは大道詰将棋なら相手がありますので、飛び道具で王手をしても、玉を逃げるかそれとも何か合駒をして凌ぐかは相手が決めて呉れます。ところが一般の詰将棋では、詰め手順と同様に玉方の側に立って、受けの可能範囲まで考えることになっています。合駒をする局面の形態によって、何を合駒したら最も手順が延びるかを考えて、選定すればよいことはすでに述べました。この法則は、取られずに残る合駒の場合にも適用されます。

(第5図)
続第1回第5図

第5図。玉の退路を阻止する3五角が、俗筋だが正着なことは形からすぐ判断できます。これに対する合駒ですが、この合駒は取られることはありません。脱出を押さえた角打ちですから、この合駒を取ってしまっては目的を消失してしまいます。
取られない合駒なら最も働きのよい駒ということになります。3五角・2四○合・3一角・1二玉・2二角成。○合の駒が2二の点に効かなければ、以上の手順で終わりです。ということは飛以外の駒の場合であることに気付きます。そこで玉方は飛の合駒によって2二角成の手を妨害します。したがって○は飛が正解でした。
合駒の問題はいつの場合でも、このようにその選定にあたってよく水平思考し、ポンポンと飛躍的に頭の働きをめぐらして下さい。

(途中図は1二玉まで)
続第1回第5図途中図

3五角・2四飛合・3一角・1二玉で途中図となります。この局面で2二角成のないことはすでに述べましたが、これは2四飛の合駒が、こんどは守備駒に変化したからで、合駒の2段活用ともいうべきものです。
守備駒のある形の解決法に、排除手段(どける)があったことを思い出して下さい。といって2二角成あるいは2二とでは、玉方の思うツボ。2三桂成の一手が、同玉には2二角成の一発を含んで、まさに剣豪の切れ味、気持ちのよい好手となります。
第5図。3五角・2四飛合・3一角・1二玉・2三桂成・同飛・1三角行成・同飛・2二角成まで9手詰。



取られずに残る合駒の場合には、合駒から守備駒に変化する2段活用が常識となっています。したがって「守備駒のある形」をもう一度復習して下さい。

(第6図)
続第1回第6図

第6図。内藤国雄棋聖の作品です。1一飛成の手が一瞬目に映りますが、3二玉・4三金・2三玉で逃げられてしまいます。ここで、もし詰方の3三桂がなかったらどうでしょう。3三金打までで詰みますネ。1一飛成として、ハハア?3三桂がジャマ駒だなとひらめいた読者は、かなり上達した証拠です。
そこでジャマな3三桂を4一桂成として、消しにかかっていくのが先決となります。4一桂成に2二玉なら、1三金・3三玉・3五飛・4四玉・4五金まで。また3二玉なら4三金・2三玉・3三金打で詰みます。したがって玉方は2一玉が最善の逃げ。これに対し更に3一成桂と寄り、原型のまま桂を消すのが含蓄ある一手です。3一同玉となり待望の1一飛成を得て途中図となります。

(途中図は1一飛成まで)
続第1回第6図途中図

この局面で2一に合駒をしないで3二玉と逃げれば、ジャマ桂がなくなったので、4三金・2三玉・3三金打までで詰むことは前述の通りです。となれば2一に何か合駒をしなければなりません。さて何の合駒が最善でしょうか?4三の点に睨みを効かす2一角合が正解です。これに対して平凡に2二金では4二玉で、つぎの4三金が打てずに失敗しますし、また4一金と左から追っても3二玉・4三金・2三玉でとどきません。
ここで、詰棋忍法の一つ”逃げ道に捨て駒の術あり”を思い出して下さい。4二金と意表に出る捨て駒が、この棋術の一手で、以下同玉・2二龍・3二角上・4三金で見事に詰上ります。
第6図。4一桂成・2一玉・3一成桂・同玉・1一飛成・2一角合・4二金・同玉・2二龍・3二角上・4三金まで、11手詰。



なお、3手目3一成桂のところ、1二金の手に気が引かれますが、3二玉・3五飛・3四歩合・同飛・2三玉で失敗します。3四歩合が巧妙な防御で、逃れ筋になります。
ジャマ駒のある形と合駒の形とを、収束の逃げ道のある形でまとめあげた好作品です。

(第7図)
続第1回第7図

第7図。『週刊文春』36・12・25号、二上八段の作品です。
玉の両側から詰方の龍馬がにらんでいますので、すぐ詰みそうですが、玉方の金・銀3枚がよく守備陣をしいていますので簡単には落城しません。例えば5三銀と攻めてみても以下、5一玉・4一馬・同玉で金が打てず詰みません。ここでもし3一銀の効きが4二の点からはづれますと、この堅固に見える玉も危険になります。そこで3一銀の移動を計る2二龍が正着ということになります。前述の通り2二同銀とは取れませんので、3二に合駒をするか、もしくは4一金か3一銀かが、3二に上る移動合いしかありません。

(参考1図は3二銀上まで)
続第1回第7図参考1図

(参考2図は3二金上まで)
続第1回第7図参考2図

参考1図は、2二龍に対し3二銀上と防いだ局面ですが、以下5三銀・5一玉・4一馬・同銀・4二金・同銀・同龍まで、銀が余って詰みます。参考2図は、2二龍に対し3二金上と防いだ局面ですが、以下5三銀・5一玉・3一龍・同金・5二銀・同銀・同馬までこれも銀が余って詰みます。
以上の検討で3二に何か合駒をするのが、最善であるということが判りました。はたして何の駒を合いするのか考えてみましょう。まづ飛・金以外の駒を考えてみます。飛・金以外の駒で受け駒として強力なのは銀ですから、3二銀合としてみます。(参考3図)

(参考3図は3二銀合まで)
続第1回第7図参考3図

局面以下、5三銀・5一玉・4一馬・同玉(同銀なら6二金・同銀・同龍まで)・5一金・同玉・3一龍・4一合・4二銀打まで、11手詰です。

(参考4図は3二飛合まで)
続第1回第7図参考4図

(参考5図は2二飛まで)
続第1回第7図参考5図

こんどは詰方の3一龍を防ぐ意味で、3二飛と合いしてみます。(参考4図)局面以下5三銀・5一玉・4一馬・同玉・3二龍・同玉(同銀は4二金まで)・2二飛で参考5図となります。図以下は、2二同玉・2三金まで、11手詰。2二同玉のところ、4一玉では4二金・同銀・同飛成まで、13手詰銀余り。この筋も2二飛という妙手があり面白い詰め手順です。

(途中1図は3二金合まで)
続第1回第7図途中1図

(途中2図は2二金まで)
続第1回第7図途中2図

最後に3二金合を考えてみます。(途中1図)局面以下、5三銀・5一玉・4一馬・同玉・3二龍・同玉・2二金(前述の2二飛と同じ狙いの手筋)で途中2図となります。図以下は、4一玉(同玉は2三金まで、また同銀は4二金まで。これは参考図と同じ変化です。3一金・同玉・4二銀打・2二玉・2三金まで、15手詰です。
この順が最長手順なので、3二金合が最善という結果になったわけです。
第7図。2二龍・3二金合・5三銀・5一玉・4一馬・同玉・3二龍・同玉・2二金・4一玉・3一金・同玉・4二銀打・2二玉・2三金まで、15手詰。



意表をつく2二龍から、合駒の繁雑さを採用し、2二金打の妙手を秘めた絶品と思います。
                                        ――以下次号――
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

hirotsumeshogi

Author:hirotsumeshogi
少ない知識をフル活用させています。
当ブログはリンクフリーです。
相互リンクは詰将棋関係のものであれば原則受けさせて頂きます。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR