続・詰将棋の能率的勉強法(1)(近代将棋昭和45年7月号)①

続編もの、村山隆治氏の「続・詰将棋の能率的勉強法」を取り上げていきたいと思います。
「詰将棋の能率的勉強法」の連載終了から半年を経て開始(再開の方が適切でしょうか)されました。
第1回の前半部分です。合駒の形(その1)とタイトルの下にあります。
新しい思考法
時代の変遷とともに、思考の方法も大きく変わっていかなければならない、と、さきに来日したイギリスの生態行動心理学者、エドワード・デボノ博士が一席ブッて以来、「水平思考法」なる新しい思考法が、センセーションをまき起こしています。
従来の、知識を積み重ね、あるいは深く掘りさげていく「垂直思考法」に対し、これからの創造力開発には、連想を働かせて横の関連でものをみる「水平思考法」をとりあげなければ、行きづまるという論旨です。
いかにも新しい思考法にみえますが、これこそ筆者がすでに本誌上で述べた「点的思考」と、同じではないかと思います。ポンポンと飛躍的に考えをはずませるのが点的思考ですが、詰将棋を考えるのには、思考の飛躍性ともいうべき点的思考、すなわち「水平思考法」が是非必要です。
能率的勉強法の目的も、この新しい思考法の培養と育成にあるわけです。
さて、前編までに
 1 守備駒のある形
 2 逃げ道のある形
 3 歩詰めの形
 4 ジャマ駒のある形
 5 価値変換の形
を学習しました。続編はまず「合駒の形」からはじめます。

6 合駒の形
詰将棋は王手の連続で詰むゲームです。従って詰方は、アッと驚かす手筋が自由に使えますが、玉方は取るか逃げるかだけで極めて受動的です。その受け身の中で多少とも主体性を主張できるのが、玉方の「合駒」という特権行為です。詰方の飛・角・香の王手から玉を守るために、効き筋の途中に打つ駒が合駒であり、しかも詰将棋の規定により盤面上にある駒と持駒以外の残り駒(ただし玉を除く)は、すべて合駒として使用してもよいのです。だから何を合いされるか判りません。これが合駒のある詰将棋の難しさでもあります。
詰方の飛・角・香の飛び駒による王手の目的は、3つに分類することができます。
1、合駒を強要し、それを取って持駒の補充を計る。
2、守備駒の移動を計る。
3、玉の脱出を封鎖する。
以上ですが、飛び駒による王手には玉方側にも、合駒による頑強な受け手段が残されているのです。
合駒は、合駒を打った瞬間の状態によって
 A 直接合駒
 B 間接合駒(中合い)
 C 移動合駒
に分類できます。そしてAとBの場合には、
① 詰方に取られる合駒
② 詰方に取られずに残る合駒
とで、合駒に使用される駒の種類が異なるわけです。
あらゆる合駒を考える。これが合駒のある詰将棋の煩雑性であると述べましたが、そのすべてを考えるのでは余りにもムダな話で、芸がありません。合駒が何であるかを決めるには、まずその合駒を詰方が取るか取らないかを考えることが肝心、そして取る場合には使用に不便で、詰手数の最も延びるような駒を、取られずに盤面に残る場合には、最も働きの大きい駒と判断すればよろしい。
A 直接合駒の形
玉方の駒の効き筋に打つ合駒のことで、合駒を要求した側の駒との交換以外に、この合駒を取ることはできません。
① 詰方に取られる合駒

(第1図)
続第1回第1図

第1図。持駒が金一枚ですので、金気がもう一枚欲しい所です。2一龍が詰将棋らしき手ですが、4二玉と左辺に逃げ込まれて摑まらず、また4二金とこっちから押したのでは2三玉で、以下2一龍・1三玉で指し切りとなり、いづれも失敗です。とすれば、平凡に2二金とし3三玉に3一龍と追って、合駒を強要するのが最善の手段となります。(途中1図)

(途中1図は3一龍まで)
続第1回第1図途中1図

この局面で、3二に合いする駒は何が最善であるかを、詰方で検討する必要があるわけです。自分で選ぶからといって、簡単に詰んでしまう駒を合いしたのでは不正解となります。相手側にたって最も頑強に抵抗できる駒(云いかえれば最も手順が長くなる駒)を選ぶことが大切です。
さて、この局面で3二○を選ぶには、横に効かない駒(例えば歩・香・桂・銀・角)なら、2三金・同玉・2二龍まで、簡単に詰んでしまいますので、横に効く金か飛のいづれかであるということを、見きわめるコツを養成することが肝要です。

(参考図は3二金合まで)
続第1回第1図参考図

3二金と合いした場合(参考図)には、同金・同銀・3四金まで。3二飛と合いした場合(途中2図)には、同金・同銀(途中3図)で3四飛では、4三玉以下遁走されますし、また3二同龍では局面が広すぎてダメです。

(途中2図は3二飛合まで)
続第1回第1図途中2図

(途中3図は3二同銀まで)
続第1回第1図途中3図

ここで逃げを防ぐ巧い手の発見が望まれる所ですが、前編の卒業者は反射的に2三飛の痛打を放つことでしょう。
この好手を含んだ上に手順が金合いの場合より2手ながくなりますので、この飛合が正解となります。
第1図。2二金・3三玉・3一龍・3二飛合・同金・同銀・2三飛・同玉・2二龍まで9手詰。



(第2図)
続第1回第2図

第2図。実戦型で寄せの参考になる詰将棋です。
3三角と打って攻めてみましょう。以下同桂・1一銀・1二玉・3二飛成・1一玉で、計一枚では切れてしまいます。もう一枚何かあればということで、4四角と迫るのが正着です。これに対し玉方は3三に合駒をするわけですが、いづれ詰方に取られてしまうので、最も働きの弱い駒を合駒に選ぶべきです。

(途中図は1二玉まで)
続第1回第2図途中図

3三○合・同角成・同桂・1一銀・1二玉(途中図)となることは判っています。歩の合いができれば一番よいのですが、あいにく2歩となって禁手となります。金気は勿論ダメ、となると頭の丸い角か桂しかないことが判ります。ところがもし角の合いでしたら途中図で、3二飛成・1一玉・2二角・1二玉・3三角成まで桂が余りますから、桂合が最善ということになります。そこで前に戻って3三○合の○は、桂が正解という結果になったわけです。したがって途中図の持駒は桂・桂となります。
ここで直ちに3二飛成では、1一玉と落ちこまれて桂打ちが不可能。この手をやる前に2四桂と打ち捨てて、2三の点を空所にしておくことが大切です。これが手筋というもので、こんな手が瞬間に浮んでくるようになれば相当な腕前です。
第2図。4四角・3三桂合・同角成・同桂・1一銀・1二玉・2四桂・同歩・3二飛成・1一玉・2三桂まで、11手詰。



(第3図)
続第1回第3図

第3図。大道詰将棋屋の客寄せとして、前座に提出されるのが、この図式です。テングの棋客はいきなり8二銀と打ち、9二玉の逃げに7三銀不成として涼しい顔をしていますが、5二角と大切な飛を取られて、アッと驚き真青な顔。そこでもう一度とばかり、こんどは7三銀不成とせず9一銀成と両王手、以下9三玉・7五馬でニッコリしていると、ヒョイと8四歩と突かれて9二飛成ができずにこれまたギャフン、いいカモにされています。初手は5四馬とひき、大道棋屋の顔をジロリと見るのがコツです。6三に何を合駒するでしょうか?銀合いなのです。どうしてこれが最善なのか読者は試してみて下さい。(途中図)

(途中図は6三銀合まで)
続第1回第3図途中図

ここでアワ喰っては大道棋屋の思うツボ、6三同馬と持駒の補充を計る前に、ジックリと考えることです。常に9二の逃げをねらっていますので、これを封じることが先決、それには9二銀の先制打が妙手となります。この一手の発見によって、こんどは大道棋屋の顔が青くなります。7一玉の逃げなら5三馬で合い効かず、そこで9二同香と取りますが、合駒の銀をここで取って8二銀まで。
第3図。5四馬・6三銀合・9二銀・同香・6三馬・同角・8二銀まで、7手詰。



思考の基となる合駒の選定が明確でないと試行錯誤の回数が急増し、思考時間がネズミ算的に増加することを銘記すべきです。



※村山氏のご遺族の許可を頂いています


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