詰将棋の能率的勉強法(11)(近代将棋昭和44年12月号)②

村山隆治氏の連載「詰将棋の能率的勉強法」、第11回の後半部分です。
(第6図)
第11回第6図

第6図。二上八段の作品です。
実戦感覚では2二金が浮びますが、これは以下同玉・3三金・2一玉(1二玉なら1三歩成・同玉・1四金・1二玉・2三金右・2一玉・2二歩・同銀・同金まで)・3二金打・1二玉でダメです。もし初手2二金に同銀なら、3二金から2二金と清算して簡単に詰みます。
2二金が不成功なら、残る手段は”香頭の金捨て”という格言手筋で有名な、1二金よりありません。
この手が玉の位置変換を要求する好手段なのです。
1二金に対し同香は、以下1一金の送り手筋で、同玉・3一飛成・2一合・2二金までとなりますので、1二同玉と取るよりありません。これで途中図です。

(途中図は1二同玉まで)
第11回第6図途中図

この局面で単純に1三金と打っては、銀の守備が堅くて金一枚では足りません。ここでは”守備駒のある形”の復習、3二飛成という”どける”方法が巧妙な手となります。
第6図。1二金・同玉・3二飛成・同銀・1三金・2一玉・2二金打まで、7手詰。



(第7図)
第11回第7図

第7図。前の二題は、”形の変換”のうちで、手筋としては下級に類する玉の位置変えでしたが、これから説明する第7図の問題は置駒における位置の変換例です。そしてこの手筋の方が、はるかにユニークな手筋として珍重されています。
8一桂成・同玉・7三桂・9一玉・9二銀・同玉・9三銀成・同角・8一飛成まで、9手詰。
初手9二銀では以下、同玉・8四桂・9一玉・8二飛成・同玉で失敗となります。詰方の9四銀が捌けないのでは、解決に導くことができません。そこで8一桂成捨てから7三桂と打ち換え、9三を空点にする手筋が本題の面白いところです。
置駒の位置変換例ですが、これはまた”駒の打ち換え手筋”として、詰将棋高級手筋の一つでもあります。



(第8図)
第11回第8図

第8図。塚田九段著『続・楽しい詰将棋手帖』の第51番です。有力な初手は3一銀成でしょう。以下同玉・2三桂・4二玉・5三角・5一玉・6二角成・4二玉で千日手となり、不詰めとなってしまいます。この手順中、2三桂打とせず2二角では、4二玉・5四桂・5二玉・6二馬・4三玉でダメ。また5三角では4二歩突きの巧い応手でとどきません。
ここ泡喰って4二に合駒しますと、2三桂で詰んでしまいますので、実戦では慎重に注意して下さい。
とに角、4二玉と逃げだす穴を予め封じておきませんと成功しません。それに気づけば1一馬と主駒をキッパリ見捨てて、あたらしく3三角と打ち換える筋が、イメージ(像)として湧いてくるでしょう。4二の点にも照準がにらんでいますので、この点から逃げだすことはできません。
第8図。1一馬・同玉・3三角(途中図)・2一玉・3一銀成・同玉・2三桂・2一玉・1一角成まで、9手詰。

(途中図は3三角まで)
第11回第8図途中図

なお、途中図で2二に合駒(銀)をしますと、2三桂・2一玉・3一銀成・同銀・1一角成まで。これも9手詰ですので正解となります。角の打ち換えにより、置駒の位置変換問題でした。



(第9図)
第11回第9図

第9図。清野七段著『詰と必死』の第70番です。
玉を3二から4一へと逃がしてはダメですから、3五銀を移動させ両王手(二つの駒で同時に王手)によって、この逃げを防ぐより方法はありません。
2四銀が正着ですが、なぜ筋に見える4四銀だと悪いのでしょう。それは2二玉と遁走されますと、この銀がソッポに行ってしまっている関係上、若干駒不足となって詰まなくなるからです。試して見ましょう。
4四銀・2二玉・3三角では1三玉で、また3二金でも1三玉で、1二金なら同玉・3二飛成・2二合で、いづれも失敗します。そこで2四銀が正解なのですが、もし同玉と取らずに2二玉なら、1三角・1一玉・2二金まで至って簡単です。2四同玉と取らせて3五角と打ち換える手が実に巧妙な手段です。3三玉と戻って途中1図となりますが、なぜ角に打ち換えねばならないかは、以下の手順が説明してくれます。

(途中1図は3三玉まで)
第11回第9図途中1図

なお、3三玉と逃げずに3四玉なら、1三角成・2五玉・3五馬・1六玉・2六金まで早詰みです。途中1図で3二および2二への逃げを一手で拒否するためには、1三角成か4四角かのいづれかですが、1三角成では3四に合駒されてとどきません。
必殺の妖剣、4四角に対しては玉方も鬼気を察知し、危く2四玉と這いだしますが、ここで更にトドメの飛(秘)剣をあみだして下さい。(途中2図)

(途中2図は2四玉まで)
第11回第9図途中2図

2四玉で危機を脱出したように感じます。例えば1五金なら1三玉で、また3五角なら3三玉で千日手、ところが3四飛という”レーザー光線”で一気に収束します。
第9図。2四銀・同玉・3五角・3三玉・4四角・2四玉・3四飛・2五玉・2六金・3四玉・3五金まで、11手詰。
3五銀を角に打ち換えて、4四角の名手を生みだすこの作品は、異駒の打ち換え手筋としてまことに珍らしく、まさに短編の傑作品と思います。



(第10図)
第11回第10図

第10図。『将棋世界』昭和37年9月号に掲載された自作品です。
トリックのなかで最も効果のあるのが、大駒の打ち換えの手筋、本局はそれをねらった置駒の位置変換に属する作です。このようなトリックの発見は、形からの判断ではムリなので、逆算式によるほかありません。作意と考えられる手順をある程度進行させますと、詰みになるための条件が判明してくるものです。その時点でまたふりだしに戻って、作者の計略したトリックを解消します。これが逆算式で、この方法は詰将棋の創作に使用されます。
紛れが多くて、やや幻惑される形ですが、有力な手掛りとしては、2三角打の手、1三飛打の手、そして1三桂成の三手段が浮びます。2三角は2五玉・1五飛・同玉・1四金・2五玉でダメ、1三飛は2五玉・1五金・3五玉・2四角・4五玉で指し切り、1三桂成は2五玉(同玉なら2三飛・1四玉・2四金・1五玉・1三飛成まで)・2四金・3五玉で失敗、有力な三手段は全部絶望となりました。ただ1三桂成の手で以下2五玉・2四金のとき、これを同玉と取ってくれると2三角成の手が生まれ、3五玉と逃げだしても4五の点から飛でピタリと蓋を締めることができます。また3五玉でなく2五玉なら、こんどは玉の右腹からの1五飛でグサリです。
要するに、3五玉の逃げに対処するには、4五の点をあけておかないとダメなことがわかります。それには角の位置が悪く、どこか他の点に打ち換える必要が生じます。とすれば初手でスンナリ2三角成に捨て、1二角と下辺より迫る構図が浮んでくる筈です。単に4五の点をさけて上部(例えば5六)よりの打ち換えは、3四歩合で失敗します。
1二角に対して3二玉は、5二飛・4二合・3三金・4一玉・4二金まで早詰み、また2四玉なら、2二飛・1五玉・1四金・同玉・2三角成・2五玉・2四馬まで。そこで1四玉ともとに戻って途中図です。

(途中図は1四玉まで)
第11回第10図途中図

この形になれば検討済みの1三桂成で、こんどは4五に角筋が通っていますので逃げだすことができずに解決します。
第10図。2三角成・同玉・1二角・1四玉・1三桂成・2五玉・2四金・同玉・2三角成・2五玉・1五飛・同玉・1四馬まで、13手詰。
この作品は”詰将棋サロン”で第一位となり、将棋世界賞として楯を贈られた思い出深き一作です。



(第11図)
第11回第11図

第11図。軽い練習問題として、四段清水孝晏著『新選詰将棋』から提出します。角の打ち換えがねらいです。

まとめ
価値変換の形
① 質の変換形
駒の効率的使用により、その性能を求める不足駒に転用させて解決します。
② 量の変換形
駒の機能の活用をはかり、効きの重複をさけ、効率化をはかって量の不足分を補足させることにより解決します。
③ 形の変換形
位置の転換であり、これはA・玉の位置転換と、B・置駒の位置転換とに分類される。
A 玉の位置転換
玉の位置的条件を変えるために、置駒もしくは持駒を捨てて、効果的ダメージを与える点に誘導する、最も基本的な捨て駒の手筋の応用で解決します。
B 置駒の位置転換
置駒の配置が適切な点にはないために、特殊なジャマ駒形態になっています。このジャマ駒を清算し、適切な点に同種または異種の駒を打ち換えることにより解決します。
これは”駒の打ち換え手筋”として、高級な手筋の一つです。

◎練習問題解答
第4図。3二馬・同玉・3三飛・2二玉・3二金・1二玉・2四桂・同歩・1三桂成・同桂・2三飛成・同玉・3三歩成・1二玉・2二金まで、15手詰。



第11図。2三角成・同玉・4一角・2二玉・1三桂成・同玉・2三金まで、7手詰。



                               ――価値変換の項おわり――

――おわび――
本講座も愈々佳境にはいり、今後のテーマとして、『合駒の形』『開き王手の形』『両王手の形』『限定打の形』『俗手の形』『不動王の形』等について既に原稿も完了し、続講する予定でしたが、編集部との当初の約束が本年一杯で期限切れとなります。
筆者としてもそれに準じた原稿を書けばよかったのですが、ライフ・ワークの心算で各講が詳細にわたってしまい、その全容を掲載することができずに、一応閉講することになりました。そんなわけで、当初の目標とした”詰将棋免許皆伝”に至らず、全くの尻切れトンボになってしまい、読者の皆様に申し訳なく思います。
いづれかの機会に、続編を連載したいと考えていますので、悪しからず御諒解下さい。永い間の御愛読を感謝します。



ご覧いただきありがとうございました。
ひとまず「詰将棋の能率的勉強法」から離れたいと思います。

次回のシリーズ?は既に決定しておりまして、近々始められればと思います。
あまり期待せずにお待ち下さいませ。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:hirotsumeshogi
少ない知識をフル活用させています。
当ブログはリンクフリーです。
相互リンクは詰将棋関係のものであれば原則受けさせて頂きます。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR