詰将棋の能率的勉強法(11)(近代将棋昭和44年12月号)①

村山隆治氏の連載「詰将棋の能率的勉強法」、第11回の前半部分です。
価値変換の形(その2)とタイトルの下にあります。
詰将棋との対話
現代は”レジャー加熱時代”とか、”断絶の時代”ともいわれています。したがって落ちついて思索するなどということは、遠い昔の夢物語りとなりつつあり、薬にしたくてもありません。対話のない時代といわれる原因も、その辺にあるようです。
人との対話は勿論、自然との対話………どれもこれも人生にとっては大切なことです。われら詰棋人は、ただ手当たり次第のやみくもに解くだけではなく、折りにふれて作品をじっくり鑑賞し無限の夢とロマンとを追求して欲しいと思います。
作家が詰将棋の作品(とくに中・長編物)を通じて、解図者に訴えているものは詩以上のものがあり、変幻自在な世界にツメキストを溶けこませます。
人生の有為転変が繰り返えされるこの世の中で、本当に生きていてよかったという実感が、図式いっぱいに広がったときに、詰将棋との対話は終わります。そしてその作品に対する次元の高い価値が生じるのです。
今月は、価値変換における”量の変換形”の続きから開講します。

(第1図)
第11回第1図

第1図。3二金・1二玉・2四桂・同歩・2三銀成・同玉・3三と・1二玉・2二金まで、9手詰。
量の不足については、持駒の効率的運用と効果的使用法とがありました。持駒の適用例は前号で説明しましたので、置駒の適用例を学習します。
3二金と打ったつぎに、もう一枚金気が欲しいところで、まさに量の不足です。といって残りの桂を、その不足分に充当することもできません。そこで置駒の3四銀は、なぜあるのだろう?と不思議に思う感覚が望まれるわけです。正しい経験の集積により、”形の認識”が正確になってきます。
この銀の活用を考えればよいことになりますが、いきなり2三銀成と歩を取っての王手は、上部に遁走されてしまいます。2四桂すては”穴ふさぎ”の常用手筋です。
置駒の地形的効果を活用して、量の不足を補充した好例題でした。



(第2図)
第11回第2図

第2図。『よみうり詰将棋』(43・10・13)塚田正夫九段の出題です。
前図と同じ狙いの詰将棋ですが、変化を挿入して若干複雑になっている点が違います。玉頭の3三から打つ一手であることは、形からすぐ判断できますが、さて何を打ったらよいでしょう。
4一玉と逃げられたときに、詰みに通じる手でないと失敗しますから、飛を打つのが正着です。3三飛に4一玉なら、4三飛成・4二銀上・5三桂不成・3一玉・3二金まで。また4二玉なら、4三金・4一玉・3二飛成まで、いづれも早詰みですので、3三飛に対しては2二玉が正しい応手。そこで3二金・1二玉と追いつめて途中図です。

(途中図は1二玉まで)
第11回第2図途中図

この局面になりますと、「ナルホド!前図と似ておるわい」と、ピンときたことでしょう。穴ふさぎの2四桂から、2三飛成はもう練習済みですネ。
第2図。3三飛・2二玉・3二金・1二玉・2四桂・同歩・2三飛成・同玉・3三桂成・1二玉・2二金まで、11手詰。



(第3図)
第11回第3図

第3図。二上八段の作品です。駒不足を馬の活用で補う実戦参考の寄せ手筋問題。
“持駒の桂は初手に使え”これは詰将棋解法のチャート(図表)ですが、本図でも御多聞に洩れず1四桂が正着なのです。
1三が空点になれば、3一角から1三銀が成立します。
したがって1四桂には1二玉ですが、銀を残して2一角と捨て、3二銀と玉のコビンから迫るのが実戦的手筋です。なぜ銀を残すかは、あとで判明します。
3二銀でなく2二銀では、1二玉でとどきません。3二銀・1二玉で途中図となり、駒不足の形です。

(途中図は1二玉まで)
第11回第3図途中図

途中図を見れば、2二桂成捨てから3一馬と活用して詰む手順は、一瀉千里の筈です。
第3図。1四桂・1二玉・2一角・同玉・3二銀・1二玉・2二桂成・同玉・3一馬・1二玉・2一馬まで、11手詰。
3一馬の寄りを考えて、銀を残しておく実戦的手筋は参考になります。



(第4図)
第11回第4図

第4図。最後に復習問題として、『よみうり詰将棋』(41・7・24)山本武雄七段(当時)出題図を提出します。
第2図と同じ狙いですので、これがよくわかっていれば、スラスラと解けるかずです。正解手順は末尾に示します。
C 形の変換形
“形の変換”具体的にいえば、玉をはじめとして置駒の位置の変更ということになります。これは先に述べた質と量の考え方が、うまく適応しない状態に対して、玉の位置もしくは攻め駒の配置の、位置的条件を変えることにより、与えられた障害をはずす手段をいったものです。
このうち玉の位置変更は、最も基本的な手筋に属し、捨て駒手筋分類中でも価値の低い手筋となっています。

(第5図)
第11回第5図

第5図。図面を見て下さい。詰方に何かが不足しているように思われます。質とか量のようなものの活用を求めていることは、おわかりになるはずですが、ただそれだけでは、うまくいかないようです。
先づ目につく3二金を打って見ましょう。以下2三玉・2二金打・1三玉(参考1図)となり、残った持駒が銀のみでは詰みません。

(参考1図は1三玉まで)
第11回第5図参考1図

さて、そこでこの残った銀が金に変わっていればということになりますが、持駒がはじめから金三枚なら、初手3二金のとき2三玉と逃げずに、1三玉と逃げられて、こんどは銀が欲しくなることでしょう。
次に量の面から見ますと、勿論もう一枚金を加えて金・銀四枚あれば、3二金以下簡単に並べ詰みです。ところが詰み上った時に、参考2図(3二金に2三玉と逃げた場合)、

(参考2図)
第11回第5図参考2図

(参考3図)
第11回第5図参考3図

参考3図(3二金に1三玉と逃げた場合)のように、四枚のうちのいづれかが一枚余ります。余る位なら初めから不必要な筈ですが、それが先の逃げ手順のアヤでうまくいきません。詰め手に応じた玉の相対的な動きを、考えにいれなかったためです。
質と量の変換が通じないような場合には、位置の転換を求めるよりありません。玉を詰め易い位置に誘導するのです。
第5図。2三金・同玉・3二銀打・1三玉・2三金まで、5手詰。
金・銀三枚でもやっかいな2二玉と、金・銀二枚で詰んでしまう2三玉の形、この玉の位置変換の効果をよく試して下さい。

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