詰将棋の能率的勉強法(9)(近代将棋昭和44年10月号)②

村山隆治氏の連載「詰将棋の能率的勉強法」、第9回の後半部分です。
(第6図)
第9回第6図

第6図。七段・北村昌男著『強くなる詰将棋』の一つです。
実戦なら、勝った!とばかりに、4二飛成と手をしなわせることでしょう。ところがドッコイ、こちらが思っているように3二に合駒をせず、軽く2一玉とおちられてビックリ、青筋を立ててしまいます。でもこのときもし2二歩と打てれば、1二馬、同香、2二歩という例の歩詰め解決法で詰上ります。
この2二歩が、2四歩の存在のために打てません。とすれば4二飛成を実現する前に、ジャマな2四歩を消しておけばよいことに気づかれるでしょう。ここに思考の発展が望まれるわけです。
第6図。2三歩成、3一玉、2二と、同玉、4二飛成、2一玉、1二馬、同香、2二歩、1一玉、3一龍まで、11手詰。



(第7図)
第9回第7図

第7図。金田秀信氏の『新春の詰将棋』第44番です。ヒントに――初手2二角は絶対として、後の応手に注意を要するところ。2四歩は何者であるか?例の駒です。――となっていますので、ピンときたことでしょう。
絶対手の2二角に同玉なら、2三飛成、3一玉(1一玉でも同じ)、2二角、2一玉、1三角成で簡単ですので、軽く2一玉と寄りますが、更に1二角と連打して強く迫るのが形、同玉と取れないことを見越しています。

(途中図は2二玉まで)
第9回第7図途中図

止むを得ず2二玉と、危険地帯に誘い出されて途中図です。図面で2三飛成または1三飛成(詰将棋らしき手)と、攻めたい所でしょうが、2三飛成は1一玉で、1三飛成は3一玉で、いづれもソッポに逃げられてダメ。

(仮想図は2一同玉まで)
第9回第7図仮想図

ここまでで思考を停止させずに、仮想図を見て下さい。1三飛成、3一玉のとき、2一角成、同玉とした局面です。この図でもし2二歩が打てれば、以下3一玉、1一龍で詰むでしょう。どこか手順の途中で、2四歩のジャマ駒を捨てればよいのです。途中図に戻って、チャンスは今なのに気づくでしょう。
2三歩成、1一玉、2二と、同玉として消すことに成功すれば、こんどこそ1三飛成で解決です。
第7図。2二角、2一玉、1二角、2二玉、2三歩成、1一玉、2二と、同玉、1三飛成、3一玉、2一角成、同玉、2二歩、3一玉、1一龍まで15手詰。



収束は前図と全く同じようなねらいですがただ前の(ママ)消去法が違います。前図は単純明快に、いきなり歩を成り捨てましたが、本図はそこまでに持っていく過程に、変化を織り込んだのです。

(第8図)
第9回第8図

第8図。『詰将棋・二上達也作品集』の第83番です。
2筋から1筋へ”逃げ道のある形”ですから、逃がさない手を考えていくのがコツ。例えば4一銀不成と攻めて見ましょう。2二玉なら3一角の斜線効きでうまいのですが、2一玉と逃げられますと、駒不足で捕捉困難です。したがって2一玉と逃げられても詰む着手が必要ということが判ります。それには3三銀成か4三飛成よりありませんが、3三銀成は以下、同玉、5一角、2二玉、3二金、1三玉で続きません。
4三飛成が正着です。2一玉と逃げたら詰みますから試して下さい。3二角、1二玉、2二金、同玉、3三龍、1三玉、2三龍までですネ。4三飛成、同玉で途中図です。

(途中図は4三同玉まで)
第9回第8図途中図

この局面では”合い効かずの形”を活用して、2一角打が常用の筋です。勿論3二に合駒をすれば5三歩成までですが、4二玉、4三金、5一玉で歩一枚となり息切れです。しかし5二歩が打てれば詰みます。
途中図で、5三歩成とし更に4三とと捨てる手が絶妙です。
第8図。4三飛成、同玉、5三歩成、3二玉、4三と、同玉、2一角、4二玉、4三金、5一玉、5二歩、4一玉、3二角成まで、13手詰。



6三香の配置は、玉がこの方面に逃げていくことが暗示されて、少し損をしています。しかし4三との捨てには、何かしら難しさを感じられたことでしょう。4三とに2一玉は前記3二角で同じように詰みます。
作者も、心理的作品のつもりといってますが、2歩の作品として佳作と思います。
② 歩の間接消去方法
ジャマ駒の歩が、受動的に玉に取られることによって消える消極手段です。

(第9図)
第9回第9図

第9図。御存知『将棋図巧』第19番図式です。
“2歩禁手”をテーマにした作品の中で、ジャマ歩を間接的に消去させるねらいを実現させた、古今を通じての第1号局です。
8四歩、9二玉、8三歩成、同玉、8二桂成、①同馬、9四銀、②7四玉、7五歩、同玉、8五飛、7四玉、6五龍、7三玉、7五飛、8四玉、7三飛成、同玉、7四歩、8四玉、8五龍まで、21手詰。
変化①、8二同玉なら9四銀、9二玉、8三飛成、9一玉、7一龍まで。
変化②、9四同玉なら9五歩(前もって9二歩を消去した効果による)、同玉、6五龍、9六玉、8五龍まで。
初手8四歩から8三歩成は、後に9筋に歩を打つときに2歩にならぬよう、9二歩を間接的に消去しておく手段です。この効果は本手順9四銀を同玉と取った変化の9五歩打に現出します。本手順の表面に現われない点が、いかにも奥床しい点と思います。



(第10図)
第9回第10図

第10図。『よみうり詰将棋』(昭34・1・18日)山本武雄七段(当時)の出題です。”逃げ道のある形”ですが、玉の頭から押さえこむ1六飛では1五歩合で失敗します。ここは「退路牽制手段」の1三飛が正着で、同玉と取って途中図となります。

(途中図は1三同玉まで)
第9回第10図途中図

ここでまづ浮んでくる手は2三飛打でしょう。手を進めてみます。2三飛、1四玉、2四飛成、同玉、3三角成、1四玉(参考図)で、手段がつきてしまいます。

(参考図は1四玉まで)
第9回第10図参考図

この参考図で、もし1五歩打ができれば、同銀なら2三馬、1三玉でも2三馬の筋が生じますので、面白いことが判ります。したがって1二歩を消せばよいのですが、ここ何故、桂が持駒に加えられているのかを考えて見る必要があります。
途中図に戻って、2三飛の手段が成立しないとすれば2五桂しかありませんし、また桂を使うとすれば、この決定的瞬間がチャンスです。2五同歩と取って呉れれば、2三飛から2五飛成の手段が生じますので、玉方は1二玉と歩をパクって逃げる一手となります。勿論1四玉は1三飛の一発です。
待望の1二歩が消去されたことにより、この2五桂の使命は1三桂成と捨てることによって、充分に果たされたことになります。この1二歩を消去するために、持駒に桂が加えられていたわけです。
第10図。1三飛、同玉、2五桂、1二玉、1三桂成、同玉、2三飛、1四玉、2四飛成、同玉、3三角成、1四玉、1五歩、同銀、2三馬まで、15手詰。



同じ目的で歩を消去するわけですが、間接的消去法の手段の方が、ユニークな詰後感を満喫します。

まとめ
ジャマ駒のある形
A 現在型
最初の駒配りにジャマ駒のある形
① 直接に捨てる方法
自ら動くジャマ駒で、一手で盤上より消去する方法。
② 捌いて捨てる方法
自ら動けないジャマ駒で、玉に取られることにより消去する方法。
B 将来型
打った駒が、何手か先にジャマ駒となる形で、解決法はAと同じ
C 特殊型(2歩の詰将棋)
① 歩の直接消去方法
歩の成り捨て、突き捨てにより消去する方法。
② 歩の間接消去方法
歩が玉に取られることにより消去される方法。
(補記)
2歩の禁手を採用した将来型もあります。これは『香先香歩の図』といって、2歩を回避する趣向詰ですが、ジャマ駒とは直接に関係がありませんので、省略しました。
なお、本誌6月号・研究室・B・北川邦男氏作の詰将棋が、『香先香歩の図』でしたので参考までに。
                                   ――ジャマ駒の項おわり――




最後の文で触れられている北川邦男氏作(近代将棋昭和44年6月号修正図)を掲げます。


「渓流」珠玉篇第82番に収録されています。
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