詰将棋の能率的勉強法(9)(近代将棋昭和44年10月号)①

村山隆治氏の連載「詰将棋の能率的勉強法」、第9回の前半部分です。
ジャマ駒のある形(その2)とタイトルの下にあります。
“ジャマ駒”形態の極限
ジャマ駒の存在も、障害を形づくっている一つのパターンです。
このジャマ駒も、初形の駒配りで歴然と判っている明瞭型と、いかにも必要そうに漠然と配置され、全然その片鱗さえもうかがえないカモフラージ型とあります。その中で最も昇華され成長された、ジャマ駒の形態の極限が『2歩の詰将棋』です。
禁手のテーマを詰将棋の障害として挿入したところに、独特の風味があり、すでに歩が盤駒にあるために歩を打つことができず、それが原因で不詰となるようにカラクリ細工されています。したがって、すでに配置されている歩がジャマ駒なのです。
2歩の形は、あとの楽しみにして、まず先月号に続きジャマ駒の将来型から解説しましょう。
B 将来型
ジャマ駒将来型、これは文字通り現在打った駒が、あとになって自ら味方の攻めを阻害する駒になってしまうことをいったものです。といってジャマになることが判っているなら、はじめから打たなければよいようなものですが、そこに詰将棋の面白さと創作の楽しさがあるのです。
この種の詰将棋は、二上八段の最も好む所らしく、同氏は”棋聖就位”祝賀出版の『詰将棋、二上達也作品集』の中で、――打った駒がジャマになり、それを捨てに行く。私の好みいわば作風でもあります。――と書いています。

(第1図)
第9回第1図

第1図。二上八段が、昭和37・5・3に出題したテレビ詰将棋問題です。
現在の形は”逃げ道のある形”ですから、2三角と打って4一の逃げを封じるのは常用手段。2二玉と寄って途中図ですが、これでジャマ駒の現在型になります。すなわち逃げを制して打った角がジャマで、頭金の詰めができません。

(途中図は2二玉まで)
第9回第1図途中図

ジャマ駒は捨てればよいこと位は、すでに学習ずみですが、捨てたあとの手段を考えておかないと失敗します。したがって最もよい条件のときに、この角の消去を実現させることがコツです。
途中図で3二金は1三玉で息切れ、また単純に1二角成は同香、2三銀、1三玉、1二銀成、2四玉、2六香、2五歩合、3五金、2三玉、2五香、3二玉で不詰です。以上の検討で角捨てはまだ早くて、玉の位置が好都合の点にいないことになります。
好条件は1三玉の形、こうなれば1二角成捨てがピッタリなのです。そこで途中図では1三銀が巧い手。同桂、同香はいづれも腹金まで。1三同玉として1二角成は、古来よりある手筋の応用で、参考図がそれに該当する古作物です。

(参考図)
第9回第1図参考図

第1図。2三角、2二玉、1三銀、同玉、1二角成、同玉、2三金まで、7手詰。



(第2図)
第9回第2図

第2図。『週刊文春』昭和38・8・5号二上八段の作品です。前図と同じ狙いの詰将棋ですが、収束方法が実に巧妙で、更に詰後感をよくしています。
絶対手2三角に2一玉は当然、もし2二玉なら1三角、同香、1二金まで簡単です。2一玉にスンナリ3三桂不成と飛び込み、2二玉の形にします。(途中図)

(途中図は2二玉まで)
第9回第2図途中図

途中図になりますと、打った2三角がこんどはジャマ駒になってきたことに気付くでしょう。そうです、この角が消えれば2三金の一発でKOですネ。前図の途中図とよく似てきました。同じ方針のもとに1三角(前回は1三銀)と打ってみます。以下同玉、1二角成、2四玉、3四馬、1五玉で見事に失敗に終わります。この落とし穴に誘うために、玉方2六とを配置したわけです。
さて1三角がダメなら、途中図で角を捨てるよりありません。左に捨てる3二角成が正着で、同金と取る一手です。かえって堅固にしてしまった感じですが、「逃路先着の原則」にのっとる妙手3一角捨てが、読み筋にはいっていれば大丈夫。例えはいっていなくとも、この位の手は発見して下さい。
第2図。2三角、2一玉、3三桂不成、2二玉、3二角成、同金、3一角、同金、2三金まで、9手詰。



形と筋の面白さを堪能させてくれた二作品でした。

(第3図)
第9回第3図

第3図。四段・清水孝晏著『新選詰将棋二百題』の一題です。
紛れの筋がありませんので、3三飛、2二玉、2一とまでは絶対な応酬。これに対し2一同玉は、2三飛成、2二合、1二金、3一玉、2二龍まで早詰なので、2一同馬が正しい応手で途中図となります。

(途中図は2一同馬まで)
第9回第3図途中図

この局面で3三飛を取り除いてみますと、4四角というキメ手があります。初期の目的を果して、今やジャマ駒と化したわけです。なお、途中図で2三金が実戦的攻めですが、以下1一玉、2二角、同馬、同金、同玉、3一角、2一玉、2三飛成、3一玉、3三龍、2一玉で攻略ができず失敗に終わります。
ジャマ飛を3一飛成とさばいて捨てる手が、いかにも詰将棋らしい好手です。同馬なら4四角、1二玉なら2三角、同玉、3三歩成、1二玉、2一龍、同玉、2二金で駒余り。そこで3一同玉ですが、4二角より3三角成を得て解決となります。
第3図。3三飛、2二玉、2一と、同馬、3一飛成、同玉、4二角、2二玉、3三角成、1二玉、2三金まで、11手詰。
将来型ジャマ駒の例題は、現在型に比較してその数が大変に僅少なのが特徴です。



C 特殊型――2歩の詰将棋――
歩を打つことが、できない条件には、
、玉が詰んでしまう場合。
、打ちたい筋に、すでに味方の歩がある場合。
(注、行き所のない場合の条件は除く。)
と、二つあります。そして前者が”歩詰め”の局であり、後者が”2歩”の局です。いづれの場合でも、歩を打てるようにすればよいわけで、すでに配置されている歩を、直接的あるいは間接的に捨てることによって解決します。
① 歩の直接消去方法
ジャマ駒の歩が自ら行動し、王手によって玉砕する特攻手段です。

(第4図)
第9回第4図

第4図。古作物の詰将棋です。
2五金と捨て、同玉に1七桂とはねては、2五歩が打てないので指し切りです。歩を打てるようにするには、ジャマな2七歩を消去することです。それには2六歩と突き更に2五歩と突いて捨てるよりありません。
2五金、同玉、2六歩、2四玉、2五歩、同玉、1七桂トビ、2四玉で途中図ですが、これで歩詰め局となります。

(途中図は2四玉まで)
第9回第4図途中図

ここで1五馬と捨てる手が、”妨害駒の移動による方法”によって、玉に逃げる余地を与える巧手です。これによって2五歩打が可能になり解決します。
第4図。2五金、同玉、2六歩、2四玉、2五歩、同玉、1七桂トビ、2四玉、1五馬、同歩、2五歩、1四玉、2六桂まで、13手詰。



なお、参考までに紹介しておきますと、詰将棋史上「2歩の詰将棋」の第1号局は、第4図の原型と見られる、二代・宗古名人が寛永13年(一六三六)に出版した”将棋智実”の第1番が、それです。(第5図参照)

(第5図)
第9回第5図

第5図。2一金、1三玉、2二銀、2四玉、2五金、同玉、2六歩、2四玉、2五歩、同玉、1七桂トビ、2四玉、1五馬、同歩、2五歩、1四玉、2六桂まで、17手詰。
詰将棋草創期時代の作品だけに、いかにも実戦の終盤といった感じが深い作物です。
玉方に不必要な駒があり、この原型を演出した第4図の方が、いかにも洗練された形で好感が持てることは、皆さんも異論がないでしょう。詰将棋を創作するときにコツといったものを覚えて頂くために、敢えて紹介したわけです。





将棋智実第1番は、11手目6五飛成以下でも詰んでしまうようです。
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