詰将棋の能率的勉強法(8)(近代将棋昭和44年9月号)②

村山隆治氏の連載「詰将棋の能率的勉強法」、第8回の後半部分です。
(第6図)
第8回第6図

第6図 内藤八段(の)作品です。
この図柄に不要駒があるといっても、おそらくピンとこないでしょう。普通ジャマ駒を消去する目的は、自軍の持駒をその点に打つための構想によるものが多いのです。ところがこの目的のほかに、自軍の駒の効き筋を開通させるための消去手段を、採り入れた手筋のものもあります。
有名な『将棋図巧』には、この構想をもりこんだ中篇物がかなり見受けられます。短篇物では構図にムリが出て、その創作がむづかしいのではないかと思っていましたが、この詰将棋は見事にそれを成しとげています。『失敗は成功の母』という金言がありますが、手を進めてみると案外に不要駒が浮んでくるものです。
2二銀 同玉 3二と 1一玉で失敗図

(失敗図は1一玉まで)
第8回第6図失敗図

3二とのところ3三龍は、1一玉 2一と 同角でダメです。失敗図をよく観察しますと何かヒントが得られる筈ですが?(ヒント図参照)”カゲの声”4二銀がジャマ駒なり。

(ヒント図)
第8回第6図ヒント図

ヒント図になれば4一龍の詰上りですが、さていかにして4二銀を蒸発させることができるでしょうか。
着眼を実行に移す行為を操作といいます。2二銀と捨てて同玉と誘い、3三銀不成とさばいていくのが巧妙な操作です。ここ成ってしまうと作者のワナにはまります。それは1三玉の逃げで手段がつきてしまうからです。成っていなければ、2二銀不成と更に攻めが続行でき、両王手なので同玉と取ることによって、以下3二と 1一玉(見事にヒント図出現)4一龍で詰上りです。
第6図 2二銀 同玉 3三銀不成 1三玉 2二銀不成 同玉 3二と 1一玉 4一龍まで、9手詰。
何喰わぬ顔で配置されている4二銀が、ジャマ駒とは恐れいった作品でした。



(第7図)
第8回第7図

第7図 『週刊文春』43・1・22号、二上八段の作品です。
3四桂打を阻止している3四馬を捨てるねらいであることは、もうお気づきのことでしょう。学習の効果テキ面ですが、この馬をどう始末つけたら賞められるか?
詰将棋センスで1二馬が急所の一手と、ピンとくるようになることが、望ましいところです。1二同玉なら1三歩成 2一玉 4一龍 同銀 2二金まで、といって1二同香は3四桂がピッタリですから、玉方も紛れを求めて3一玉と逃げます。いつの場合でも原型を崩さないことが条件ですから、ここで2二馬と再度さばいて捨てていく手が軽妙です。
かくて初期の目的が完了したので、3四桂が成立し解決します。
第7図 1二馬 3一玉 2二馬 同玉 3四桂 3一玉 4一龍 同銀 2二金まで、9手詰。



③ ジャマ駒を間接に取らせる方法
ジャマ駒は捨てればよいことがわかっていても、その状態をよく見定めてから行動に移さないと、とんだ失敗をすることがよくあります。物理学の方則に「動あれば反動あり」という文句がありますが、駒を捨てる行動に対しては、玉方にもなんらかの連鎖反応がつきまとうものです。それが逃げに連がるときに失敗する結果となります。
ジャマ駒を玉に取らせる解決法は、まさに他殺行為に似ています。動けないジャマ駒(王手のできないジャマ駒)なので、人手を借りて蒸発させる、つまり相手の玉に取られることによって、消去する目的を達することになります。
間接的消去法は、詰将棋の手筋分類からいっても、レベルの高い詰め手筋に含まれ、格調あるトリックといえます。

(第8図)
第8回第8図

第8図 詰方の1一角がなければ、1一角成以下簡単に詰みます。
1一角のジャマ駒を消す直接手段の2二角成は、同銀引、同角成、同銀、3二銀、1一玉で、歩詰めの手禁となり失敗します。ジャマ角が直接に行動をおこしたので、その反動を喰ったわけです。直接手段がないとすれば間接手段しかありません。そこで2二歩と打ち込みますが、2二の争点は4対3で詰方が優勢ですので、2二歩に対してこんどは同銀と取れず、1一玉と角を取って逃げるよりないわけです。(途中図)

(途中図は1一玉まで)
第8回第8図途中図

角が消えましたので、原型に復元させる2一歩成であとは容易です。
第8図 2二歩 1一玉 2一歩成 同玉 1一角成 同玉 1二歩 2一玉 3三桂まで、9手詰。
間接的消去だけに、ソフト・ムードな味です。



(第9図)
第8回第9図

第9図 金田秀信氏の『実戦型詰将棋一○○題』・第28番です。
このように玉が敵陣に入った型を、”入玉図”といいます。さてジャマ駒探しをするわけですが、その前に詰み格好を想定してみましょう。もし玉が9九の位置なら、3三角の離し角で一気に解決することが判ります。したがってこの形にすればよいのですが、現在の形で9九飛と打ってそれを強要しても、玉方は同香成と取って応じてくれません。といって8八飛では目的の9九玉形にはなりますが、自分の飛がジャマをして3三角が打てずに失敗です。
一度9八玉の形にし、それから9九飛とすることが出来ればよいのですが、それには7九飛と打てる形を作ることが肝要です。ここまで考えて、やっと7九角がジャマ駒であることが判りました。そこで8八金と寄り、7九玉と角を取らして、再び7八金と戻るのが、なんともいえぬ滋味あふれる一手です。(途中図)

(途中図は7八金まで)
第8回第9図途中図

7八金と寄らずに7八飛では、6九玉で合い効かずの離し角が、1四の点では成立せず失敗に終わります。途中図からは8九玉の一手しかありませんが、目的の7九飛が打てて解決します。
第9図 8八金 7九玉 7八金 8九玉 7九飛 9八玉 9九飛 同玉 3三角 8九玉 8八角成まで、11手詰。



(第10図)
第8回第10図

第10図 自作『詰将棋流鏑馬』の第11番です。詰将棋を創作するときは、不要駒を一切はぶくのが作家の態度です。したがって玉の背後に配置されている詰方の歩などは、まづジャマ駒と判定して差し支えありません。
自殺できないジャマ歩なので、玉に喰われるよりないのですが、それを要求する駒が手持ちの銀です。1五銀と打ち1三玉に、すんなり1四銀と捨てて原型に戻す要領は、いつもの通りで学習済みです。1四同玉で途中図となります。

(途中図は1四同玉まで)
第8回第10図途中図

なお、初手1五銀のところ2三銀では以下、同金 同角成 同龍 1五金 1三玉でとどきません。途中図からは2三角成しかなく、事実この手で以下同金と移動させ、1二龍と香を入手して田楽刺しまで、平易な順で詰上りです。
第10図 1五銀打 1三玉 1四銀 同玉 2三角成 同金 1二龍 同龍 1五香まで、9手詰。



(第11図)
第8回第11図

図柄が重苦しくてスッキリしませんが、同じねらいで米長邦雄七段が、『サンスポ・詰め将棋』44・4・26に出題しています。第11図がそれですので、練習問題として詰めて下さい。

(第12図)
第8回第12図

第12図 『週刊文春』38・1・14号、二上八段の作品です。
“持駒に桂があるときは、先づ桂打ちを考えよ”とは、詰将棋を解く定跡ですが、本局でも2四桂打ちのできる形にもっていく手段が、ねらいになっています。したがって1二龍の形になればよいのです。現在では自軍の1二歩がジャマで不可能。そこで2四龍と寄って玉方の応手を待つのが賢明な策です。これに対し2三飛合は、1四桂 1二玉 2三龍 同角 2二飛 1三玉 2五桂まで、また2三歩合なら、1四桂 1二玉(2一玉は1一歩成でよい) 1三龍 同玉 3一馬 1二玉 2二馬まで。
そこで2四龍に対しては、1二玉が最善手となり見事にジャマ歩が消えました。(途中図)

(途中図は1二玉まで)
第8回第12図途中図

歩は消えましたが、こんどは2四龍がジャマで2四桂が依然として打てません。途中図では、2三龍が手筋に見えますが、同角と取られ折角2四桂が打てても、この角が効いてきて詰みません。
途中図では再び1四龍と戻り、2一玉の逃げに当初想定した1二龍を実現させます。ここまで運べばオシマイで、1二同玉なら2四桂 2二玉 3二馬 1三玉 1四金まで桂が余りますので、1二同角が正解です。
第12図 2四龍 1二玉 1四龍 2一玉 1二龍 同角 1三桂 2二玉 1四桂 1三玉 
3一馬 2三玉 2二馬まで、13手詰。





第11図の解答も載せておきます。
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