詰将棋の能率的勉強法(8)(近代将棋昭和44年9月号)①

村山隆治氏の連載「詰将棋の能率的勉強法」、第8回の前半部分です。
ジャマ駒のある形(その1)とタイトルの下にあります。
理解の形式
理解とは、物事のすじみちを表面的に知っているだけではなく、その事柄についてあらゆる方向から検討し、その深奥を極めることです。
たとえば、ニュートンの有名な力学の法則『物体の加速度は、その質量に反比例し、それが受ける力の大きさに比例する』という言葉を覚えることは、単なる知識にすぎないのです。この法則によって、どのように天体が運行するのかを知り、したがっていつ宇宙船を打ち上げたらよいかを決定するわけです。
そして新らしい問題に直面し、自らこの法則を活用することができるようになって、はじめて理解したといえるのです。
この詰将棋学習も、
1、守備駒のある形
2、逃げ道のある形
3、歩詰めの形
というように、”形と筋”について詳解してきたわけですが、ただその適応手法をウのみにするだけではなく、多くの詰将棋を解明して、これらの手法の活用に堪能していただきたいと思います。
今回から「ジャマ駒のある形」にはいります。

4 ジャマ駒のある形
詰将棋を解く詰手筋の一つに、ジャマ駒の消去というものがあります。これは詰方にとって味方の駒が、駒の打つ場所または勢力の効きを妨害しているため、その状態から脱するために採られる打開策ともいえます。
これと似た形態に、玉方の不要駒という形がありますが、これは歩詰めを誘致するために過剰分の不要駒をすてるといった、高級な部類に属する詰将棋に、出てくる形態の一つです。
ジャマ駒はいうなれば”ノンポリ駒”、過剰分的存在駒でもあるわけですから、歩詰めの項で述べた解決法と同じように、その処理方法が問題となります。
単にジャマ駒といっても、味方の駒のどれがそれに該当するのか、それを判別することがむづかしいのです。高級な作品になればなる程、ジャマ駒を巧妙にカモフラージしますので、大変にやっかいになるわけです。主駒と思われる大駒が、実はジャマ駒であったというようなトリックはよくあります。
ジャマ駒と判明したら、それを処理すればよいわけですが、大体において原型を崩さずにジャマ駒を消去させるのがコツです。処理といってもその状態は千差万別ですから、解決法もいろいろ変わってきます。
ジャマ駒のある形は、
A 現在型
最初の駒配りにジャマ駒のある形
B 将来型
打った駒が何手か先に、ジャマ駒となる形にわけられます、そしていづれの場合もその解決法は、主演を演ずるジャマ駒を直接または間接に、捨て去る手段を考えればよいのです。それでは現在型の解決方法を勉強しましょう。
A 現在型
「もしも……であったら」これは点的思考の飛躍性です。そこでこれをジャマ駒の形態に当てはめてみますと、「もしも○○がなかったら」ということになります。ところがこの○○が現在あるわけですから、これを捨てるかまたはさばけばよいことがわかります。
① ジャマ駒を直接に捨てる方法
ジャマ駒が自ら行動し、一手で盤上より消去してしまう、最も一般的な手法です。

(第1図)
第8回第1図

第1図 ジャマ駒問題のサンプル的詰将棋。「もしも2三龍が、なかったら」2三桂の一発で詰むことがわかります。思考の飛躍は、すなわち思考の経済性に連がるわけで、すべての可能な王手を全部試してみる方法を、いつまでもやるのでは、本講を読む必要がありません。
2三龍がジャマ駒であることはわかりましたが、捨てたあとの手段を考えておかないとウカツには捨てられません。
後続手段が問題であり、そこまで考えたときに、ジャマ駒の消去方法の選択が重要となってきます。
原型を崩さずに2三龍を消去させる捨て方は、2二龍と1二龍の二つしかありませんが、2二龍では次の2三桂が成立しませんから1二龍が正着です。
第1図 1二龍 同飛 2三桂まで、3手詰。



(第2図)
第8回第2図

第2図 二上八段の作品です。第1図と同じねらいの詰将棋ですが、いささかひねくれています。ここに技術の進歩と深奥さがうかがわれ、ツメキストは魅力のとりことなるわけです。原型を崩さずに、2三龍を捨てることには変わりはありませんが、その捨て方が風変わりなのです。
1四龍 同飛 2三桂まで3手詰。
常に正確な読みは必要であり、捨てればいいからと1三龍捨てでは同飛と取られ、次の2三桂成が(成)立せずいけません。また1二龍では同銀と取られてダメです。
玉から遠ざかってすてる1四龍とは、ナントへそ曲りな一手でしょう。



(第3図)
第8回第3図

第3図 下平七段の『初級詰将棋手帖』第12問です。
3五飛がなければ、3五龍のゲーム・セツト。そこで原型を崩さずにのモットーのもとに、2五飛といきなり捨ててみよう。これは同玉と取られますと、つぎの3五龍に1六玉の逃げが生じて、失敗に終わることに気付きます。この1六への逃げを封鎖しておく準備工作が先決、ここで”逃げ道のある形”における退路封鎖の項を思い出して下さい。1六桂と捨て駒をして、穴をふさげばよろしいのです。
第3図 1六桂 同龍 2五飛 同馬 1六桂 同馬 3五龍まで、7手詰。
3五龍を実現させるための、二枚桂テクニックを学んで下さい。




(第4図)
第8回第4図

第4図 お待ちかね”天下の詰将棋作家”柏川悦夫氏の作品で、『詰将棋パラダイス』昭和43年6月号に掲載したものです。
詰方の7五馬がなければ、7三飛の合い効かずでオシマイ。そこでこのノンポリ馬を、うまく追い出す方法が解決のポイントになります。
7八への逃げがある形ですので、初手7六飛の着手は当然ですが、つぎの8七玉のかわしに対して、9七馬と捨てるのが鮮やかな一手です。この一手に作者の生命が打ち込まれていますが、よく途中1図を玩味して下さい。

(途中1図は9七馬まで)
第8回第4図途中1図

途中1図で9七同玉と取りますと、9六飛 同玉 9五飛まで一歩余りますので、9七同歩成が正しい応手となります。ここで7七飛引の両王手が痛烈なパンチ。この辺の呼吸はまことに至妙であり迫力があります。
7七同玉となって、見事に原型に戻り、しかもジャマ駒は消えました。(途中2図)

(途中2図は7七同玉まで)
第8回第4図途中2図

第4図 7六飛 8七玉 9七馬 同歩成 7七飛引 同玉 7三飛まで、7手詰。
作者、柏川悦夫氏は、自作集『駒と人生』その他を発刊している抜群なベテランです。



② ジャマ駒をさばいて捨てる方法
同じように捨てるにも、その方法によって捨て方が複雑になってくる場合があります。いうなれば複数的な捨て方であり、したがって手筋としては高級になるわけですが、この種の捨て方を「さばいて捨てる」という分野に区別してみました。
わかり易く書けば、不要駒を捨てるのに一手ですまずに、二手以上さばいてから捨てる方法なのです。
例題をあげて解説しましょう。

(第5図)
第8回第5図

第5図 さばき捨ての問題です。
詰将棋とは毎度申し上げているように、手筋の意外性を追求し障害を征服するパズルですから、ひと口に不要駒といっても、それを処理する手段は、箱根細工のカラクリ箱のように、簡単にはいきません。
局面から3四龍を取り去れば、3四桂の筋が生じて、金打ちまでということが、はっきりと映ずる筈です。どうしたら巧く消すことができるでしょうか?
2四龍と平凡に寄ってさばいていくのが滋味掬すべき好手。2四龍に対し、2三に何を合駒しても3四桂にて早く詰むので、3一玉と軽く逃げますが、あくまでも原型に戻すべく、更に2二龍と追っていくのが素晴らしい一手なのです。この辺のやり取りが、詰将棋を見るとジンマシンが出るようなアレルギー症患者には、のみこめないようです。
第5図 2四龍 3一玉 2二龍(途中図) 同玉 3四桂 2三玉 2二金まで、7手詰。

(途中図は2二龍まで)
第8回第5図途中図

2四龍から2二龍と、さばいて捨てていくこのコツを、お忘れなく。

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