詰将棋の能率的勉強法(7)(近代将棋昭和44年8月号)②

村山隆治氏の連載「詰将棋の能率的勉強法」、第7回の後半部分です。
② 働きに制動をかける手段
不成の手段も駒の働きにブレーキをかけた方法でしたが、別の方法として”不成”を採用せずに、わざと駒の性能を悪い効率で使用する手法が、歩詰めの回避に用いられる場合があります。これも大変に面白い高級な手筋であり、詰将棋独特のものです。

(第8図)
第7回第8図

第8図。まづ目につく手は3二金ですが、1二玉で1三歩が歩詰めとなります。
ここで前回まで勉強した解決法を復習してみましょう。そのなかの一つに、歩詰めの状態には詰方の勢力が過剰であるばかりでなく、同時に玉方自体の駒が玉の動きを妨害している場合もあるということがあったはずです。過剰状態にはその包囲網をゆるめ、玉自体の場合には、その妨害駒の移動を計るのが打開策でした。
そこで1二玉と追って1三歩の歩詰めは、2二香の移動を計り、1二玉に2二玉と動ける余地を与える手段が考えつきます。ところが初手3二金では、金を打った位置が悪く、その余地を与えることが不可能となります。2二にこの金が効いているからです。
ふり出しに戻って3二金とせずに、3一金としてみよう。こんどはその余地を与えることができます。金という駒を、最も悪い効率で使用して解決した例題です。
第8図。3一金・1二玉・2四桂・同香・1三歩・2二玉・3二金まで、7手詰。



(第9図)
第7回第9図

第9図。内藤国雄八段の作品です。
持駒がありませんので盤上の駒を捌くわけですが、1三の逃げを防ぐには3一角成よりありません。将来型の歩詰め局で、盤上に大駒のナマが配置されている場合には、まづ”不成”が常識と前に書きましたが、この局では駒配り上ナマ角の方が軽い形なので、こうしたのだと思います。
3一角成・1二玉・2一馬・1三玉で途中図となり、これで歩詰めの状態となります。

(途中図は1三玉まで)
第7回第9図途中図

2一馬と歩を得て、更にここで3一馬と包囲をゆるめる手が巧妙、これに対して2二金合なら同馬と切って頭金、また金以外の合駒なら1四歩と打って1二玉・2一馬まで。
そこで軽く1二玉と歩詰めを強要しますが”守備駒の逆用”で1四飛と捨て、逃げ道を封鎖して詰上ります。
第9図。3一角成・1二玉・2一馬・1三玉・3一馬・1二玉・1四飛・同飛・1三歩・同飛・2一馬まで、11手詰。



(第10図)
第7回第10図

第10図。下平七段「初級詰将棋手筋」の第85問です。働きにブレーキをかけるために、詰方の打った駒の効き道を止めて、歩詰めを打開する佳作品です。そしてその手筋はウルトラ級です。
4一角・1五玉・3二香成(途中図)・4五飛成・1六歩・1四玉・2二成香・4一龍・2三角・1三玉・1二角成・1四玉・2三馬まで、13手詰。

(途中図は3二香成まで)
第7回第10図途中図

角を打って迫るよりないですが、あとの歩詰回避を含みに4一角と離して打つのが正着。これに対して1五玉と歩詰めの形に逃げ込みます。もし3二または2二に歩合いができますと、完全に歩詰め局の形ですが、いづれの筋にも歩が配置されていますので歩合いはできず、といって他の合駒では簡単に詰んでしまいます。
3手目の3二香成が自角の効きを止め、1六歩打ちを可能にした絶妙手でした。この目的のために4一角と離して打ったわけです。
歩詰め回避の手段として高級な手筋だと思います。



③ 駒の消去による手段
歩詰め局の打開法の一つに”過剰勢力の削減法”がありましたが、これは必要以上に余分な駒を直接に自ら捨てて、歩打ちを可能にする手法でした。
ところがここに紹介する手法は、過剰勢力の駒を間接的に消去して、その勢力を削減する奇抜な着想手段です。

(第11図)
第7回第11図

第11図。『詰将棋パラダイス』同人作家・北原義治氏が、同誌の昭和44年2月号に発表した作品です。
初手4三角と触手が動きますが、3三玉と逃げられるとパーフェクト歩詰め局でダメ。それというのも3一銀があるからで、これが過剰駒となっていますので先づこの銀を捨てることです。といって行動を起こすことが封じられていますので、2四桂と打ち3一玉と取らせて仕(ママ)末するのが巧妙、もし3一玉とせず3三玉なら以下、3四歩・同玉・4三角・3三玉・3二角成・3四玉・4三馬まで。また2四桂に対し同飛なら4三角・3三玉・3四歩・同飛・同角成・同玉・2四飛・3三玉・2二飛成・3四玉・2四龍まで早詰みです。
3一玉で銀を消して目的を果したので、原図に戻すために3二桂成と捨て、同玉と取って途中図になります。

(途中図は3二同玉まで)
第7回第11図途中図

途中図以下は4三角(ここ5四角としては3一玉で完全歩詰め)として歩打ちを可能にし、5二角成の両王手以下の収束は習い覚えあるところでしょう。
第11図。2四桂・3一玉・3二桂成・同玉・4三角・3一玉・3二歩・4二玉・5二角成・3二玉・4三香成・3一玉・4二馬・同銀・3二歩・4一玉・5二歩成まで、17手詰。
6一飛と6四角の配置は、いづれも余詰を防ぐ駒。
6一飛は11手目4三香成とせず、4一馬・3三玉・5一馬に同飛と取るため、また6四角は同じく11手目に、4三馬とし以下、3一玉・3二歩・4一玉・5二歩成・同銀・4二馬を防ぐものです。
構図に不満はありますが、奇抜な着想の印象が鮮烈で面目躍如の一番と思います。



④ 駒の打ち換えによる手段
玉に動きを与えるため、駒を打ち換える珍らしい手法の詰将棋を、最後に勉強しましょう。

(第12図)
第7回第12図

第12図。「サンスポ詰め将棋」(44・3・29)清野七段の出題です。
詰将棋的手筋として1二角が浮びますが、同玉・1三歩・同玉・1四銀打・1二玉で不詰。
また1四銀打のところ1四飛としても、2三玉・3四銀・2二玉・3三角・同金・同銀成・同玉以下とどきません。
ここは俗手ながら2二銀と攻め、歩詰め局とするのが正着です。1二玉に1四飛と廻り、2三玉・2四飛・1二玉・2一角でうまく詰みそうですが、以下同角・同銀不成・1三玉・1二銀成・同香でとどきません。1三玉は巧みなかわしで、どうにも歩詰めを回避することができません。
これで手段に窮したかに思えますが、1三歩打ちを可能にするため1三銀成と捨てて、2二角と打ち換える素晴らしい鬼手があるのです。途中1図を見てください。七変化よろしく見事に銀が角にバケました。

(途中1図は1二玉まで)
第7回第12図途中1図

途中1図では待望の1三歩打ちと、気が忙ぎますが、まだ早く失敗に終わります。すなわち1三歩・2一玉・1一角成・同玉・1二香・2一玉で指し切り。この場合もし飛筋をジャマしている2三歩がなければ、1二香で2一玉と寄れずにそれまでとなることが判ります。
この目的のため途中1図で1四飛と寄り、2三玉・2四飛・1二玉(途中2図)とするのが、含みの深い好手で解決します。

(途中2図は1二玉まで)
第7回第12図途中2図

第12図。2二銀・1二玉・1三銀成・同玉・2二角・1二玉・1四飛・2三玉・2四飛・1二玉・1三歩・2一玉・1一角成・同玉・1二香まで、15手詰。
銀を角に打ち換えて、未然に歩詰めを避ける手筋が鋭い狙いであり、しかも収束において2三歩を消滅させ、飛先きを通しておき一連の好手が、この作品をぐっと引き締めています。



まとめ
歩詰めの形
A現在型
最初の駒配りが歩詰めである形
① 過剰勢力の削減
② 妨害駒の移動
③ 守備駒の逆用
④ 不成の効用
以上、四つの鍵で、その適・不適を判断すること。
B将来型
歩詰めの局面が途中に出現する形
① 不成による手段
② 働きに制約をかける手段
③ 駒の消去による手段
④ 駒の打ち換えによる手段
以上、四つの鍵は、その殆どが歩詰めという行き詰まりの形を、前もって回避するものですが、歩詰の形になった場合には、現在型解決法を併用して処理すること。
                                  ――歩詰めの項おわり――



追記
下平氏作は、初手2五角以下でも詰んでしまうようです(EOGさんご指摘)。
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No title

下平作は初手25角で余詰

EOGさん

下平氏作、確かに初手2五角以下でも詰んでいるようですね。
ご指摘ありがとうございます、追記いたしました。
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