詰将棋の能率的勉強法(7)(近代将棋昭和44年8月号)①

第11回詰将棋解答選手権チャンピオン戦、選手・運営の方々お疲れ様でした。

村山隆治氏の連載「詰将棋の能率的勉強法」、第7回の前半部分です。
歩詰めの形(その2)とタイトルの下にあります。
途中に現われる”歩詰め”
前回に書きました歩詰めの形は、すべてそれが歩詰めという行き詰まりの形態から出発する現在型でしたが、これから述べる歩詰め局は、何手か先に発生する歩詰めの形すなわち将来型について、その解法のコツを説明します。
B 将来型
現在型と将来型の違いですが、現在型はすでに歩詰めという状態が与えられてしまった問題であるのに対して、将来型はこれから起こる歩詰めという状態を、すくなくとも回避できるという点が、残されていることです。
したがって将来型を無為無策のまま、歩詰めの状態に押し進めてしまっては、先に学んだ
① 過剰勢力の削減
② 妨害駒の移動
③ 守備駒の逆用
④ 不成の効用
以上4手段の打開策も、効果を発揮させることができない場合が多いのです。
将来型の解決法の勘どころは、そこまでに至る間に歩詰状態を避ける事前工作が必要なのです。そしてその殆どが、現在型の解決法で簡単に述べた、「不成」による手段により解決します。
① 「不成」による手段
いかなる場合にもいえることですが、歩詰めの局はすべて過剰勢力が要因をなしています。将来型についても全く同じであり、したがって駒に一○○パーセントの能力を与えずに、むしろマイナスの働きにして使用することが、解決に結びつくわけです。
「不成」などはその極端な例であり、詰将棋独特な手筋といえましょう。

(第1図)
第7回第1図

第1図。玉を3二へ逃がしたら捕まりませんから、とに角4三角成としてみましょう。合駒をすれば1一飛の一発なので、1二玉と上る一手。そこで1一飛・2三玉となって途中図に示す歩詰め局となります。

(途中図は2三玉まで)
第7回第1図途中図

この局面となってしまっては、もはや”開け!ゴマ”の適応手段も、馬の耳に念仏となってしまいます。
初手の4三角成が無策であり、成ったために過剰性能な駒になってしまったからで、ここでは4三角不成と性能にブレーキをかける手段が正着であったわけです。
第1図。4三角不成・1二玉・1一飛・2三玉・2四歩・3三玉・1三飛成まで、7手詰。



(第2図)
第7回第2図

第2図。前図は角不成の例題でしたが、本図は飛不成の適応例です。
1一飛不成・1二銀合(角合)・1四歩・2二玉・3一飛成・同玉・3二角成まで、7手詰。
1一飛不成が歩詰めを避けるブレーキの手で、これによって1四歩打ちを可能にするわけです。ここで玉方の1二銀合が正しい応手で、斜めに効かない駒を合駒しますと、1四歩・2二玉のとき2一飛成までで、早く詰んでしまいます。これは不正解となります。
3一飛成捨てと、再度飛を活用しての詰上りは、すでに常識的な手筋になったことでしょう。飛の不成によって解決する、やさしい例題でした。



(第3図)
第7回第3図

第3図。下平幸男七段著「初級詰将棋手帖」の例題です。
このような形を解くコツは、まず4三玉と逃げたら詰みという手段を探すこと、それには3一と2二としかありません。この場合いづれも4三玉なら2一角成までとなりますが、ただ3一とには2二玉という手があり、1三玉と脱出されてしまいますので、着手は2二とに決定されます。
2二とに対し同玉なら2一龍・1三玉・2三龍まで簡単です。そこで2二と、同銀が必然で途中図になります。

(途中図は2二同銀まで)
第7回第3図途中図

将来型の歩詰め局で、詰方の大駒がナマで置いてある場合には、大体においてその駒は「不成」として使用すると考えて差しつかえありません。
途中図でも1二角がナマ角なので、2一角不成としてみましょう。以下3三玉で歩詰め局になりますが、”妨害駒の移動”による手段の活用で、3一龍・同銀と取らせてハケ口をつくってやり、3四歩打ちを可能にして詰上ります。このときもし2一角成ですと、この3四歩打ちができず、それこそ本当の不詰(歩詰)になってしまいます。
第3図。2二と・同銀・2一角不成・3三玉・3一龍・同銀・3四歩・2二玉・1二歩成まで、9手詰。



(第4図)
第7回第4図

第4図。御存知・無鑑査作家・金田秀信著「実戦型詰将棋一〇〇題」の第17番です。
とに角、玉の頭から銀を打つより方法はないが、どちらから打つかで玉の運命が決定します。駒配りをよく観察しますと、詰方の1四歩がジャマ駒であることに気付きます。そうです。この歩が無ければ直ちに1三飛成と攻められますネ。でもこれでは詰将棋になりませんので、1四歩の障害を配置したわけです。したがって、うまくこの歩を取り除けば解決します。
さて、着手は1六銀と2六銀とあるわけですが、どちらから打っても1四玉と歩を喰べて呉れるでしょうか?結論をいそごう。
1六銀なら歩を取るが、2六銀なら2四玉という落とし穴があるわけです。2六に打ったことによって馬の効きが遮断され、2四玉にビックリ仰天して1三飛成としても、3四玉・3五銀・4五玉で以下つかまりません。1六銀に2四玉なら、1三飛成・3四玉・3五馬までとなります。ジャマ歩が消えれば、1五銀と捨てて原型に戻し、歩詰めを避ける飛不成は練習済みで解決します。
第4図。1六銀・1四玉・1五銀・同玉・1三飛不成・1四合・1六歩・2四玉・3五馬まで、9手詰。



さりげない銀打ちにも、落とし穴を盛りこんだところにこの作品は価値があります。

(第5図)
第7回第5図

第5図。いままでの例題は、詰方が駒の働きにブレーキをかけて、「不成」の手を指したものですが、その全く逆の形態も考えられるわけです。すなわち玉方が、歩詰めを誘致するために守備駒の働きにブレーキをかけ、過剰守備力となることを避けるのです。
詰将棋のもつ独特の面白さといったようなものを、しみじみ感じさせる”玉方不成”の問題です。前回の第10図もその一例でした。
2三桂・同飛不成・2二角成・同飛・1二歩・同飛・2三桂まで、7手詰。



“守備駒の逆用”する解決法でよいわけですが、詰方に都合のよいように判断を下してしまっては失敗します。
初手の2三桂に対し、同飛成の一手と軽く考えてしまうと、以下1二歩・同龍・同金・同玉・3二飛・2三玉・2二飛成まで、桂が余って詰みますので正解ではなくなります。
歩詰めの形を、どこまでも強要するために採られる手段である、2三同飛不成という玉方の好手を、よく覚えて下さい。この一手に、この詰将棋の作品価値があります。
なお、初手に2二角成としますと、こんどは同飛成と皮肉に成ってきて、失敗します。
元禄時代の2代目名人・伊藤宗印という人に、『将棋精妙』という詰将棋百番がありますが、このまたの名を「成らず百番」と称し、百番ことごとくが、詰方および玉方の不成の手筋を含んでいるので有名です。
昭和元禄の今日、これに匹敵する詰物集として、八段・二上達也著『将棋魔法陣』があります、これは81番全部が不成の趣向で、このほかに番外19番の趣向作をとり入れ、計百番として刊行されています。この新旧”成らず集”から各一題をとりあげてみましょう。駒を並べて、よく鑑賞してください。

(第6図)
第7回第6図

第6図。『将棋精妙』の第7番です。
5五馬・同香・1二歩・2一玉・1三桂不成・同飛不成・1一歩成・同飛・同香成・同玉・1二歩・同龍・同と・同玉・1四飛・1三歩合・2二飛・同玉・2四飛・1一玉・1二歩・同玉・2三桂成・1一玉・2二成桂まで、25手詰。
手駒を順々に得るだけの作品ですので、手順は平易でした。玉方6手目、飛が成ってしまっては早詰になってしまいます。



(第7図)
第7回第7図

第7図。『将棋魔法陣』の第18番です。
6七銀・同香不成・6八桂・同香不成・8六飛・7七玉・6九桂・同香成・8七飛・7六玉・6八桂・同成香・8六飛・7七玉・7八歩・同成香・8七飛・7六玉・7七歩・同成香・8六飛まで、21手詰。
玉方6筋の香が成って呉れれば、詰方の歩が打てるところですが、頑固に拒絶反応を示します。しかし将棋の3大禁手を要求した6九桂には、玉方も”不成”がかなわず、遂に6九香成と相成り目的を達成します。
禁手を巧妙に逆用した面白い作品です。

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