詰将棋の能率的勉強法(6)(近代将棋昭和44年7月号)②

村山隆治氏の連載「詰将棋の能率的勉強法」、第6回の後半部分です。
② 妨害駒の移動
歩詰めというのは、詰方の打歩に対して玉が身をかわす余地のない時に起こる現象で、つまり行き詰まった状態なのです。
詰方の駒の配置が玉を取り巻いて、玉に動く余地がない時には、その詰方の勢力が過剰であるとして、それに該当する駒を捨て駒により削除し玉に動ける余地を与えるのが過剰勢力の削減手段でした。
ところが歩詰めという行き詰まりの状態にはそのほかに、玉方の駒自体が玉の動きを妨害している場合があります。ドブの詰まったようなものですから、ジャマ駒を動かしてハケ口をつくってやれば、水はやがて流れ出します。
このように、玉に動きを与える打開策が、妨害駒の移動による解決法です。

(第5図)
第6回第5図

第5図。ハケ口のない1一玉に、ゴミを取り除くための手が2三桂捨てです。これによって玉は歩詰めの形態より開放され、1二歩打が可能となるわけです。
2三桂 同歩 1二歩 2二玉 3二飛成まで、5手詰。



最も初学的な例題でしたが、これが基本となって次の問題に活用できます。

(第6図)
第6回第6図

第6図2三桂 同香 1二歩 2二玉 3二桂成 同銀 1一飛成まで、7手詰。
初手の2三桂捨てはハケ口の手筋ですが、ここで2一飛成とする手も考えられたことと思います。だがこれは以下、2一同玉 3二銀 1一玉で再び歩詰めの形になってしまいますが、この形はもはや解決の手段のつきたパーフェクト歩詰め形で手のほどこしようがありません。
2三桂 同香で1二歩を可能にし、2二玉と逃げたときの3二桂成捨てが、玉方の駒を移動させて脱出を封鎖する常用手段です。



(第7図)
第6回第7図

第7図。佐伯昌優六段著『詰将棋新作』の第76番です。
歩詰めの原因をなしている駒は1三馬ですが、いくら過剰勢力といってもこの駒を捨てたのでは、身もフタもなくなります。矢張りハケ口を開く2二飛成が正着。そしてもう一手2三桂と捨てて馬筋を通しておくことが肝心です。
第7図。2二飛成 同歩 2三桂 同歩 1二歩 2一玉 3一歩成まで、7手詰。
初手2一飛成を考えられた方は実戦的な人ですが、これは玉方の4一角がよく効いていますので、2三桂打ちができず失敗です。



③ 守備駒の逆用
玉を取り巻く詰方の駒の、過剰という状態が歩詰めの形に連がるわけですが、その解決法として、①過剰勢力の削減、②妨害駒の移動による手段を説明してきました。そのほかにもう一つの方法として、敵の守備駒を逆用し包囲形を縮めるための、抵抗力の利用があります。それをこれから説明しますが、歩詰めの現在型では最も多く見られる手筋であり、これは既に勉強した”穴ふさぎ”手段の応用問題といえます。

(第8図)
第6回第8図

第8図。1二玉に対して、1三歩と打つ手が歩詰めという行き詰まり状態です。この場合に玉の動きを制している2二銀が行動を起して、1一銀成としたら1三玉と逃げられてしまいます。
もしこの逃げ口の穴をふさいでおけば、1一銀成で、ハイそれまでよということになります。玉の包囲形をくずすことが適当でない場合には、このような守備駒の抵抗力の逆用が考えられるのです。
第8図。2四桂 同銀 1三歩 同銀 1一銀成まで、5手詰。



(第9図)
第6回第9図

第9図2三桂 同龍 1二歩 同龍 同銀成 同玉 2二飛 1一玉 2一飛成まで、9手詰。
両図とも、桂を捨てて玉の守備駒を呼び寄せ、勢力過剰による歩詰めの状態から、歩打ちの可能な状態に変える手法です。そして第8図はその抵抗力を玉の退路封鎖に用い、第9図では清算手段による局面の打開に、守備駒を活用させたものです。



(第10図)
第6回第10図

第10図。加藤一二三八段の『テレビ将棋講座・詰将棋』(43・7・7)出題図です。
考え方として1三歩が打てる形にもっていくことですが、それには守備駒を玉の近辺に呼び戻すよりありません。
まづ、すんなり1四飛と捨てて角を戻しますが敵もさるもの同角不成と応じて1三歩打ちを拒否します。そこで2四桂と第2弾を放ちますがこれが軽い手筋です。
玉方が同歩なら、②の”妨害駒の移動”となってハケ口ができるし、また同飛成なら1三歩が打て、以下同龍 2一銀不成までとなりますが、またも玉方は2四同飛不成として拒絶反応を続けます。これで途中図です。

(途中図は2四同飛不成まで)
第6回第10図途中図

図柄を観察してみますと、玉方が頑強な抵抗をして、依然として歩詰形ですが、上部への脱出口は自駒によって逆にふさがってしまったことがわかります。
そこで詰方は悠々と1一銀成で角を取り、離し角の手段で収束となります。
第10図。1四飛 同角不成 2四桂 同飛不成 1一銀成 同玉 1二歩 同玉 1三歩 同玉 3一角 1二玉 2二角成まで、13手詰。
玉方の不成は、歩詰めを誘致する手段として、よく用いられますので、独善で成ってしまい早詰めの誤解答をしないように、この機会によく覚えておいて下さい。



④ 不成の活用
「歩詰めに不成」という鉄則があるほど、よく利用される手筋ですが、これは前もって勢力の削減を計画した手なのです。当然に成れるところを、成らないでいく盲点を衝いた手でもあります。
この手段は次回に解説する”将来型の解決法”で、詳細に書きますので、この項では簡単に説明しておきます。

(第11図)
第6回第11図

第11図。佐伯六段の作品です。現在型の歩詰めで「不成」を用いる作品は、大変に珍らしいと思います。というのも現在型の不成手筋は、当然に”開き王手”の形をとりますので、ある程度形に制限を受けてしまい、従って自由な創作ができにくいからです。
この局面で1二飛成という手で詰めば、①過剰勢力の削減の項に含まれますが、この手では詰みません。とに角、開き王手をして飛を残しておく必要があります。
1二歩打ちを可能にすることを主眼におけば、2三飛不成より手はありません。
「不成」も勢力削減の一種であり、歩打ちを可能にする慣用手段です。
第11図。2三飛不成 4四歩 1二歩 同玉 2四桂 1一玉(途中図) 1三飛成 同桂 1二歩 2二玉 3二馬まで、11手詰。

(途中図は1一玉まで)
第6回第11図途中図

途中図で再度歩詰めの形になりましたが、1三飛成捨てという①項で学習した手法により解決します。



なお、冒頭に掲げた第1図の詰手順は
5二飛不成 3一玉 1三角 同金 2二銀 同銀 3二歩 4一玉 5一とまで、9手詰。
3手目の1三角に対し同桂なら、3二銀 2二玉 4三銀成 4二歩合(桂香も同じ) 3二飛 2一玉 5一飛成まで、歩が余って詰みますので1三同金が正しい応手です。
また、桂香歩以外の角金銀のいづれかの合駒なら、同飛成と清算して詰みます。
次号で学ぶ将来型の歩詰め局であり、初手5二飛不成として後の3二歩打ちを可能にする伏線を含みにした、辞世の詰物でした。


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