詰将棋の能率的勉強法(6)(近代将棋昭和44年7月号)①

村山隆治氏の連載「詰将棋の能率的勉強法」、第6回の前半部分です。
歩詰めの形(その1)とタイトルの下にあります。
詰将棋秘話
戦前の将棋ファンには馴染みの深い、故花田長太郎八段は、北海道・函館の出身です。幼少の頃より大変に詰将棋が好きで、そのせいか棋士になっても寄せの華麗さは定評があり、『寄せの花田』と喧伝されたものです。
生来、胃弱の先生はヒョロヒョロと背が高く、俳号も”仙骨”と称していた程で、その飄々とした格好が今でも思い出されます。猫の置物蒐集家としても著名であり、先生の部屋はいつでもこれら大小さまざまな置物で一杯でした。

辞世の詰物
(第1図)
第6回第1図
医師より死の宣告を受けし
昭和23年2月23日作
八段 花田長太郎

先生は死の直前まで将棋を捨てず、医師より死の宣告を受けた日においても、辞世の詰物(第1図)を弟子の塚田正夫名人(当時)に筆記させた程です。そして数日後の昭和23年2月28日、梅の花の香りと共にこの世を去りました。
故人を偲び、この辞世の詰物を詰めてみて下さい。
閑話休題。今回から打歩詰めという、いかにもこしらえた詰物という感じを起こさせる、特異形にはいります。

3 歩詰めの形
将棋の禁手の一つに、打歩詰めの禁というのがあることは既に書きました。これは詰方に対し、歩を打って詰めることはいけないという将棋の規定を、一つの障害として与えられた場合に該当します。そしてこの形は詰将棋独特のもので、めったに実戦の将棋には現われません。
歩詰めの局面は、
A 最初の駒配りが歩詰めである場合(現在型)
B 歩詰めの局面が途中に出現する場合(将来型)
とに分類されますが、その解決方法として、歩詰めという行き詰まりを打開する方法が、Aに適応し、歩詰めの形になることを前もって回避する手段を構(ママ)じておく方法が、Bに適応します。
A 現在型
歩詰めという行き詰まりを打開する方法は簡単で、歩打ちを可能にすればよいことになります。したがって歩打ちを可能にするテクニックが、現在型解決法の焦点でもあるわけです。なお、現在型の持駒は、当然角桂歩のいづれかの組合わせに限定されます。
① 過剰勢力の削減
過剰とは、必要以上に余分のある状態をいう言葉ですから、まず考えられることはその必要以上の余分な勢力を捨て去ることです。すなわち過剰勢力の削減を計ればよいことになります。

(第2図)
第6回第2図

第2図。有名な古作物で、歩詰め局の現在型です。
3四歩と打ちたい所、でもこれが打歩詰めの状態で禁手とされている一手、3四歩は打ってはいけない歩なのです。
そこで詰方はこの禁手を避けて、玉を詰ますことを求められているわけになります。つまり図面では、持駒の歩という質の不自由さと、玉を取りまいている詰方の勢力の過剰という状態が重なって、歩詰めという特殊な形態を現出しているわけです。”過ぎたるは及ばざるごとし”とか、返って不自由になってしまいます。
さて3四歩を打ってはいけないというこの局面では、2二龍の着手よりありません。無計画な2四龍も、同歩なら3四歩と打って詰みますが、同玉と取られていけません。
2二龍・2四玉となり、ここで1三龍では3三玉で千日手模様、3三玉でなく2五玉なら、1六龍・2四玉・1五龍・3三玉・3五龍までとなります。計画とは、ある想定のもとに企画をたてることですから、何事によらず無計画では成功しません。そこでこの局面に対して、ある想定をしてみましょう。それは若し(仮想図)のようになったら、3四歩打ちが可能になるということです。

(仮想図)
第6回第2図仮想図

1三龍が、ある日突然に消えていた!これぞ点的思考の発露であり、仮想図に結びつける具体的手順を、考えだせばよいわけです。
第2図。2二龍 2四玉 3三龍 同玉 3四歩 2四玉 1三角成 2五玉 3五馬まで、9手詰。
この問題は、原型のままで過剰勢力の1三龍を取り去ることがポイントでした。龍だけに捨て去ることのできない難しさが面白いねらいとなっています。



(第3図)
第6回第3図

第3図。この詰将棋も第2図同様に、詰方の勢力過剰が原因となっている、現在型歩詰め局です。
過剰とは3四角の存在で、これを上手に処理すれば解決します。
1二角成 同玉 2四桂 2一玉 3二桂成 同香 2二歩 1二玉 2四桂まで、9手詰。
1二同玉のところ同香なら、2二歩 1一玉 2三桂まで。
原型に戻すための2四桂から3二桂成捨てが、この種の慣用手筋です。



(第4図)
第6回第4図

第4図。『将棋の詰め方・ABC』のなかの問題です。これは過剰勢力に違いはありませんが、チョッと風変わりな部類に属す、歩詰め局といえましょう。
過剰駒は3七馬なので、初手に1五馬と捨てるのが正着です。しかしそのあと直ちに歩打ちを考えたくなる所ですが、この常識では詰みません。というのも、1五馬 同玉 1六歩と打って1四玉の形にしても、角だけでは手段に窮してしまうからです。ここでは1六歩と打たずに、2四角とするのが正しい手で、(途中図1)となります。

(途中図1は2四角まで)
第6回第4図途中図1

途中図1以下、1四玉で再び歩詰めの形になってしまいますから、着手しにくい2四角ですが、この角は玉方の香を1三の点で取るための深謀なのです。ここで1三角成が妙手となります。(途中図2)

(途中図2は1三角成まで)
第6回第4図途中図2

これは同香の一手、そこで1五歩の打捨てから香を入手して解決します。
第4図。1五馬 同玉 2四角 1四玉 1三角成 同香 1五歩 同玉 1三龍 1四合 1六香まで、11手詰。
この詰将棋は歩詰めの形のなかでも、歩詰めを回避しつつ敵駒の入手をねらうといった、風変わりな解決法を要求する作品でした。



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質問ですが、

花田さんのは余詰めがありませんかね?3手目の▲1三角を△同桂とすると、▲3二銀 △2二玉 ▲4三銀成 △4二金合(最善) ▲同飛成 △同銀 ▲3二飛打 △1二玉 ▲1二金打 という余詰です。4手目△同桂 で早詰なら問題ないですが、13手詰になりますよ。不完全かなあ?

詰め人間さん

おっしゃる通り、4手目同桂で13手掛かるようです。
駒が余らなければ、こちらが正解ということになりますが、この場合は歩が余りますので、変化長手数ですね。
短編での変化長手数は、現在では不完全扱いですね…。
余詰とは詰方の手が複数あることを意味しますので、この場合は当たりませんが、不完全というのであればその通りだと思います。
ただ、67年前のことですから、当時は許容されていたとしてもおかしくありません。
また、気付いていたけれども、事の経緯を考慮して見逃した、という可能性もありますね。

御回答

どうも御解答ありがとうございます。
私も詰め将棋が好きでよくやるのですが、一番好きなのは、花田長太郎さんの弟子・塚田正夫さんの作品です。

詰め人間さん

「塚田詰将棋代表作」は所持していますが、しっかりと読んだとは言えません。
無理のない形から妙手が飛び出すというぼんやりした印象です。
読み返すと新たな発見があるかもしれませんね。時間が取れた時に、そうしてみたいと思います。
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