詰将棋の能率的勉強法(5)(近代将棋昭和44年6月号)②

村山隆治氏の連載「詰将棋の能率的勉強法」、第5回の後半部分です。
(第5図)
第5回第5図

第5図。「サンスポ・詰め将棋」44・2・16・加藤博二八段の出題です。
この詰将棋は退路阻止の例題ですが、前図と関連が深いので敢えてとりあげました。それは全く同じような逃げをもっていても、形によってその防止方法が違ってくることを、再学習したかったからです。
前図では2四龍が遠く左辺にも効いていましたので、序盤で5一玉と逃がしても詰めることができましたが、本図ではそれがありませんので、4一玉とされてはもうダメです。となれば、3一金捨てから2一飛の阻止手段より方法がないことがわかりますネ。
3一金・同玉・2一飛・3二玉で途中図ですが、

(途中図は3二玉まで)
第5回第5図途中図

ここで平凡に1二龍とはいる手が巧妙な手段。3三桂成が手筋みたいですが、同角で後に3三玉の逃げが生じてダメです。1二龍に対し玉方は合駒するよりありませんが、金以外では3一飛成・同玉・2一龍で早詰みですので、2二金合が最善です。金合いでは2一龍が不可能になりますが、2二飛成と切って3一金の軽手は、容易に発見できる筈です。
第5図。3一金・同玉・2一飛・3二玉・1二龍・2二金合・同飛成・同角・3一金・同玉・2一龍まで、11手詰。



B 二方向逃げの形態
これまでは一方向の逃げ道を持つ玉形の詰め方を説明してきましたが、こんどは逃げの複数すなわち二方向に逃げ道のある玉形について勉強しましょう。
二方向逃げといっても、逃げという行為を突き詰めていけば一方向逃げも二方向逃げも変わりはないのです。しかも具体的には二方向の逃げを一度に処理する手段はありませんので、まづ一方向に限定し、それから本来の逃げを制するわけです。
ところで二方向を一方向に限定する手段ですが、ここで逃げの適応手段を思い出して頂きましょう。
①阻止 ――誘い込む――
②封鎖 ――穴ふさぎ――
③牽制 ――引き戻す――
以上の3手段でしたが、逃げを一方向に限定させるためにも、この手段は活用されることになります。

(第6図)
第5回第6図

第6図。古作物の一題です。2三玉は1四から上辺に、また3二から左辺に逃げを持っています。これが二方向の逃げを有する形態なのです。言いかえれば、逃げの限定点を2個もっていることで、それは1四3二の両点ということになります。
このうちの一つをまづ制しなければいけませんが、このような斜めの逃げには、角という駒の性能が活用されます。
4一角・同金・3二角・同金・1三金まで、5手詰。
このような形での4一角捨ては、すでに常識となっていますが、この手筋を知りませんと、その発見は大変なはずです。例えば単に1四の逃げを封じる1三金では、3二玉とかわされて、4一と4三の両逃げを制することができません。
4一角捨てが②の封鎖で、続く3二角捨てが③の牽制の手段です。つまり二方向という複雑化した逃げには、3つの手段の総合的活用が必要となります。



(第7図)
第5回第7図

第7図。二上八段の作品です。上辺と下辺に複数的逃げをもつ玉の形態、2三飛打ちでこの逃げは簡単に制止できますが、1二玉とさがられると以下、1四飛・1三歩合・同飛左成・同桂・2三金・2一玉で指し切りです。
1四と2四への上辺逃げを封じる手段のうち、2三飛打がダメとなれば玉の頭から飛を打つよりないことになりますが、2四玉の逃げに対処できるよう、1五飛と打つのが形ですから、覚えておいて下さい。
1五飛に対し、2四玉なら2五金の一発、また1五同角ならその時こそ2三飛・1二玉・2二金まで。そこで2二玉と逃げるよりありませんが、これで上部退路は封鎖され一方に逃げを限定したことになります。
1五飛・2二玉で途中図を見て下さい。

(途中図は2二玉まで)
第5回第7図途中図

一方向逃げの形になったことが、よくわかります。途中図となって次の一手が難問、ワナをしかけて3一玉と逃がさない手段を考えて下さい。
1一飛成の手が面白そうですが、3一玉で不詰(1一同玉と取って呉れれば、1二飛・同玉・2三金・1一玉・1二香まで、キレイに詰みます)。3一玉と逃がさない他の手段は、第4図でも紹介したように、そこに逃げても詰んでしまえばよいことで、そんな手を発見することが”キメ手”にもなります。
ここで俗手の1二飛打ちが好手、3一玉なら2三桂不成があります。
第7図。1五飛・2二玉・1二飛打・同香・同飛成・同玉・2三金・1一玉・1二香まで、9手詰。
わざわざ敵角の効き筋に打つ初手1五飛、この点以外に飛を打つと2四玉で詰まなくなるねらいが、作者の意図です。



C 逃げの変則形
一方向逃げのような形をしていますが、その逃げを封じようとしますと他方がガラ空きになって、退路が開けてしまうような逃げのある詰将棋がよくあります。こんな形態をした詰将棋を、逃げの変則形として区分してみました。
その解決方法は二方向の逃げの問題と同じように、捨て駒によって一方向の逃げに限定させることです。この変則形は逃げの正体がハッキリとしない所が特徴、したがってどの方向に逃げの連鎖反応が生じるか、その実体をつかむことが肝心です。

(第8図)
第5回第8図

第8図。この詰将棋は一見して、上辺のみに逃げのある形に思われますが、それを封じるため阻止の手段を活用した1三馬の好手には、3二玉という思わぬ穴があいてしまいます。(参考図)

(参考図は3二玉まで)
第5回第8図参考図

しかし、この1三馬は同玉と取れば頭金だし、また3四玉も頭金なので、詰手筋だなという勘がひらめきますが、いきなりの1三馬はタイミングが悪いのです。参考図であわてて3一馬では、もとの2三玉となり、これは果てしない千日手のはじまりで詰方の負け。
つまりこの詰将棋を一方向逃げと判断すると失敗してしまうわけです。必然的な1三馬にこのような落し穴があることを思えば、逃げを一方向に限定してしまう準備工作が必要なことがわかります。この2三玉は上辺と下辺の二方向に逃げを持つ、変則形の玉だと判断を下した人は、逃げ道限定の2四金捨てを点的思考の範囲で発見して頂きたいものです。
第8図。2四金・同玉(途中図)・1三馬・同玉・1四金まで、5手詰。

(途中図は2四同玉まで)
第5回第8図途中図



(第9図)
第5回第9図

第9図。二上八段の作品です。この玉は2二から1三へと、一方向逃げのように感じられます。でも詰方の馬をうかつに動かすと脱出されてしまいます。
4二馬・2二玉・3一馬・3三玉で、上辺に穴があいてしまいました。これによってこの詰将棋も第8図と同じように、変則逃げの形であることがわかります。このような問題を解くコツは、まづ玉の形を決めてしまうこと、これが肝心です。
3三銀の着手が形を決める最善手、ここ2一銀も形を決める手として面白いのですが、2二玉で効果はありません。2二玉の形のときには、詰み格好にするのが考えるヒントになります。
さて、3三同玉なら4四金、2二玉・3一馬まで簡単、3三同銀と取って途中図です。

(途中図は3三同銀まで)
第5回第9図途中図

この局面で4三金が手筋のように見えますけれども、同桂と取らずに軽く4一玉と逃げられ、今さげたばかりの銀が効いてきて詰みません。再度形を決める2二金捨てが絶妙な手段です。今度4一玉なら3一金のすりこみをみています。2二金捨て以下同銀を強要し、4二馬から3三桂捨ての軽手で解決します。
第9図。3三銀・同銀・2二金・同銀・4二馬・2一玉・3三桂・同銀・3一馬まで、9手詰。
形を決める3三銀と2二金の連系手段を、この作品から学びとりましょう。”あやつり人形”のような銀の動きと、用兵の妙が印象的です。



まとめ
逃げ道のある形
A 一方向逃げの形態
① "誘い込む"方法(阻止手段)
大駒を捨てることなく、駒の活用により逃げを防ぐと共に、玉を捕えるのに都合のよい点まで誘い込む方法。
② "穴ふさぎ"方法(封鎖手段)
逃げ出していく抜け穴に捨て駒をし、穴ふさぎしてしまう方法。
③ "引き戻す"方法(牽制手段)
詰方の持駒の性能を活用し、大駒の捨て駒により、玉の逃げ出す瞬間に引き戻してしまう方法。
以上、三つのオマジナイで、その適・不適を判断すること。
B 二方向逃げの形態
阻止・封鎖・牽制の三つの鍵を総合的に活用し、二方向の退路をまづ一方向に限定すること。
C 逃げの変則形
捨て駒によって逃げの形を限定すること。
あとはBと同じ適応手段で解決します。
                            ――逃げ道の項おわり――
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