詰将棋の能率的勉強法(5)(近代将棋昭和44年6月号)①

村山隆治氏の連載「詰将棋の能率的勉強法」、第5回の前半部分です。
逃げ道のある形(その2)とタイトルの下にあります。
思考の形
詰将棋を考えるのには、二つの思考方法があります。自分の経験と棋力とによって相違しますが、それは”線的思考”と”点的思考”です。
前後に連絡を保ちながら連続的に考えるのが線的思考、ポンポンと飛躍的に考えをはづませるのが点的思考、そしてこの点的思考こそ現代の思考法だといわれています。
常識的にはこの線的思考の方が、ミスが少ないことになりますが、詰将棋を考えるのには、思考の飛躍性ともいうべき点的思考の方が、より重要になってきます。
能率的勉強法の目的も、この点的思考の培養と育成にあるわけです。
さて前回に続き、穴ふさぎ方法の例題から学習しましょう。

(第1図)
第5回第1図

第1図。原田泰夫八段の作品です。角で退路を封鎖する問題。『限界点に捨て駒』の鉄則により、まず逃げの限界点を決めることが大切です。
図面をよく観察してみよう。玉が2四にでてきても、3五の点が玉方の駒でふさがっていれば、2三龍で詰むことがわかります。このように、”もしも……になっていれば”という仮定は、点的思考の発露であり、詰将棋を解く勘どころとして大切なことです。
逃げの限界点が3五とわかりましたので、3五角と捨て駒をします。この点以外、例えば5七角などと角の安全をはかった攻め方をすれば、4六に合駒をされて肝心の3五がふさげず失敗します。そのために玉方の4五歩が配置されているのです。3五角に対し、同龍は2三龍、2四合も2三龍なので3五同歩となります。(途中図)

(途中図は3五同歩まで)
第5回第1図途中図

途中図を見て、あの手筋だな!とピンときた人は相当な実力者。でも前回までをよく理解できた読者なら、”逃げ道に捨て駒”という詰棋忍法を思い出してくれるでしょう。
2四銀がその妙着。同玉および同歩なら2三龍をみて、まさに詰将棋的手筋ですが、こんな手が無雑作に考えつくように、やがてはなるはずです。2四同龍で穴は完全に封鎖されてしまいましたので、あとはゆっくりと仕(ママ)末をすればよいことになります。銀打ちを作る1二とが軽い手で詰上ります。
第1図。3五角・同歩・2四銀・同龍・1二と・同香・2二銀まで、7手詰。



(第2図)
第5回第2図

第2図。「サンスポ・詰め将棋」芹沢博文八段の出題図です。本題も”穴ふさぎ”を利用した作品ですので、とりあげてみました。まづ正解をやってみましょう。
3四桂・同歩・1一銀・2一玉・5一飛成・3二玉・2二銀成・4三玉・5三龍まで、9手詰。
なぜ初手に3四桂と打ち捨てるのか?それはこの手をはぶいて3手目の1一銀より進めてみるとよくわかります。最終5三龍としても、3四玉と逃げられてしまうのです。参考図をよくみて下さい。

(参考図は3四玉まで)
第5回第2図参考図

そこで逆算式に前に戻って、これは初手で3四桂・同歩と取らせ、穴をふさいでおけばよろしいということがわかります。このような問題は相当なツメキストでも、図をみた瞬間に3四桂を発見するのは困難です。本筋コースを追い『ウーン、ここに逃げられなければ詰むぞ』ということになり、パッと逆算式に気付くものなのです。
“穴ふさぎ”の手筋は、あらゆる機会にでてきますので、忍法穴ふさぎ術をお忘れなく。



③ 玉を引き戻す方法(退路牽制手段)
“阻止”と”封鎖”とは、共に逃げる玉を詰方の都合のよい地点にまで引き込み、または封じこめるのを目的としていましたが、この”牽制”とは、逃げていく玉の背後からその行動を奪う手段をいうのです。ですからこの”引き戻す”には、逃げる玉よりもそれを追う方の性能が勝っていることが条件です。
つまり逃げる玉を引き戻すものは、飛・角の大駒であり、この飛び道具が更に他の駒の協力を得て、玉の死命を制するのです。言いかえると”阻止”と”封鎖”とは、玉の逃げを取り敢えず阻む間接的手段でしたが、”牽制”とは絶対的性能をもって、一挙に玉に迫る直接的手段ともいえます。
猫はいとも簡単に、ネズミを捕えるように人間は考えていますが、これはとんでもない思いすごしです。猫なりの苦心がいることは、チョロチョロ動くネズミの出口にそっと近付いて、じっと機会のくるのを待ち、来たるべき動作に備えているのを見てもよくわかります。
牽制という手段も、飛角の飛び駒を放つまでの準備工作が問題なのです。

(第3図)
第5回第3図

第3図。二上八段の作品です。逃げ道が3三から3四と、はっきりしています。これを封じる方法として3一龍が考えられますが、その放つ時機をあやまっては失敗します。3三の点までは捕捉範囲、3四となると見込みのないことをまづ記憶にとめておきます。
いきなり3一龍と逃げを牽制する手段を検討してみましょう。以下3一同玉となり、2二金は4二玉で、また4一金は3二玉でいづれもダメ。こうなりますと何等かの準備工作が必要なことがわかりますネ。そうです、4二金捨てという穴ふさぎのエサが正解です。
この金打ちに対し、3三玉と逃げだしますと足の早い3一龍でつかまってしまいます。4二同金と取らしておいて、3一龍と逃げを牽制し、玉を引き戻すのが好手です。(途中図参照)

(途中図は3一龍まで)
第5回第3図途中図

第3図。4二金・同金・3一龍・同玉・2二金まで、5手詰。
この詰将棋でも、例の穴ふさぎ術が運用されていました。



(第4図)
第5回第4図

第4図。「九手詰競作」・大友昇八段の作品です。形から判断しますと、5一玉と逃走させては不詰となるように考えられますし、また「ヒント」にも、5一玉とのがさぬ工夫とありますので、これが先入観となって禍をなし、4一金捨てより3一飛として5一玉の逃げを防ぐことを考えがちです。
かく申す筆者も、作者の企図した妖術に幻惑され、正解の発見に大分時間をとられてしまいました。2四龍が6四龍と運用できることに気がつかないと、本局はドロ沼に足を突込むことになります。
4一金・同玉・3一飛では、5一玉の逃げは防げますが、以下4二玉で3三角成・3一玉・2二歩成と迫っても4一玉で詰みません。また3三角成のところ3三龍としても、同桂・同角成・3一玉・2二歩成・4一玉でこれもダメです。
5一玉と逃さないということは、ウラをかえせば5一玉と逃がしても詰む順があればよいことになります。ここまできて3一角成の正着が発見できる筈です。3一角成に5一玉なら、4一飛・6二玉・6四龍・7二玉・7三金で詰みます。そこで3一角成・同玉で途中図となりますが、

(途中図は3一同玉まで)
第5回第4図途中図

この局面で2二歩成では、4二玉・4一金・同玉・3一飛・4二玉で2一桂が効いていますので詰みません。守備桂の移動(どける)を計る3三龍が巧い手です。3二金合なら、2二歩成・4一玉・3一飛・同金・同龍まで。3三同桂と取らし2一飛で詰み上ります。
第4図。3一角成・同玉・3三龍・同桂・2一飛・4二玉・4一金・3二玉・2二歩成まで、9手詰。
解図者の心理的盲点の機微をついた、佳作品と思います。

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