詰将棋の能率的勉強法(4)(近代将棋昭和44年5月号)②

村山隆治氏の連載「詰将棋の能率的勉強法」、第4回の後半部分です。
(第5図)
第4回第5図

第5図。古作物の例題です。逃げ道は1三から1四へと開けています。1三までは安全圏ですが、1四に逃がしたら大変と気が付いた瞬間、反射的に1一飛成または2一飛成が浮んでこなければ、この適応手段を学んだ効果がありません。
2四桂・同歩・2一飛成・同玉・3二銀不成(途中図)・同玉・3三金・4一玉・4二金打まで、9手詰。

(途中図は3二銀不成まで)
第4回第5図参考図

初手の2四桂捨てが巧妙なワナで、変化の2三金打を作るために欠くことのできない事前工作。これをやっておかないで、いきなり2一飛成と餌を与えても、以下同玉(1三玉なら2四金がある)・3二銀不成・1二玉・2二金・同玉(1三玉なら2三金・1四玉・2四金打まで)・3三金・1三玉・2三金・1四玉で失敗します。なお初手の2四桂に対し玉方が1三玉なら1一飛成でオシマイ。
5手目の3二銀不成が大切な阻止手段で、ここ成ってしまえば同玉と取らずに1二玉と逃げられ、上部に逸走されてしまいます。成っていなければ、1二玉に対して2三金と押さえることができますが、これは初手2四桂捨てで2三の好点を、空所にしておいた演出効果です。
第5図の場合、玉は逃げだと判断し、したがって逃がさないという適応手段を心得ていれば、牽制手段の2一飛成がねらいであることに気が付く筈です。そしてその事前工作の2四桂捨ての手段も、2一飛成の変化を読んで選ぶことができます。
考えられるすべての王手を丹念に読み重ねていくのでは、詰将棋以前の行為であって時間の浪費にすぎません。それこそ現在流行の”コンピューター”(電子計算機)がやる分野、ツメキストは”勘どころ”を覚えることが上達には必要です。
この詰将棋では、途中図での3二銀不成という阻止手段の”キメ手”をお忘れなく。



(第6図)
第4回第6図

第6図。佐藤大五郎七段の詰将棋です。これも逃げの形であることは、一見してわかりますネ。そうです。2四に玉が飛びでたら、宇宙のはてに消えてしまいます。
2四にでる手を防ぐ手段には、1三龍、1五角、5一角、4二角と四つありますが、どれが正しい着手なのか検討してみましょう。
――1三龍の阻止は、2三に合駒をしても、また4二玉と逃げられてもダメです。
――1五角は2四合なら2五桂・4二玉・2四角・同龍・5三銀で詰みですが、1五角のとき2三玉と軽くかわされると詰みません。
――5一角は、4二合なら1三龍・2三合・2五桂までで詰みますが、5一同龍と取られて以下、3四銀・2四玉にてダメです。
したがって4二角の牽制が正しい着手となりますが、同玉のときつぎなる一手がチョッとわかりにくいと思います。平凡な3一銀は5三玉と死角に逃げられてしまいますし、3四桂の詰将棋らしき手も、同龍・5三銀(好手)・3三玉にて不詰となります。
詰棋忍法の一つに”逃げ道に捨て駒”という棋術があります。5三玉と逃げられて詰まなくなるのは、打った3一銀がジャマになり、龍の行動を束縛するからです。そこで逃げられて困る5三の絶好点に、先廻りして打ち込むのが好手となります。(途中図)

(途中図は5三銀まで)
第4回第6図途中図

この辺が詰将棋の面白さといえましょう。”誘い込む”手段の5三銀・この必殺剣に対して、同玉なら5一龍まで。また3三玉なら1三龍・2三合・2五桂までなので、5三同龍と取りますが、以下3四桂・3三玉・2二龍で詰上ります。
第6図。4二角・同玉・5三銀・同龍・3四桂・3三玉・2二龍まで、7手詰。



② 玉の、穴ふさぎ方法(退路封鎖手段)
“穴ふさぎ”とは、逃げという玉の形態に対して、その脱出口を捨て駒によってふさいでしまう行為をいったもので、逃げ道のある形の詰将棋のうちで、この穴ふさぎ型が最も多く出現しています。
座敷に飛び込んできたネズミを、捕えるにはどうしたらよいでしょう。まず戸を全部しめきってしまい、ネズミが逃げていく穴をふさいでしまうことが先決です。こうしてしまえば、それはもう逃げという障害の一つを取り除いたことになります。
あとはホーキで追いかけるか、猫を借りてくるかで始末がつきます。ですから”穴ふさぎ”という手筋は最終的なものではなく、あとに別な手段が続くことを頭に入れておく必要があります。逃げ道を封鎖する筋は、あらゆる機会にでてきますので、まことに利用価値の多い手筋です。

(第7図)
第4回第7図

第7図。”穴ふさぎ”の基本型です。2二金としては、1三から2四へと逃げられてしまうことはあきらか。そこで2四の抜け穴を封じてしまう2四桂捨てが基本手筋で、以下同歩・2二金・1三玉・3二金・2三玉・2二角成まで、7手詰。
なお、3二金のところ欲ばって2一金の開き王手では、3一飛と虎の子の角を抜かれて失敗します。



(第8図)
第4回第8図

第8図。古作物の傑作詰将棋です。平凡に7四角と攻めると、4二玉から3二・2三へと脱出されます。逃げ道の限界点は3二、この逃げは絶対に防止して下さい。それにはこの点を先に占領してしまえばよいわけです。『限界点に捨て駒の手あり』という鉄則こそ、解決のキーポイント。3二の穴をふさぐには、飛の横効きを活用して先着する、3二飛が素晴らしい一手となります。(途中1図)

(途中1図は3二飛まで)
第4回第8図途中1図

この局面で玉方3二同金右(4一の金が動く)では、7四角で以下、4二玉・4一飛まで、また6二玉は6三角成まで。そこで3二同金左と取って、途中2図です。

(途中2図は3二同金左まで)
第4回第8図途中2図

この形での7四角は、まだ時期尚早で4二玉から3一玉へと遁走されます。ここで第6図のときに述べた”逃げ道に捨て駒”という忍法を思い出して下さい。逃げられて困る4二へ、先廻りして打込む手が巧妙です。同玉なら6四角で合効かず、やむなく同金上と取りますが、ここまできてやっと初期の目的であった7四角が実現しました。
第8図。3二飛・同金左・4二飛・同金上・7四角・6二玉・6三角成まで、7手詰。
連続飛捨ての妙技をよく鑑賞して下さい。
“穴ふさぎ”手筋を全く知らないで、この詰将棋が独力で解ければ、立派な有段者と認定されるほどの傑作品です。

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