詰将棋の能率的勉強法(4)(近代将棋昭和44年5月号)①

村山隆治氏の連載「詰将棋の能率的勉強法」、第4回の前半部分です。
逃げ道のある形(その1)とタイトルの下にあります。
詰将棋とは、詰め方に困難を与える障害が置かれてあって、詰める人がその障害を解明する知的パズルであるということは、すでにおわかりのことと思います。
前回までの”守備駒のある形”は、形から簡単に判断がつく障害の一つでしたが、今回から解説していく”逃げ道のある形”も、同じように形から判断がつく、障害の一つであることに変わりはありません。
詰将棋を考えるには、手筋の基礎=原理・原則が大切です。この基礎が築かれていなければ、応用はできません。それは複雑そうに見える詰将棋も、基礎手筋が複合的に組み合わされているに過ぎないからです。

2 逃げ道のある形
A 一方向逃げの形態
逃げ道のある形とは、玉に脱出されては困るという抜け口のある場合のことで、玉の形態の一つであることに違いはありません。逃げ道が一方通行になっている形を、一方向逃げ形態の詰将棋と称します。
逃げ道のある形は、逆にいえば玉を逃がしてはいけないという命題を与えられたことなので、それだけに考え方としては比較的にやさしいはずです。
逃げる玉と、それを追跡する詰め方の状態とは、丁度ネズミを捕える方式とよく似ています。ネズ公に悩まされている家庭では、つぎの三つの手段のいずれかを採用して、退治に懸命になっているはずです。
イ、餌を与えてワナに誘い込む。
ロ、逃げ道の穴を封じて処置をする。
ハ、ネズミより行動の早い猫で捕える。
以上の方法を、「逃げ道のある形」の詰将棋に当てはめてみますと、
① 退路阻止手段
大駒を捨てることなく、駒の活用により逃げを防ぐと共に、玉をとらえるのに都合のよい点まで”誘い込む”方法。
② 退路封鎖手段
逃げだしていく抜け穴に、捨て駒をし、”穴ふさぎ”してしまう方法。
③ 退路牽制手段
詰方の持駒の性能を活用し、大駒の捨て駒により逃げだす瞬間に”引き戻し”て捕えてしまう方法。
と、いうことになります。
つまり、逃げていく玉を逃がしては詰将棋にはなりませんので、まず何をおいても逃がさないことが肝心です。そしてそのための持駒が必ずあるはずなので、これを逃げの形態によってうまく運用すればよいわけです。
逃がさないための手段、”誘い込む”(阻止)・”穴ふさぎ”(封鎖)・”引き戻し”(牽制)の三つのオマジナイが、逃げのある玉という形態に対する適応手段の基本となります。図例によって説明をしましょう。

(第1図)
第4回第1図

第1図。――退路阻止――
3一玉のネズミは、2二から1三へと逃げる路線をもっています。したがって平凡に4二金打では、2二玉・3一角・1二玉・2二金・1三玉・2一金・2四玉と脱出され、といって1二玉のとき2四桂と打捨てて見ても以下、同歩・2二金・1三玉・2一金・2三玉と、こんどは今あいたばかりの穴から脱けだしてしまいます。
餌を与えてワナに誘い込むには、どうしたらよいでしょうか?
3二金・同玉・2四桂・同歩・4一角・2二玉・2三金・3一玉・3二金まで9手詰。



3手目の2四桂に対して、2二玉と逃げれば、3一角という捨て駒の餌を与え、以下同玉・3二金まで7手詰ですが、前記の応手の方が手数が長いので、9手詰が正解となります。
3二金とまず餌を与え、2四桂捨てが詰め方のワナに相当し、見事このワナに引掛けて成功した”退路阻止”手段の基本題でした。

(第2図)
第4回第2図

第2図。――退路封鎖――
1三角・同香・4二金・2二玉・3二金・1一玉・2二金まで、7手詰。



ネズミの抜け出す穴(1三の点)を、遠くから効く駒でふさいでしまう”退路封鎖”手段の基本題です。したがって穴をふさぐには必ず飛・角・香のいずれかの駒が、持駒には必要なわけです。

(第3図)
第4回第3図

第3図。――退路牽制――
3一角・同玉・3二金・同玉・4二飛・3一玉・4一金まで7手詰。



ネズミが猫につかまってしまうのは、ネズミの逃げようとする動作より、猫の手の動作が敏捷だからです。1三玉から2四玉へと逃げようとするネズ公を捕捉する、角の斜線効きの効能に注目してください。
駒の性能を活用した”退路牽制”手段の基本題です。これも大駒が盤面か、または持駒に必要です。
以上三つの手段のうち最も巧妙なものは、餌を与えてワナに誘い込む方法で、詰将棋としても面白いと思います。ともあれネズミ退治は、知恵くらべ・根くらべともいわれますが、詰将棋退治も全く同様です。
① 玉を、誘い込む方法(退路阻止手段)
阻止とは逃げという玉の形態に対して、脱出路へ逃がさないということですから、脱出路線と反対の方向に、もしくは玉を捕捉するのに都合のよい点まで、誘い込む手段のことなのです。

(第4図)
第4回第4図

第4図。「九手詰競作」内藤国雄八段の作品です。単に”阻止”だけをテーマにした詰将棋は少く、ほとんどが”牽制”と”阻止”とがミックスされていますが、本局はその数少いテーマの一つです。
玉の2三から3四への逃げは4五角出にて防げますが、そのタイミングが問題。というのもワン・クッションをおかずいきなり4五角では、2三金合の好防で以下、3二飛として1一玉でこの金がよく効いてきて失敗するからです。
まず平凡に3二飛で玉を2三に追いだし、そこで4五角の阻止手段が正着となります。これで途中図となりますが、

(途中図は4五角まで)
第4回第4図参考図

3四に合駒をしたのでは2二飛成までの一発、そこで軽く3四飛と移動して逃げ道をあけるのが巧妙な受けで、この種の合いを”移動合い”と称し、高級手筋の一つになっています。
3四飛の移動で穴はあいたものの、2二飛成・1四玉に角の二段活用ともいうべき、3六角で飛の効きを無能とし、2四龍で解決します。
第4図。3二飛・2三玉・4五角3四飛・2二飛成・1四玉・3六角・同飛・2四龍まで、9手詰。



本局でもわかるように、単に”阻止”だけのねらいでは作意が平凡になってしまいます。そこで適当に誘い手を挿入して、詰後感をよくするのが詰将棋を創作するコツです。
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村山隆治氏の連載は毎回楽しみにしております。
少し疑問に思ったのですが、本文は全て手入力なのでしょうか?

久遠さん

コメントありがとうございます。
はい、全て手入力で毎回更新しております。
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