詰将棋の能率的勉強法(3)(近代将棋昭和44年4月号)②

村山隆治氏の連載「詰将棋の能率的勉強法」、第3回の後半部分です。
(第8図)
第3回第8図

第8図。これも風変わりな方法で”取り払う”好題です。
まづ、いきなり守備金を3二飛成りと清算してみましょう。以下、同玉・2三銀・4一玉で詰みません。清算した結果、玉が2二の絶好点にいないと詰まないことがわかります。それには金を2二の点に一度呼び戻しておくことが必要です。
そこで初手に2二銀と打捨てるのが巧い手で、参考図となります。

(参考図は2二銀まで)
第3回第8図参考図

同玉なら龍の横効きを利用して2三銀で解決します。したがって玉方は同金と取りますが、ここで同龍と清算し以下、2三銀・3一玉・3二金までとなります。この寄せ方も、実戦の参考となりますので、詰め形として覚えておいて下さい。



(第9図)
第3回第9図

第9図。「サンスポ詰将棋」・(44・1・29)塚田九段の出題です。これは”追い打ち型”と称する守備駒清算方式で、まことに実戦的であり寄せの参考になります。
3一銀の守備力が強いので、5一金と攻めても、また5二銀としても、3二玉から2一玉とかわされて失敗します。したがってどうしても、この銀を取り払ってしまう必要があります。
初手4二銀打が実戦的であり、この際の最善着手。3二玉なら3三銀成・2一玉・2二金・同銀・同成銀まで。そこで4二同銀と取らざるを得ませんが、ここで5二金と追い打ちを掛けて、守備銀を清算してしまうのが手順です。4二銀・同銀・5二金・3二玉・4二金・2一玉(参考図)となります。

(参考図は2一玉まで)
第3回第9図参考図

ここで3二金捨てが軽手で、ここ2二銀では1二玉でとどきません。3二同玉と角の射程内に誘い込んで、3三銀打ち以下は簡単です。
第9図。4二銀・同銀・5二金・3二玉・4二金・2一玉・3二金・同玉・3三銀・3一玉・4二と・2一玉・2二銀成まで、13手詰。



なお、5手目の4二金で4二とでは、詰まなくなりますから注意して下さい。
B 複数型
三つのオマジナイ”避ける””どける””取り払う”について詳述してきたわけですが、これらはすべて、守備駒が一個だけの場合に限る「単数型」でした。ところが守備駒が二個以上ある「複数型」には、いかに適応したらよいのでしょう。
過日テレビ番組みの「脱線ゲーム」で、棒をグルグルと回転させ、それに飛び込んだ人が棒に足をさらわれないように、ピョンピョンとはねあがるゲームをやっていました。
棒の回転が速くなったり遅くなったりしますので、その動きを追ってリズムに体を合わせるのがコツです。この場合に棒は一本ですが、その回転は円となっていく本かの輪にも見えるわけです。例え棒が直角に二本「十」の形になっていても、やはり回転は円になって見えるわけで、動作を機敏にすれば棒に当たることなくはねあがることができるはず。これと同じことが、複数の守駒のある形態にもいえるわけです。
単数型のときは、回避・排除、そして清算の三手段によって解決できました。複数型になったら更にその上に、二本の棒の輪を一本の棒の輪にする手段が追加されることになります。これが効果的な着眼点ですが、図例によって説明しましょう。

(第10図)
第3回第10図

第10図。これは古来より伝わる有名な古典図式です。馬二枚・金二枚そして銀二枚(ただし、この銀は形を整えるための”飾り駒”で守備力は全くない)の守り駒に対し、桂・桂・香の飛び道具で詰めるのです。とくに二枚の馬は要所にあって、詰方の桂打(4三と6三)を防いでいる複数の守備駒といえましょう。さて5三香と平凡に攻めては以下、5二歩合・4三桂・同馬・6三桂・同馬で攻めの散発となりダメ。二枚の馬が桂打をはばんでいるために、不用意に飛び込んでもたちまち足を取られてしまいます。”玉を射んとせば、まづその馬を射よ”二枚の馬の効きを一方に限定して、一枚の馬の効きにする手法が、この種の複数型詰将棋に対する解決のカギです。
初手5四香が名手、これを”焦点の手筋”と呼んでいます。(参考図)

(参考図は5四香まで)
第3回第10図参考図

この点以外に打ったのでは、5二歩合にて詰みません。馬の効きが重複している5四の点(焦点)に打つのがポイントで、これによって一本の棒にすることができます。何を合駒しても桂打で終わりですので、同馬右(6五の馬で取る)と取りますが、更に6三桂と捨てる好手で完全に馬効きを一方に限定することができ解決します。
第10図。5四香・同馬右・6三桂・同馬・4三桂まで、5手詰。



二枚の金を避け、二つの馬を一本にまとめてジャマにならぬところにどけるのです。一本の棒の輪が、いく本かの輪に見えるのではダメ。いく本かの棒の輪にする、タイミングのよい動作のコツを覚えたときに、この問題は解決するのです。

(第11図)
第3回第11図

第11図。玉方の飛と角は、詰方の2三銀と1三銀の一手詰をはばんでいます。これも守備の複数型ですので、焦点を発見すればよいわけです。
飛と角の効きが重複して交錯している点、これが焦点であり2二の点が該当します。この点に捨て駒をすることにより、一方の効きを遮断することができ、いづれかの銀打ちが可能になるわけです。その目的を果たす好手が2二銀成の捨て駒、実戦では2三銀と打って同飛・同馬と交換し、涼しい顔をしているところでしょうが、これでは即詰とはい(え)ません。詰将棋の功徳・効能は偉大なものです。
第11図。2二銀成・同飛・1三銀・2一玉・3三桂不成まで、5手詰。



(第12図)
第3回第12図

第12図。七段・清野静男著『実戦型・詰将棋新題』の一つです。初手は桂打ちか飛打ちというところですが、6一飛は5一歩合とされ、2三桂でも4一に穴があいてますので不詰みとなります。そこで2三桂と打って不動玉とするのが正着で、参考図を見て下さい。

(参考図は4一玉まで)
第3回第12図参考図

攻め駒に包囲されて玉はどこにも動けませんが、守備駒も適所に効いていますので、簡単には詰みません。飛角の守りの”泣き所”をつく、焦点の捨て駒を発見して下さい。
参考図でのつぎの一手が第一の関門、守備駒を清算する手段はすべてダメ。例えば5二金は同金で、4二金は同角・同桂成・同玉でいづれも指し切りです。これで手段に窮したかに見えますが、守備金の移動を計る4三飛すてが残っています。これぞ一手千金の鬼手で、4二合駒すれば5一金の一発。そこで同金と取ります。これで玉頭は飛角金で守られていますが、この点こそ”ベンケイの泣き所”であり、学習ずみとばかりに、4二桂成とカラ成り捨てる手が第二の関門の急所です。
これだけ守っていて、何で取っても金打ちまでを、確かめて下さい。まことにハプニングな幕切れでした。
第12図。2三桂・4一玉・4三飛・同金・4二桂成・同玉・5二金まで7手詰。



“焦点の捨て駒に妙手あり”。この金言も詰将棋を解く詰棋忍法の極意です。

まとめ
守備駒のある形
A 単数型
① “避ける”方法(回避手段)
② “どける”方法(排除手段)
③ “取り払う”方法(清算手段)
以上、三つのオマジナイで、その適・不適を判断すること。
B 複数型
守備駒の重複している焦点に、すて駒をしてその効きを一方向に限定すること。
                         ――守備駒の項おわり――
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