詰将棋の能率的勉強法(1)(近代将棋昭和44年2月号)①

本日より、「初級教室」と銘打って村山隆治氏が近代将棋誌に連載された「詰将棋の能率的勉強法」を取り上げたいと思います。
1回分を2度に分けて更新する予定です。
途中図を除く各図には、文章の最後に動く将棋盤を設置しております。

筆者紹介
大正12年7月17日生
戦前から詰将棋作家及び評論家として活躍。著書に「詰将棋の考え方」(25年・大阪屋号書店)「詰将棋教室」(41年・金園社)などがある。
はしがき
“いつでも、どこでも、楽しめる詰将棋”
これが詰将棋の大衆化を唱えている私の詰将棋哲学です。そしてこの楽しさを一人でも多くの人々にわかちたい、ということが私の年来の願いでもあったわけです。
どうしたら最も能率的にわかりやすく、しかも最短コースで学習できるかと、思案なげくびの結果が、今月号から始まる入門講座です。題して「詰将棋の能率的勉強法」という教典。
ごく平易に書いていきますので、平素簡単な詰みをのがして青筋を立てた人は勿論のこと、今日までアンチ詰将棋党の人も、この機会に入門し、詰手筋の卵”三手の詰み”と共に併読下されば、やがて螢雪の功なり見事免許皆伝の腕前になることでしょう。

詰将棋とは……
王様の終焉(しゅうえん)
将棋の大詰め――王が金に押さえつけられる瞬間――は、まさに一局の将棋の終りであり王様の終焉です。ところがよく将棋の例えに、王様の頭に金が乗っかるまではということわざがあります。これはヘボ将棋の有為転変を例えたもので、ヘボは全く夢想外な珍手を指すところから、いつ勝負がひっかりかえるかわからないという格言なのです。ですから自玉の頭に金が乗っかり、どこにも動けなくなるまでは、勝負をすててはいけないといういましめでもあるわけです。
この王様の終焉ばかりを集めて終焉草紙とし、そのなかで特に巧妙な手を含んでいるものを、後世の詰将棋として集大成してくれた元祖が、江戸時代初期の初代将棋名人・大橋宗桂です。以来、詰将棋の黄金時代と喧伝される享保時代の代表的詰物、三代宗看の「将棋無双」および看寿の「将棋図巧」を経て、昭和の今日まで連綿と続いているわけです。
詰将棋とは相手の玉を動けなくすること、即ち”詰み”を目的とし、これを王手の連続で行なうという約束のもとに創作された問題なのです。
詰将棋論語
“詰将棋とは、駒を捨てることと見つけたり”
これから学習していこうとする詰将棋を解く極意がこの標語です。まずこの言葉をしっかりと頭に入れておいて下さい。詰将棋に関する長い経験からヒントを得た「詰将棋論語」として、大いに推奨したいことわざです。
駒を、それも飛車や角の大駒を、なんの惜しげもなくすてることこそ、詰将棋のダイゴ味として最高のものといえましょう。このような詰将棋を、これから楽しく面白く勉強していくわけですが、学習が進み実力がつくにしたがって、この教典の真髄がわかっていただけるはずです。
詰将棋とは、抽象的にいえばこんなものですが、例題をあげて具体的に説明をしましょう。
さて、詰みといい王手の連続といっても、それが平易な手ばかりでは、考えることを必要とする問題、つまり詰将棋とはいえません。これは文字通り”詰む将棋”であって第1図がその例です。

(第1図)
第1回第1図

2三金と打って3一玉の逃げに、3二金打の頭金まで何の変哲もありません。これでは詰将棋といえません。



(第2図)
第1回第2図

第2図となって詰将棋の基本的なものになります。この局面で第1図と同じような、初手2三金打では以下、3一玉、3二銀、4二玉、4三金、5一玉で失敗します。この場合は2三銀と打ち、3一玉の逃げを封じるのが正しい着手です。1三玉に対して1二銀成りすてが好手(第3図)となり、同玉でも同香でも2三金打までとなります。

(第3図は1二銀成まで)
第1回第3図



(第4図)
第1回第4図

第4図となって初心者向きの詰将棋となります。第2図との相違は、詰方の3四の駒が銀になっただけですが、これが銀のため2四への逃げが存在し、ために3手目の1二銀成の好手発見がやや難しくなるわけです。詰手順は第2図と全く同じです。



(第5図)
第1回第5図

例題をもう一つあげましょう。第5図を見てください。この局面なら誰でも2五金と打って詰めるでしょう。だがこれでは詰将棋にはなりませんネ。将棋を覚えたてのごく初級者でも間違わないはずです。



持駒の金が銀になって、はじめて詰将棋となります。(第6図)

(第6図)
第1回第6図

持駒の銀を金と同じ働きにさせるためにはどうすればよいでしょう?1五の点が玉方の駒で参考図のように埋まってしまえば、2五銀打の一発となることがわかります。

(参考図)
第1回第6図参考図

その役目を果たす駒が4五飛です。まず2五銀と打ち、1五玉の逃げに1六銀と引きまた1四玉ともとに戻ります。ここで1五飛すての好手が生じ、同角を強要して参考図となり、目的を果たして2五銀で詰上ります。

(第7図は1五飛まで)
第1回第7図

第7図は詰方1五飛と好手を放った局面ですが、よくこの一手を覚えて下さい。



玉の頭に金が最終なら、それを妨害する何らかの障害が玉の味方として置かれているかまたは詰方の持駒の量や質の不足、その他の形で詰みにくくしてあるはずです。そしてその障害を取り除き、征服し、玉の頭に金までの終着に到着するのが詰め手筋なのです。
したがって、詰将棋とはトンチ教室流に申せば、玉方の障害と詰方の手筋との、シーソゲームだともいえるわけです。

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