塚田賞作品の魅力(27)(近代将棋昭和54年9月号)②

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第27回の続きです。
今回は第47期(文中では第48期となっていますが)の受賞作の内、長篇賞受賞作を掲載します。
長篇賞その1 七條兼三作「姉」


第47期七條氏作1

七條兼三作(その1=51年4月号)
8六銀 同玉 7五龍 9七玉 7七龍 9八玉 9九香 同玉 9七龍 9八飛合
5五馬 8九玉 5六馬 7九玉 7七龍 6九玉 5九金 同玉 7九龍 6九角合
にて途中㋑図

途中㋑図(20手目6九角合まで)
第47期七條氏作1-1

途中㋑図より、4九金 同玉 6九龍 5九金合 3八銀 同飛 同馬 同玉
3九飛 同玉 5九龍 4九銀合 2九金打 同金 同金 同玉 4九龍 1八玉
1九銀 1七玉 2八銀 1六玉 1九龍 2五玉 4三角 3四桂合にて途中㋺図

途中㋺図(46手目3四桂合まで)
第47期七條氏作1-2

途中㋺図より、同角成 同玉 1四龍 2四香合 2五金 4四玉 2四龍 5三玉
6四龍 5二玉 5五香 5三歩合 同香成 4一玉 3三桂 3一玉 6一龍 2二玉
2一桂成 1二玉 1一成桂 1三玉 1四歩 2二玉 2一龍 3三玉 4五桂 4四玉
4一龍まで75手詰
“順列七種合”の趣向局。本作は「姉」と命名され、”飛角金銀桂香歩”の順で合駒が出てきます。
“七種合”というだけでも相当困難な創作条件であるのに、それを飛から歩まで、順序通りに発生させるというのは、至難の技といわねばなりません。ちなみにこの時まで、”順列七種合”の作品は二局しか発表されておらず(第一号局は第24期塚田賞に輝いた山田修司氏作「天にかかる橋」75手詰)、それを逆順の七種合と二局を対にして一度に完成させたということは、驚異の出来事です。
さて本作、軽い序奏を経て10手目に9八飛合が出てきて、主題が始まります。途中㋑図(20手目)に6九角合が現われ、以下九段目に5九金合、4九銀合と続きますが、この辺り、合駒の組合せで様々な変化が生じ、頭が痛くなりそう。
後半は中段へ追い出して、46手目(途中図)には3四桂合。ここ他の合なら1六龍捨の妙手が用意されています。あとは2四香合とさせ、この香を5五(5四でもよい)へ打って5三歩合をさせ、あとは軽い収束となります。
本作は次局とともに”順列七種合”というタイトル付きで出題されたからよかったものの、もし黙って出されておれば、とくに中盤の角・金・銀の合駒のあたりの変化に煩らわされて、正解者は殆どいなかったかも知れません。しかし、この煩雑さを払拭するかのように下段の駒がきれいにかき消えてしまうのが、解後感をかなりよくしています。
ともあれ、七條氏の長篇シリーズの第一作を飾る力作でした。


長篇賞その2 七條兼三作「妹」


第47期七條氏作2

七條兼三作(その2=51年4月号)
2六銀 同玉 1五馬 同玉 1四と寄 2六玉 1六銀 同玉 1五と 1七玉
1六と 同玉 1四飛 1五歩合 2八桂 同桂成 1五飛 同玉 1四と 同玉
5八角 3六香合 1五歩 同玉 1七香 1六桂合 同香 同玉 4九角 3八銀合
にて途中㋩図

途中㋩図(30手目3八銀合まで)
第47期七條氏作2-1

途中㋩図より、1七金 同玉 2八金 1六玉 3八角 1五玉 2四銀 2五玉
3三銀不成 3四玉 2四飛成 4三玉 4四龍 5二玉 5四龍 5三金合
4四桂 6一玉 8三角成 7二角合 同馬 同玉 7四龍 7三飛合にて途中㋥図

途中㋥図(54手目7三飛合まで)
第47期七條氏作2-2

途中㋥図より、6四桂 同金 8四桂 8一玉 7二角 7一玉 8三桂 8二玉
8一角成 同玉 7一桂成 同飛 同龍 同玉 7三飛 6一玉 7二桂成 5一玉
5三飛成 4一玉 4二龍まで75手詰
本作は序盤から陥穴があります。それは3手目1五馬に2七玉と逃げ、1六銀、1七玉、2六馬、同玉、1四と寄、1六玉以下作意と同じになる手順。これは1四と寄のところで3三ととソッポに行く妙手で早詰になるので変化別詰ということになります。
さて、2一飛の筋が通って、1四とを押し売りしたあと、1四飛と廻ると、ようやく主題の1五歩合が出てきます。続く1四とから5八角には3六香合で防ぎます(他の合は同角と切って早詰)。1七香には1六桂合の一手(歩合なら、後で1七歩とたたく手が生じます)。このあたり1筋での桂香歩の合駒の綾は微妙です。
29手目4九角と金を取ったところで3八銀合(途中㋩図)が出てきます。続く1七金打が軽手で、1五玉なら、2六金、1四玉、2五金、1三玉、2四飛成、1二玉、6七角で5六角合を稼いで早詰。3八角で銀を入手してからは2四銀から3三銀不成で玉を3筋から4・5筋へと追い、5四龍と桂を取ったところで5三金合が生じます。これは6四桂なら4一玉と逃げるための防ぎで、もし飛合なら切って4五桂以下、簡単ではありませんが早く詰みます。
そこで4四桂、6一玉のとき、再度角を活用して8三角成と成桂を入手。7二角合を強要します(もし7二香合なら同馬、同玉、7五香、7三角合、同香、同玉、5三龍以下)。7二同馬、同玉に7四龍と廻って、いよいよ最後の7三飛合。この意味は手順を追えば自然に判ります。以下は後の変化のために6四桂打で5三金を移動させておき、8四桂から角と桂をこまやかに捌いて収束します。
前作に較べると「妹」の方が繊細な感じがしますが、捌きの味は爽やかなので、解いていても愉しめます。作意順で関係のなかった6八歩は、実は二歩禁で終盤の余詰を防ぐ意味の配置ですが、序盤7手目の1六銀に3七玉とする変化で、2七飛成、4八玉、3八龍、5七玉、5八龍、6六玉、6七龍…のときにも役立たせているのはうまい。
両作とも75手とし、最初の玉位置も9七と1七に対称的に配するなど、文字通り”姉妹作”として、細やかな気遣いも施されています。
ともかく正逆両方の順列七種合という詰棋史上初の快挙をなしとげた作者に、長篇賞は当然といえましょう。



長篇賞その3 七條兼三作


第47期七條氏作3

七條兼三作(その3=51年6月号)
9六と 同玉 9七歩 8七玉 8六と 9七玉 8七と 同成香 9八歩 同成香
同金 同玉 9九香 同玉 2九飛にて途中㋭図

途中㋭図(15手目2九飛まで)
第47期七條氏作3-1

途中㋭図より、3九歩成 同飛 9八玉 3八飛 4八歩合 同飛 9七玉
4七飛 5七歩合 同飛 9六玉 5六飛 6六歩合 同飛 9五玉 6五飛 7五歩合
同飛 9四玉 8五飛成 9三玉 9四歩 9二玉 8一龍 同玉 8五飛 8四歩合
にて途中㋬図

途中㋬図(42手目8四歩合まで)
第47期七條氏作3-2

途中㋬図より、同飛 8二歩合 同銀成 同角成 7一歩成 同玉 7二銀打
同馬 同銀成 同玉 8三角 6二玉 5一銀 同玉 5二歩 同玉 5三歩 同玉
4四金 6二玉 6三歩 5一玉 5二歩 4一玉 4二歩 同玉 4三歩 4一玉
3一香成 同玉 4二歩成 2一玉 1一香成 同玉 1二歩にて途中㋣図

途中㋣図(77手目1二歩まで)
第47期七條氏作3-3

途中㋣図より、2二玉 3三金 同玉 3二金 2三玉 5六角成 1三玉
4六馬 2四桂合 同馬 1二玉 1三馬 同玉 2五桂 2三玉 3三金 1二玉
1四飛 2一玉 3二とまで97手詰
本作は”歩中合”と”飛車鋸”のコンビネーション趣向作。軽い導入部を経て、2九飛(途中㋭図)となったところから、この趣向手順が始まります。即ち、㋭図で9八玉なら8九飛成、9七玉、2七飛、3七桂合で角道が止まり、9八歩、9六玉、2六飛、9五玉、8六龍、9四玉、2四飛、9三玉、2三飛成の早詰。3九歩成捨ては最初の飛上りを妨げる妙防です。以下も全く同じ原理で歩の捨合を交えながら飛車の鋸形の追い上げが、見事に繰返されます。
7五歩合を同飛と取ったところでこの趣向は終り。入手した6枚の歩を捌く中盤へと局面は展開します。
8一龍と切って8五飛と廻ったところで、8四歩合が気の利いた捨合。これを省いて直ぐに8二歩合では、作意同様に進んで7二玉のとき、5四角打で早詰となるのです。
5一銀と金を取ったところで持駒の歩は7枚。5二歩、5三歩と連打して4四金と押さえ、さらに歩の単打を続けて77手目、1二歩で使い切ります(途中㋣図)。これを同玉では5六角成、1三玉のとき、2三馬の妙手があり、同玉、3四金以下、早く詰みます。1二歩に2二玉と逃げれば3三金捨てがあり、今度は4六馬のとき、またもや2四桂という軽妙な捨合が入って、収束まで飽きさせないすばらしい手順。
前作のような力に頼る条件作だけでなく繊細な味の趣向作にまで、持てる力量を存分に発揮されるあたり、さすが解答で鍛えた腕とセンスの確かさを物語っています。
この後、塚田賞の長篇部門はしばらくの間七條氏の独壇場になります。

塚田九段「今期は七條兼三作が三題出されているが、どれも見事な作品ばかりで、異例であるが三作とも受賞に決めた。これだけ作り難い作品を、よくぞ完成させたものと脱帽せざるを得ない」

作者「七種合の方は苦心惨胆したしろものだけに、愛着のある作品です。両作とも75手で玉の位置も対称的に構成できたのは、序奏の部分で山田修司氏に助力をいただいたのが大きく、ここに誌上を借りてお礼申し上げます。三作目の歩の中合は合駒趣向として新鮮味があるでしょう。三作同時受賞とは、私にとって記念すべきことで、お酒も一段とおいしく飲めるというものです」



「将棋墨酔」は平成3年に発行された本ですが、それ以後様々な指摘がなされていると思われます。
もしご存じの情報がありましたら、お知らせ頂ければ幸いです。

「姉」は第5番、「妹」は第6番にそれぞれ収録されています。
「妹」は、8手目同玉のところ2四歩、同飛引成、1六玉で残念ながら詰まないと思われます。
もしこれが正しいのであれば、既に指摘がありそうですが。

飛車鋸の作品はその後54手目8一玉で不詰とされ、「将棋墨酔」には参考図として収録の運びとなりました。
ですが、近代将棋平成4年6月号にその変化が詰むという指摘がなされています。
現在は完全作という認識なのでしょうか。


次回の更新は「詰将棋パラダイス ちょっとした感想」の予定です。
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