塚田賞作品の魅力(27)(近代将棋昭和54年9月号)①

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第27回は2つに分けて掲載します。
今回は第47期(文中では第48期となっていますが)の受賞作の内、短・中篇賞受賞作を掲載します。
七條兼三シリーズ受賞

第48期塚田賞受賞作家
短篇賞 門前清一
中篇賞 酒井克彦
長篇賞 七條兼三
昭和51年1~6月号

遅咲きの詰棋人として有名な七條兼三氏が「力だめし詰将棋」と題して長篇シリーズを4月号から隔月に出題。その第1回と第2回の三作が、まとめて長篇賞に輝きました。
七條氏の名前が詰将棋雑誌に見られるようになったのは昭和39年頃のこと。当時すでに40歳代でしたが、あり余る棋力と時間(?)を投入して連年のように”解答王”の名をほしいままにされました。そしていつの頃からか”墨江酔人”のペンネームで作品も発表するまでになっていましたが、今度はいよいよ本名で記録的な長篇作品の数々を世に問いはじめた――という訳です。その驚くべき創作意欲には、世の詰将棋作家たちはただ啞然とするばかりでした。
また、この年の1月号から、解説者が伊藤果四段に交替しました。前任の森敏宏氏は、39年からですから、12年の長きにわたって担当されたわけです。その的確な批評眼によって、本紙の詰将棋欄の質はつねに高い水準を保たれ、また幾多の名作を世に出してこられました。なお解説は退いても、選題は相変らず同氏が担当しておられます。


短篇賞 門前清一作


第47期門前氏作

門前清一作(51年6月号)
3一金 同金 1一金 2二玉 1二金 同飛 2三歩 2一玉 1三桂 同飛
3一龍 同玉 2二金まで13手詰
塚田九段「今期はこれぞという作品に恵まれず期待はずれであったが、本作が短篇らしい軽妙な手順で金の動きが面白い」
初手1二金が見えますが、同飛で切れる。3一金から1一金と、二枚の金を惜しげもなく打ち捨てると、筋に入ったことがわかります。1一金を同飛なら2三龍、2二金、3三桂以下なので、2二玉とかわしたところで、1二金引きがいかにも気持ちのよい手で、あとは質駒になった3一金を狙って、持駒の桂を活用すれば詰みます。
本作は筆者も発表当時に詰めてみて、初入選ながら筋のよい新人が現われたもの――と感心した覚えがありますが、実は水上仁氏のペンネームとか。如何にも実在しそうな名前なので、マンマと一杯喰せられて、倍満貫を放銃させられた感じでした。
作者「本作、実は数年前の構図に最初の二手を加えたもの。紛れも少く、よくある筋という感じ。まさか塚田賞とは、信じられません。いや、やはり信じます。”メンゼンチンイチ”という筆名が示すように、仲間うちでは下手な雀士として知られていたので、今度の受賞は、汚名挽回のホームランになることでしょう。これからはユーモアのある作品を手がけたいと思います」


中篇賞 酒井克彦作


第47期酒井氏作

酒井克彦作(51年6月号)
3八銀 1八玉 2九銀 同玉 2八金 3九玉 9三角 4八角合 同角成 2八玉
4九馬 1九玉 2八角 1八玉 7三角成 3八歩合 2八馬 同玉 3八馬 1七玉
1八歩 同玉 2八馬まで23手詰
塚田九段「本作がズバ抜けた出来ばえで、まずは特賞ものであろう。次点は斉藤仁士作(2月号、実戦型好形で二歩禁解消の香先香歩、27手詰)で、これも申し分ない出来ばえであるが、運がなかったというよりない」
名前を見ただけで、今度はどんなトリックが秘められているのだろうか――と、期待に胸がはずむような本格派の作家、酒井克彦氏が久々に登場したと思ったら、さすがにその名に恥じず、文句なく中篇賞を獲得。同氏の健在ぶりを示した傑作です。
この簡潔な入玉型で、1八角、3九玉、4八銀、2八玉……の紛れはすぐ切れるとしても、2八金、3九玉、9三角、4八角合、同角成、2八玉、3八馬、1七玉、3九角、2八歩合、同角、1八玉……と、本筋のような手が続くだけに、初手から3八銀~2九銀と捨てる手は、考えあぐねた揚句に諦めながら指してみることでしょう。
それもその筈。この簡素な入玉型で、4九銀が邪魔駒だなんて、とても気がつくものではないからです。ところが、この夢のような伏線が成立するのです。つまり、4九銀がなければ、2八金、3九玉、9三角、4八角合、同角成、2八玉のとき4九馬という絶妙の開王手が可能になるのです‼
このとき3七玉の変化がとても詰みそうに見えませんが、2八角、4七玉、4八馬、5六玉、6六馬、4五玉、5五馬まで、見事にきまります。そこで、4九馬には1九玉と逃げるのが作意手順で、2八角、1八玉、7三角成のとき、再度お得意の変則合駒4八歩がとび出し、2八馬捨ての締くくりまで、ただただ感嘆するばかり。名手酒井氏にしても、おそらくこの手順は自分でこしらえたものではなく、天の与えた啓示と思われたことでしょう。
ともあれ、僅かこれだけの駒配置で詰将棋の本質である謎解きの面白さにあふれ、しかも二度にわたる変則合駒の応手や、捌きの収束まで、非の打ちどころのない名作といって過言ではありません。
作者「11年ぶりの受賞。本作は4九銀消去がネライです。11手目の4九馬を発見しないと指せない手で、この4九馬とする手自体、3七玉とされ(この変化が自慢?)一見切れ筋に見えるため、より伏線効果が上っていると思います。この手順を盤面わずか6枚で表現できたことは、偶然が幸いしたとはいえ、自作としては満足のいく作品に仕上りました。これからもポツポツですが、”完成品”を目指して創作に励むつもりです」



酒井氏作は「からくり箱」第40番に収録されています。


七條氏の表記は原文では「七条」となっておりますが、「七條」が正式と思われますので修正しています。




「塚田賞作品の魅力」とは関係ありませんが、「開設1周年」の記事に追記をいたしました。
先週の東京詰将棋工房(詰工房)に参加された方、もしくは過去の作品に興味のある方はご覧になると面白いかもしれません。
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